2018.10.31

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

垂涎のカメラを愛でる楽しみ。「ファースト商会」

 階段を下り、半地下にある扉を開け、目を凝らしてショーケースを見てみると、そこには……。

 1977年に、原宿・竹下通りで撮影/DPE店としてスタート。途中からカメラを扱い、2007年新橋に移転した「ファースト商会」。カテゴライズするとヴィンテージ・カメラの専門店となるのだが、独自のこだわりによる品揃えがその筋のマニアには知られた存在となっている。

 その独自のこだわりとは、元箱付、もしくはモデル初期のコンディションの良いものをメインに取り扱うというもの。ショーケースに目をこらしてみると……、カメラの横には元箱が置かれ、中には説明書などの書類が残っているものも。さらに良くみてみると、目を疑うような製造番号のカメラが。

 見れば見るほど驚きがある、ファースト商会のショーケース。ここでは、そのこだわりによって集められた、貴重なアイテムの一端を覗いてみるとこにしよう。

珠玉のライカを愛でる

1954 Leica M3/
1954年に発売が開始されたM3。デビューイヤーの1954年モデルの製造番号は"700 000"からスタートしているが、撮影機は"700 092"という製造番号が刻印される、極めて最初期のモデルとなっている。
ファースト商会ではメンテナンス時にボディ内部の刻印も確認しているという。もちろんコンディションも良い状態が保たれている。装着したレンズも1854年発売のエルマー5cm f3.5の最初期のもので、こちらも貴重なコレクションモデルとなっている。

 ヴィンテージ・カメラの雄といえば、やはりライカだろう。ファンも多く、相場も形成されているが、極めて若い製造番号や、元箱・資料付きともなると、その相場に当てはまらなくなってくる。また、右のステマビューワーなど、探しても中々手に入れられないものは、相場も形成されづらい。

 ファースト商会では、ホームページでも取り扱い商品を紹介しているが、基本的に価格は表示していない。そのため、ここで紹介しているモデル全てにも、価格表示は行っていない。

 基本的に通販は行っておらず、物がモノだけに、直接店舗に訪れ、現品を確認してから購入するお客さんがほとんどだという。また、仕入れや持ち込みなどのタイミングにより、ホームページに掲載される前に、たまたま訪れたお客さんの手に渡ることも少なくはないのだそうだ。そのため、遠方から定期的に訪れるお客さんも多いのだという。

 良いカメラと出会うのは、まさに一期一会。その出会いもまた、ヴィンテージ・カメラ趣味の楽しみの一つだろう。

1962 Leica M3 BLACK PAINT/
M3ブラックペイントの、オリジナルペイントモデル。ボディ上部に記された製造番号が"1045 028"であることから、1962年生産のブラックペイントのモデルであることがわかる。
このブラックペイントは市場に出回る数が少ない貴重品であるが、さらに撮影機は程度も極上で、元箱と説明書もオリジナルのものが残されている。装着したレンズは、初代ズマクロン35mm f2のブラックモデル。こちらもかなりの貴重品だ。

一期一会の出会いを楽しむ

1950's STEREO EQUIPMENT OIRZO/STEREO BETRACHTUNGSAPPRAT/
1950年代に発売されたLマウントのステマレンズ3.3cm f3.5/専用の3.3cmファインダー/近接用プリズム/フードと、撮影した写真をステレオで見るためのステマビューアのセット。Mマウント用のステマレンズに比べLマウントのものは数が少ないという。
さらに、撮影したセットにはそれぞれケースも残され、共にほぼ未使用の状態となっている。ここでの商品名は、ケースに記されたものを採用している。ステマレンズを装着したボディは、ビット付きのⅢf。写真にはないが、こちらも元箱付となっている。

ニコンF、最初期モデルの悦楽

左:1959 Nikon F/
ニコン初の一眼レフカメラとなったF。その発売は1959年~となっており、ボディに記された製造番号で年式を判別できる。写真のモデルの製造番号は"6400074"。頭3ケタの640は1959年4月~1960年1月生産のモデルを意味している。その次の数字は0074。これを見ても最初期のモデルとだいうことが分かるだろう。写真にはないが、レザーケースなども残されている。装着したレンズは、ニッコール-S 5cm f2 チップマーク付きで、これも貴重なレンズだ。

中央:1959 Nikon F/
製造番号640から始まる1959年式のF。こちらも下4ケタは、2ケタ台となっている。2ケタ台のモデルは当時、販売ではなく贈答用として使用されたものも多く、一般にはあまり出回っていないという。この初期のFにセレンメーターをセット。写真にはないがレザーのカメラケースも残されている。レンズは、ニッコール-S 5cm f2 チップマーク付き。

右:1959 Nikon F BLACK/
頭3ケタが640、下4ケタが0744という初期モデルのブラックボディF。報道関係者の使用が多く、あまりきれいな状態で残っていることは少ないが、撮影モデルは元箱(写真のものだ)や説明書なども残されている。レンズは、等倍システム(等倍のマクロ撮影ができるという)が採用された、マイクロニッコール5.5cm f3.5の最初期モデル。こちらも程度は極上。現在では手に入りづらいレンズだ。

 ライカなどの舶来モデルに対して、国産のメジャーブランドのカメラの相場形成は、年式やコンディションなどによってバラ付があるのはご存知の通り。

 今回ここで紹介している国産カメラ達は、初期モデル、記念モデル、元箱や資料が揃い、さらにコンディションの良いカメラ達となっている。これらの国産カメラは、希少性とコレクションモデルとしての価値から、マニアからの人気も高いのだそうだ。

 ファースト商会のお客さんの中には、これらのコレクションモデルは文字通りコレクションとしてコレクションルームなどに保管、同型のモデルの高年式のものを実際の撮影用などで購入している方も多いのだという。

 ここで紹介しているのは、全て1959年式のニコンFの初期のモデルだが、ブラックボディはもとより、写真のようにレンズの選択や、セレンメーターの装着などで、同じFでもその表情はまた違ったものとなってくる。

 箱に入れたままの保管も良いが、レンズなどのアイテムを吟味してディスプレイするのも、また楽しいものだろう。ボディと年式の近いレンズを選ぶなど、さらに趣味的な拡がりが得られそうだ。そうやってカメラ趣味が拡がっていく。言い換えれば、あえて深みに嵌まっていく、ともいえるのだが。

そこには驚きが詰まっている。

Calypso phot/
潜水用具のメーカーである、ラ・スピロテクニーク社が1960年代初頭に発売した、防水ハウジングを使用しない、世界初の水中カメラといわれているカリプソ。
その後、ニコンと技術提携を行い、ほぼそのままの状態でニコンの水中カメラ、ニコノスの初期モデルとして発売された。撮影モデルは、元箱・説明書・保証書など完品の状態となっている。この状態で世に出ることは、極めて少ないモデルだ。

1965 Nikon S3 BLACK OLYMPIC MODEL/
前年に開催された東京オリンピックを記念して、1965年に登場したS3のブラックモデル。一般にオリンピックモデルと呼ばれるこのS3は、一時生産が中止されていた、S3の再生産(細部に改良が加えられている)モデルとなり、当時関係者などに配布されたものもあった。
撮影モデルは、未使用に近い状態で元箱(元のS3よりサイズが大きめ)、説明書、別の箱に入ったレザーのケースなども残されている。装着レンズは、ニッコールS 50mm f1.4。

迫力のフォルムに惹かれる

1976 Minolta X-1 MOTOR/
X-1をベースにボディ下部にモーター、その下に単三電池を10本収納する電池パックをセットしたモデル。1コマと連続撮影が切り替え可能で、連続撮影の最高は秒間3.5コマとなっていた。写真のモデルは、ボディ、バッテリーパック、ストラップの元箱、さらにそれらの箱を全て収納する段ボールの箱も残されている。装着レンズは、ロッコールPG 50mm f1.4。

 ファースト商会のショーケースの中で、妙に気を惹かれたモデルが、ミノルタのX-1モーター。そこでさらに聞いてみると、ボディなどの元箱はもちろん、バッテリーパックの元箱などをまとめて収めるための、さらなる箱も残っているという。先に紹介したカリプソやS3のオリンピックモデルも、元箱はもちろん、各種の書類までが残っているという驚きの一品。

 あるところには、ある。まさにその一言だが、ファースト商会の場合、一貫して同じポリシーでカメラを取り扱っていたため、独自の仕入れ以外でも、持ち込みなどでこういったカメラが集まってくるのだという。

 カメラを持ち込む人も様々で、元から自分で所有していたもの、家族が残してくれたもの、ファースト商会でさらに自分の欲しいモデルを見つけ頭金がわりに持ち込む人など、それぞれにストーリーがあるという。

 前記したが、元箱などが残っている美品の場合は、撮影するというよりはコレクション用として保管している人がほとんど。その価値をわかってくれるお店ということで、販売したものが再度戻ってくることも少なくないのだそうだ。

 ファースト商会を通して人の手に渡り、さらに次の人に。その流れは連続的に続いていくことになる。その間も、所有者の手により常にその状態は保たれていくことになる。良い物を後世に残すという、その時間の流れの中に自分がいる、という感覚もまた楽しいものなのだろう。

 もちろん購入したものなので、外に持ち出して撮影するなど、使い方は自由だ。ただし2度と出てこない可能性も少なくないだけに、負のミッシングリンクにはなりたくない、そう思っている購入者が多いようだ。

ニッコールにこだわる

1959~ NIKKOR-N 5cm 1.1/
ズノー5cmの登場を受け、1956年に登場した大口径モデル50cm f1.1。1959年には新鏡胴を使用したモデルが登場し、写真のレンズはこのタイプとなっている。製造番号は140700番台からスタートし、約1800本が生産されたといわれている。写真のレンズの製造番号は"141049"となっている。アンバーのコーティングも美しい大口径レンズだ。ボディはS3 ブラック オリンピックモデル。

1959~ NIKKOR-O 2.1cm f4/
ニッコール初期の広角レンズ。Sマウントから製造が始まり1959年にFマウント用が発売されている。ちなみに後玉部分が飛び出しているタイプなので、Fに装着する際はミラーアップが必要となる。そのためアクセサリーシューに取り付ける、専用のファインダーが用意されている。
写真のモデルの製造番号は、"226916"となっており、ニコマート等にも取り付けられる様に後部の金具の形状が変更された4型だと思われる。これも貴重なレンズとなっており、オリジナルのフードがついているものは非常に少ないという。ボディはF。

完品、そしてデットストックの誘惑

1974 Nikon F Fhotomic FTN/
元箱入りのフォトミックFTNファインダー搭載ボディと、モータードライブ、バッテリーパックがセットになり、さらにそれらがひとつの箱に収まっているセット。詳細ははっきりしないが、輸出用の可能性もあるという。
ちなみに全てが収まる箱にプリントされている内容も、セット内容とあてはまっている。説明書、ギャランティカード、写真にはないが、クリーナークロスまでもが残されている。装着したレンズは、ニッコールS・C オート50mm f1.4。

 新橋駅から徒歩5分、階段を下り、半地下にある扉を開け、再度目を凝らして棚を見てみると……、その顔ぶれが少し変わっていることに気が付く。何度と通ううち、気になっているモデルが並ぶことがあるかもしれない。

 国内外のメーカーともに、程度の良い物はいまだに価格が上昇傾向にあるという、ヴィンテージ・カメラ。買い時をいつかと問われれば、常にそれは"今"と答えるしかない状況となっている。さらに減りはしても増えることがないものだけに、一度逃してしまうと二度と手に入らない可能性も高い。

 ヴィンテージ・カメラの趣味を極めたい、欲しいモデルがある(ファースト商会ではそんな希望の手助けもしてくれる)という人は、この半地下の階段を降り、禁断の扉を開けてみることをオススメする。

1973~ KONICA AUTOREFLEX T3/
オートリフレックスT3のブラックボディ、未記入保証書、各種書類が元箱に入った、程度の良い未使用に近い一品。T3自体は市場に出回っているが、ここまで揃って程度の良いものは少ないという。装着レンズは、ヘキサノン AR 21mm f4。こちらも元箱、フードなどが残されている。レンズ単体のものは、ヘキサノン50mm f1.7。

1991~ Leica SUMMILUX-M 35mm f1.4 ASPHERICAL/
手磨きで作られたという、非球面レンズが採用された1990年代のズルミックス。実際の販売本数は不明だが1,000~2,000本といわれている。
ASPHERICALは非球面を表すもので、市場に出回る本数は極めて少ないという。撮影モデルは、製造番号"3460765"となっており、元箱、レンズキャップ、フィード/キャップがそろった、非常に貴重なものとなっている。

Photo & Text:Hiroyuki Kondoh
媒体:VINTAGE LIFE 20

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