2018.08.31

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

死の谷で、一体何をハントするのか!? 「Yasのナンデモハンター」

からっからドライな砂漠のド真ん中にある渓谷で、Yasは毎晩キャンプをしながらあるモノを待つ。鳥でも星でもUFOでもない。これは、オトコのロマンなのである。

撮影ギアはキャノン500mm×EOS 1d markⅢ。飛行機撮影には欠かせないエアーバンドレシーバー。15年前に購入したユピテル製ラジオが砂漠でも感度が良い!

荒野の中にポツンと現れるガスステーション。何十年も前からオープンしていて、その当時に使っていたと思われる機器が無造作に置かれている。

 カリフォルニア州とひとことで言っても、日本の本州がすっぽり入るぐらいの大きさで、北と南では気候もカルチャーも違う。もちろん景色も違ってくる訳で、海をイメージされがちなカリフォルニアにも、実はアリゾナやネバダなどと同様に有名な砂漠地帯がある。

 ロスから車で北に行く事約4時間。交通量もかなり少なく、長く続く砂漠道をひたすら走り抜けて行くと、国立公園にも指定されているデスバレー(死の谷)がある。

 カリフォルニア州とネバダ州にまたがっており、総面積はほぼ長野県と同じぐらいのデカイ砂漠。水もなく、ほとんどがカラカラの平地と渓谷で複雑な地形が観察できる。資料によると最も古い岩石は17億年前に形成された変成岩で、まだ地球上に大陸が誕生する前の物らしい。そんな地質も凄いが、暑さもスゴイ。

 西半球では最も海抜の低い地点として知られており、海抜下86メートルの場所もあるのだが、真夏には平均して摂氏40℃を超え、記録では57℃になった事もある。世界で最も気温が高い、まさに名前の通りデス=死にも近い場所、なのである。

 そんなデスバレーには、引きずったような後を残して移動する石の存在や、はるかに続く塩の道、といった大自然満喫する為に多くの観光客が年間を通しておとずれ楽しんでおり、かくいう私も年に何度もデスバレーに足を運び、熱風や大量の紫外線を浴びつつも満喫している。

 ただし、楽しみ方がちょっと違う。観光スポットには行かない。もちろん研究者のように、地質調査をするわけでもない。天体観測もしない。私にとっては、それらよりもっともっと楽しいことがあるのだ。だからわざわざ死の谷に赴き、キャンプしながらそれをハントするのである。

砂漠の朝、夜は冷え込む。しかし一度太陽が登ると強い日差しで空気が一気に暖まり、日中は30℃を越すことも多い。20℃ぐらいの変化は当たり前だ。

クーラーボックスにはアボカド、ルッコラ、など野菜を中心に夕飯の材料を持って行く。ハーブ入りソーセージやチーズもワインと一緒に嗜む。

迷彩柄のF15をハントしていました!

撮影場所の渓谷はごつごつした火山系の岩石に覆われている。崖の縁に立って谷に飛んで来た飛行機の撮影をするのだが、一歩間違えば谷底に転落してしまう危険がある、断崖絶壁のスポットだ。

戦闘機が飛ばない日だったとしても、ひたすら待つ

 Youは何しにデスバレーへ? 

 そのアンサーは、戦闘機ハント。なんで砂漠で飛行機を? といぶかしむ人も多いと思うが、実はデスバレーには戦闘機が飛行練習できるスペースがある。

 通常、軍が管轄するエリア、たとえばネバダ州などにある爆撃訓練場などであれば、もちろん一般人等がその区域に入る事はできない。しかしこのデスバレーのある一部に限っては、国立公園内を戦闘機などが低空で飛んでいる姿を目にすることが出来るのだ。特にこの渓谷は低空飛行訓練の為のルートがあって、日々パイロットの操縦技術向上の為にも欠かせない訓練空域なのである。

 普通アメリカでは、戦闘機を間近で観るとすればミリタリーベースの近所で離陸と着陸を見学するか、又はハイスピードで飛んでいる姿を目にする為には、航空ショーに足を運ばなければ難しい。しかしここでは一般訓練を行っているアメリカ軍の戦闘機F-18、F-15、F-16や、演習などで海外から遠征してきたヨーロッパからの部隊も飛んできて、谷の間を通過する迫力ある姿を、戦闘機と同じ目線か見下ろす形でウォッチする事ができるのだ(ひとつだけ言っておきたいのは、私は戦闘機を見るのが好きなのであって、戦争は大嫌いである)。

 だが難点もある。それは、いつ飛んでくるのか全く見当もつかないこと。民間機のように時刻表があるはずもない。もちろんニュースで、明日飛びますよ! なんて教えてくれるはずもない。国家、いや地球レベルの機密情報ゆえ、この谷に何日、何時頃に飛来するかなんて、我々一般人には知る術がないのだ。

 だから私は、朝テントで目覚めると、撮影スポットまで軽い山登りをし、携帯の電波も届かず、汗すらすぐに蒸発してしまうような暑さの中、来るか来ないかてんでわからない戦闘機がやってくるのを、日没まで只管待ち続けるのである。興味が無い人から見ればまるで罰ゲームだ。

 たいてい、私は一度に5日は滞在し、毎日約10時間渓谷にこもる。持ち物はカメラ、折り畳み椅子、航空無線機、あとはランチと水のみ。日中には気温がぐーんと上昇するので、携帯する食品も種類が限られる。午後には水がお湯に変化してしまう。

 戦闘機がやってきたのを知るために、一応航空無線受信機も持ってはいるが、基本的には自分の耳が頼りだ。強風が吹かない限り、谷は静寂に包まれており、かすかなジェット音が聞こえてくればすぐさまカメラを構えていつでも撮影できる状態にしておく。相手は戦闘機なのだから、一瞬のうちに通り過ぎてしまう。

 毎日朝から夕方まで同じスポットで待機する訳だが、全く来ない日もあるので、あまりにも暇だと集中力が途切れ、ちょっとでも気を緩めると気づいた時にはせっかくの獲物(戦闘機)が既に目の前にいて撮り逃す事もある。しまいには遠くを通りかかったハーレーのバイク音をジェット音と勘違いしてしまう始末。

 戦闘機ハントには、ある意味賭けをしている様なギャンブル的ドキドキ要素もあり、釣りの様なひたすら待ち続ける強い忍耐力、そして暑さを乗り切る体力も必要なのである。

 空港などでいつも気軽に撮影できる飛行機を撮るのではなく、全く予測できない時に現れるあらゆる機種や部隊(塗装や細かい仕様が違う)の戦闘機に心を奪われる。戦闘機も観れるし、夜はキャンプも楽しめるのだから、こんなに楽しいことはない、と私は思っている。

 これがYas流、国立公園デスバレーの楽しみ方なのである。

アメリカ軍のみならず、各国で運用を予定している新型戦闘機F-35ライトニングII。そのテストサポート行うF-16戦闘機で、デンマーク軍所属のもの。

デスバレーにも近いベースのチャイナレークに所属する部隊名"ダストデビル"のAH-1Zヴァイパー。ヘリコプターもデスバレーを飛ぶのである。

媒体:HUNT 8

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