2018.08.02

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

フィルムカメラの温もりをイエネコカメラで!

 しっかりメカメカしてる、ちょっと懐かしいデザイン。「カシャン」。チャージしたシャッターを静かに落とせば、指先に伝わる確かな感触。それは、ボディに内蔵された無数のギアやスプリングが、精密に作動している証。確かに今、この瞬間を切り取ったのだと実感したいのなら、旧いフィルムカメラがオススメである。
 無論、使ってみたいカメラ本体は、絶版かつ生産中止のユーズド品。だから、信頼できるカメラ仲間、そして誠実な専門店との出逢いが重要となる。
「イエネコカメラ」は、名古屋は新栄の雑居ビルに店舗を構えている。まるで時が止まったかのような昭和な空間には、アナログでノスタルジーな雰囲気がたっぷり。写真集、ラジカセにスティール製のランドナー。ふわりとした心持ちになるのは、炎ゆらめくストーブのおかげだけではない。この店には、心の底から暖めてくれる何かがあるようなのだ。

旧い国産カメラは直すことができる

窓際にさりげなくおかれたフィルムカメラが気になる。このミノルタは、確かRapid判カメラではなかったか? 残念ながら絶版となったフォーマットで、フィルムは入手困難だが、こうしてディスプレイとなるのはデザインの力。

 ……初めて訪れたにも関わらず、どこか懐かしさを感じずには居られない。そんなイエネコカメラが扱うのは、国産の中古フィルムカメラたちばかり。すべてのモデルは、店主の山中喜雄氏が点検整備を行った完動品である。
「最初にカメラに取り組んだのは、トイカメラがブームになった時代。まだ学生の頃で、友人とHPを作ったりしてました」
 ホルガに代表される愛しくもチープなトイカメは、操作できる範囲が少ない分、意外と使いこなしが難しい。機械としても単純そのもの。次第に山中氏は、もう少し本格的な、そして個性的な旧いカメラにハマっていく。
 「プラクチカのMTL5Bというカメラで撮ってました。東ドイツ末期に作られた一眼レフですから、修理自体も一筋縄ではいかなかったですね。その後、オリンパスの『ペン』を使うようになって気がついたんです。国産のカメラは、やっぱり作りがいいという事に」
 国産なら、旧いカメラでも直す事が出来る。その事実に気がついた時、彼は人生の分岐点にさしかかっていたのかもしれない。

穏やかな時間が流れるイエネコカメラの店内。まるで行きつけの喫茶店を訪れたかのような和みの空間である。ショーケースに並ぶカメラたちの他にも、写真集や雑誌が置かれており、訪れる人たちに話題を提供しているのだろう。

あたたかな雰囲気そのまま誠実なカメラ屋さん

あの頃感溢れる昭和な空間

やっぱり、旧くて良い物が好きな人は、スティール製の自転車に行き着くのだろう。イエローペイントも鮮やかなエンペラー号は、丸石サイクルの傑作ランドナー。フェンダー付きの快速ツーリングモデルである。こんな自転車にまたがって、フィルムカメラと一緒に小旅行をしたら、どんな一枚が撮れるだろうか? 

旧ければ良いというワケではないが、このレジスターのインダストリアルデザインがすばらしいのは疑いようもない。背景でボケてるフィルムの箱には「名古屋カラー」の文字が。

交換レンズ。中々マニアックなラインナップは、やはり店主の好みを反映しているのか? どのモデルも程度抜群だから、現代レンズとはひと味違う描写が安心して楽しめる。

イエネコおすすめの逸品たち

Olympus Pen EE-2/「2倍撮れる」という事でヒットしたハーフサイズカメラ。36枚フィルムを装填したら72枚撮れるワケで、デジタル並みに撮りまくれるのだ。F3.5の標準レンズ装備、セレン電池で測光可能なEE-2はピント固定。気軽に使えて入門にもおすすめの7000円。

Olympus OM-1/「AEは便利だけど、やはり故障の恐れが……」。という事で、フルマニュアルのOM-1が誌面に登場。小振りなブラックボディも精悍なOM-1なのだ。セット販売される50mmのズイコーレンズは手元で全ての操作ができて使いやすい。店主もオススメの2万7500円。

整備済み完動品。サンプル付き。

いったいどこで調達したのだろう?「美しい写真は緑の小箱の富士フイルム」のステッカーのかすれ具合が最高。

 フィルムカメラ全盛期。特に機械式カメラが華やかかりし頃は、それぞれのモデルが個性に溢れていた。たとえそれが、後の技術的進化によって淘汰されてしまう運命だったとしても、「操作する楽しさ全開モード」を標準装備していたのだ。フィルムを装填し、絞りとシャッタースピードを決定。ピントを合わせて静かにシャッターを切る。結果は、プリントがあがるまでわからない。デジタル時代から考えると、「作法」にも近い一連の作業が「写真を撮る」という楽しみその物だったのである。
 アナログ的フィルムカメラとの生活。その入り口に立った時、イエネコカメラと出会えた人は幸いである。
 「イエネコカメラは店頭販売。直接お客さんと会って、カメラの取り扱いなどを説明できる事が基本となっています」
 さすが、人との出会いもアナログに徹しているのである。ふと見れば、販売されているモデルと一緒に、プリントが展示されている。これは一体……?
 「ひと通り整備がすんだら、必ずフィルムを通してテスト撮影をします。きちんと動作するか。光線漏れはないか。その時に撮った写真を、サンプルとして見られるようにして展示してるんです」。
 どこまでも誠実なカメラ愛に溢れているのである。腕は確かな職員気質、温和そのものの山中氏と共に、フィルムカメラの世界に浸ってみるのはいかがだろうか?

コニカにマミヤ、フジカ、ミノルタ、ニコマット。どれも魅力的な国産フィルムカメラが棚に並ぶ。

シルバーのアサヒペンタックスとブラックボディのMacBook、そして各種ツールが雑然とならぶ作業机。さりげなく置かれたポータブルなTVが素敵。もちろんブラウン管の白黒。

photo & text:Yoshiro Yamada
VINTAGE LIFE vol.19

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