2018.08.02

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

東京・下町、骨董品と和む『だんどりおん』

「Dent de lion -ダンドリオン-」。フランス語で「たんぽぽ」を意味する単語を、あえて平仮名で店名とした「だんどりおん」。かの伊丹十三監督の名画のファンであるフランス人の店主と、大和撫子のご夫妻が営む骨董店にとって、これほどふさわしい店名もないのではないか?と思わせる優しい屋号である。

ジャパニーズ・アンティークとの出会い

2003年にオープンした「だんどりおん」。昭和32年に建てられた酒屋さんだった日本家屋を改築して、今や心和む骨董品店に。1階はもちろんの事、店舗の2階にも魅力的な骨董品がズラリと並ぶ。

 イヴァン・トゥルッセルさんが日本を訪れたのはおよそ30年前。フランス生まれの彼は、故郷以外の国に住んでみようと考え、東京にやってきたのである。
 無事フランス語講師の仕事を見つけ、小さなアパートに住むことになったイヴァンさん。古いものを好む両親のもとで育った影響もあってか、日本のフリーマーケットで見つけた古い和箪笥を、手ごろなお値段にも惹かれて購入したという。扉が観音開きになった和箪笥。それが彼が手に入れた初めてのジャパニーズ・アンティークとなった。
 東京で暮らし、そして江戸時代にさかのぼって歴史を学ぶ中で、日本の骨董品に惹かれていったイヴァンさん。ほんの数年の予定だった日本暮らしも、気がつけば幾年がたち、春美さんという人生の伴侶とも出会い、今では東京下町で骨董品店を営んでいるというのだから、人生は分からないものである。

心穏やかに、和の骨董と暮らす

宇賀弁財天様。江戸時代に作られた像だが、持ち物も揃っていて、色つやも美しい。弁天様ではあるが、頭の鳥居には宇賀神様という翁綱の蛇体がいらっしゃる。

観音開き船箪笥(上)。外側の正面と内側の観音開きなど鍵が三つ付けられている。底には、明治二十四年第四月二十八日求之」と記されている。この購入日から、製作された時を推測できる。

過ぎ去った時代に思いを馳せる

「棗」と書いて「なつめ」と読む。抹茶を入れておく容器だから、茶器の一種と言える。箱付き。

 クルマや時計、カメラなど、「古い機械」が好きだというイヴァンさん。かつては、アメリカはダットサンのガレージでメカニックとして働いた経験もあるというから、その腕前は想像してあまりある。そして、機械をいじっているとどうやって動くのかを知りたくなり、やがてどんな人が作ったのかに興味がわいてくるのだという。
 なぜ。誰が。いつ。物を見ると、その背景を学びたくなる。それすなわち、その品が生まれた歴史を学ぶということなのである。
 現代の主流は、合理化されたオートメーションによる大量生産。対して数百年前は、職人が手作りでひとつひとつを作りあげていた。そこで誕生した品々には、現在失われて久しい味わいが宿っており、江戸や明治に生きた人々の生活の息吹と当時の世相、流行などが反映されているのである。
 骨董品が静かに語りかけてくる過ぎ去った時の流れ。手のひらに乗る小さな焼き物が生まれた、かつて確かに存在した時代に思いを馳せるというのも、じつに味わい深いもの。それは、骨董品だからこそ味わうことのできるロマンなのである。

イヴァン・トゥルッセルさんと春美さんご夫妻。春美さんは、着物を元にして、バッグやポーチを作られていたとか。

見る目を養うには、「使う事」

習字の時に、水を入れて墨をする「水滴」。松林の描かれた古銅の物など、じつにバラエティに富んでいる。

 伊万里焼や九谷焼のお皿、和箪笥……。確かに貴重な品々であり、手に取るのも恐れ多い骨董品ではあるが、もちろん普段使いの実用品として接する方が楽しい。
「古い伊万里も一枚1000円くらいで買える物がたくさんあります」とイヴァンさん。日々の生活で使う事で、重さや手触りを感じ、色や柄を眺める。そうする事が、価値や善し悪しを見分ける目を養う近道なのだとも。
「同じお皿でも、それぞれに微妙な違いがあります。絵柄が雑だったり、重たかったり。それが値段に反映されるのです。その違いがわかるようになるには、多くの品と接するのが一番です」。
 まずは手頃な価格の品を一枚。もしも、割れや欠けのおかげで割安になっているのなら、それを選ぶのも悪くない。万が一壊してしまっても、あきらめが付きやすいかも知れないから。
 生活の中に取り入れる事で、骨董品と親しくなれたらしめたもの。再びお店をのぞいた時に、自分自身の判断基準に従って選ぶ事ができるようになっているはず。「私のお気に入り」との出会いを探しに、「だんどりおん」へ足を運ぶのもいいかもしれない。

日本昔話、名作中の名作「ぶんぶくちゃがま」がモチーフ。この子は釜ではなくて、香炉である。

手前の一枚、「印判」は、手書きでは無く、ステンシルのような技法で印刷された物。比較的手頃で人気も高い。

Photo & Text:Yoshiro Yamada
VINTAGE LIFE vol.20

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