2019.01.21

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

まるで彗星が如く。「追憶の『ROSSO』」

1/24のFD3Sのプラモデルの記憶を整理していると、ふと『ROSSO』というメーカーのことを思い出した。メーカーとしての体をなしていたのは、わずか2年あまり。しかし、そのクオリティやチャレンジングな商品展開は、あまりにも鮮烈だった。

完成品メーカーとして歩み始めたROSSO

 ROSSO、その名の通り「赤く燃えた」メーカーであった。1990年初頭に、突如1/43スケールのプラスチック製ミニカーを発売すると同時に産声、いや雄叫びをあげた。

 当時は1/43といえばダイキャスト完成品、あるいは玄人向けのレジン製やホワイトメタル製のキットが主流で、プラスチック製といえば1/24や1/20の組み立て式がスタンダードの時代。しかし、ROSSOのそれは、多くのミニカーファンにとって待望のフォーマットで製造されたミニカーだった。

 どうしてもモールドがあまくなりがちなホワイトメタルや、まだ当時は耐久性に難があったレジンではなく、金型成型のシャープな部品で構成されたフルディテール・モデルである。それはドイツのヘルパがフェラーリF40のモデルで先鞭をつけ、まさに当時一世を風靡したアイテムに範をとったものであった。塗装せずとも充分な輝きを湛えたボディ、タンポ(パッド)印刷の施されたリアルなタイヤ、エッチング部品で構成された足回り、その出来栄えは、ミニカーファンならず業界をも震撼させた。

 ヘルパが1980年代後半に発売し、世界的に一大センセーションを巻き起こした1/43のプラスチック製、フル開閉・フルディテールの完成品ミニカー。黄色いF40がそれだ。ボディは未塗装ながら充分なツヤをたたえ、未塗装ゆえにボディのモールドも極めてシャープだ。一方のF643がROSSOの製品。足回りにエッチングパーツを使ったのも当時の国産量産ミニカーとして極めて先進的だった。

 なぜ、新興メーカーがそんなレベルの製品を最初から作り得たのか。その問いに対する答えは簡単で、当時ノリにノっていたとある模型メーカーのお家騒動に起因したものであった。上層部との軋轢から、営業畑のトップが開発陣を連れて独立、そこで興したのがROSSOだったのである。独立に関しては当時も"時期尚早"という見方も少なくなかったようだ。しかし、すでに若き模型メーカー、ROSSOは燃えに燃えていた。

 幸運にも当時の関係者に話を訊くことができた。最終的な同社の終焉に関しては、とても美談で終わらせられるものではない、と前置きをされたものの、少なくとも当時の社内は夢と希望に溢れていたという。

 「責任者が、地方の模型店も一軒一軒回るような営業畑の人間ということもあって、市場のニーズには敏感でしたし、それに応えようという気風もありました。最初に1/43の製品からスタートしたのも、流通の現場から声を汲み上げていたので自然な流れでした。とはいえ、独立の経緯から、これまで付き合いのあった金型屋さんなど、下請けの業者に仕事をお願いすることができなくなっていたので、例えば当時の国内メーカーはやっていなかったようなタイヤのタンポ印刷も、飛び込みで新しい業者にお願いして可能にするなど、すべてが新しい挑戦でした。製品の箱詰めも自分たちで行っていました」

 その後、ROSSOは1/43から1/24、そして1/8と"あまりにも早すぎる"事業拡大を試みるようになる。当時、確かに市場では少なからずあった1/24のロードカーとF1を並べたいという声に応えて、タミヤの築いたF1、イコール1/20というフォーマットに反旗を翻すかのように、1/24でフェラーリのF642を発売したり、塗装済みボディのキットや1/12スケールのNSXの組み立て式キットをリリースしたりと、チャレンジングではあるが先を急ぎ過ぎた感が否めなかった。

 その最たるものが、1/8というスケールでのフェラーリF643のアルミ・キャスト製組み立て式キットだった。塗装済みボディ、ABSの多用で各部に剛性も持たせ、接着剤不要のボルトオン組み立て方式を謳ったもので、価格は¥39,800と当時としてはかなり強気の設定だった。しかし、物の善し悪しとは別に、ビッグスケール市場が確立されていなかった当時の日本でのセールスは芳しくなく、当時の金額で3000万円近かったという金型(30数型存在した)のコストも回収できず、ROSSOは一気に窮地に追い込まれていく。

 そしてROSSOはわずか1年数カ月の営業期間を経て、倒産の憂き目をみる。最終的には同社の在庫や金型が保管されていた倉庫が全焼し、すべては泡沫と消えた――。

 同社の製品は今なお傑作の誉れも高いキットも多く、再販を望む声も少なくないが、それは叶わぬ夢である。ひとつだけいえるのならば、ROSSOという若きメーカーの情熱は、遺された製品たちからも存分に伝わってくるということだ。

左:FERRARI F642 UNITED STATES G.P.
右:NISSAN SKYLINE GT-R NISMO/
 F642、F643が模型化されたROSSOの1/43スケールF1。驚かされるのは、すべてがプラ成型ではなく、量感を出すためにセンターモノコックはダイキャスト製、足回りは曲げ加工、塗装済みのエッチングパーツが付属している点だ。塗装せずともリアリティを出せるような成型色や塗装済みランナーなど、現在でも通用するフォーマットである。

 一方のR32GT-Rもボディだけをみれば、1/24と何の遜色もないモールドレベル。ボンネットだけでなくドアも開閉。エンジンブロックやトランスミッション、さらにトランク部にそのバランサーもかねたブロックをそれぞれダイキャストパーツ化。こちらも量感に配慮した結果だろう。

左:efini RX-7 TYPE R
右:FERRARI 512TR/
 1/24に関してはパーツ点数を抑え、組立て易さを狙った感はあるが、ほかのスケールのように取り立てて新鮮なトライはないようだ。そのフォーマットはやはり分裂元のメーカー製品に近似している。しかしながら、ボディのプロポーションは秀逸で、FDはアオシマとタミヤの中間的なディフォルメ具合といった趣、ややホイールアーチが大きいが魅力的だ。

 512TRの圧巻はボディで、何とサイドのスリットまでボディと一体成型されている! 彫りの深いモールド、ディフォルメを抑えたプロポーションは、512TRの模型の中でもトップクラスだろう。

カメラ:服部佳洋 Yoshihiro-HATTORI、横澤靖宏 Yasuhiro-YOKOSAWA
媒体:モデルカーズチューニング 弐

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