2018.02.15

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

"アメリカン・モーターサイクルの最高峰"と評される、幻のCROCKER

「シートメタルはもちろん、ファンダーはペイントもファクトリー・オリジナル。随分前に手に入れたお気に入りの1台で、前オーナーにはJOHN PAYNEという俳優も含まれている」という1940年式のCROCKER“BIG TANK”。大英帝国の誉れBROUGH SUPERIORと並び、最も高価なモーターサイクルとも言われている。参考までに、あるオークションで同年式のBIG TANK が302,000ドルで落札されている。

伝説のアメリカーナ。1930年初頭、ロサンゼルスのVENICE BLVD.の一画で ALBERT CROCKERが立ち上げたレーベルはその後、モーターサイクルヒストリーの"金字塔"となった――。

 第一次大戦の前、すなわち1914年以前のアメリカには100を超える2輪メーカーが存在したが、世界恐慌と2度目の大戦を経た1940年代に入ってなお存続していたのは、事実上H-DとINDIANだけだった。時代に翻弄され消えていった小さなレーベルの中には、H-DやINDIANを凌ぐ性能を備えた高性能車両を開発したベンチャーもあり、ヴィンテージバイクのマニアの間では今も語り草となっている。
 
 その最たる存在がCROCKERだ。旧車狂の間で"戦前までのアメリカン・モーターサイクルの最高峰"と評される存在だが、創業からたった10年で姿を消した悲運に加え、当時の生産台数も主力のVツインモデルで100機未満。リアルタイムを知る古参はもはやアメリカでも稀、ゆえにそのプロフィールは厚いベールに包まれたままである。
 
 旧車専科を標榜する弊誌『ROLLER magazine』ゆえ、"CROCKERの独自取材"は創刊当初からの野望だったが、弊誌オークランド支部のKEN NAGAHARAが北米大陸を駆け回り4年、遂に取材をメイク。かくして本誌初登場となるご覧のCROCKERは、後期モデルにあたる1940年式の通称"BIG TANK"で、排気量6IciのOHVを搭載。

 スピードウェイで最速を誇ったCROCKERのV型45度バンクのOHVエンジン。そのデビューは1936年、いみじくもH-D初のOHVモデルKNUCKLE HEADと同年だった。参考までに市販のE/ELが380ドルで販売されたのに対し、CROCKERは495ドル。1,000ccから1,490ccまでの排気量が選べ、ヘッド形状を数種から選択するという細かなオーダーメイド。CROCKERは一部のブルジョアと名うてのレーサーのための、コストを度外視したスペシャルだった──。

現車のタイヤセットは前後共に18インチだが、購入時は他サイズもオーダー可能だった。リムはH-D同様にケルシー・ ヘイズを純正採用。変速はフットクラッチ/ハンドシフトの3速。

フロントエンドはガーダー式。ヘッドライトはGUIDE社製。オーナーのデイブ・ミネルバ曰く「シートメタルはもちろん、ファンダーはペイントもファクトリ ー・オリジナル」とのこと。

"BIG TANK"と呼ばれるこのCROCKERの見どころはご覧のセパレートタンク で、なんとアルミ鋳造!! 右オイル/左ガソリンを内蔵する。スピードメーターはCORBIN製。アールデコを感じさせる美しいインダストリアルデザインは、デザイナーとしてALBERT CROCKERをバックアップしたPAUL BIGSBYの手腕。 蛇足だがエレキギターのパーツでお馴染みの"ビグスビー"も彼の仕事。

1,000ccから1,490ccまで設定可能だったといわれているV型エンジン。スタンダ ードのボア3.25"×ストローク3.62"=61ciのエンジンで55-60馬力を発生したといわれている。これはH-Dのナックルヘッドを優に上回るもの。ただしミッションは3速だった。"HEMI"と呼ばれる初期型は、H-DやINDIANのパーツで構成されていたという。

カメラマン:Ken Nagahara
テキスト:Gonz (満永毅)
媒体:ROLLER magazine VOL.15

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