2018.08.19

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

グランピングリゾート「星のや富士」で命と食を学ぶ(前編)

贅沢なだけのキャンプなら一過性のブームとして終わってしまうのでは? と懸念がある中、2015年に本格的なグランピングリゾートとしてオープンした「星のや富士」。彼らが提案する様々なプランが興味深い。昨秋に初めて実施された「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」がHUNT的に気になったので、実際にツアーに参加した。

自然の中で快適に過ごす「グランピング」というスタイル

 ここ数年で急激に普及してきたグランピングリゾート。
以前は聞きなれなかったその言葉も、昨今はメディアの露出も多く、大分浸透してきたのではないだろうか。まず本題に入る前に、ここで少し「グランピング」のおさらいをしてみよう。

グランピングとは?

 Glamouras(優雅な)+ Camping(キャンプ) を合わせた造語である「グランピング」とは、ホテル並みの設備やサービスを利用しながら自然の中で快適に過ごすスタイルのことである。従来のキャンプとは異なり、テントの設営や食事の準備などの煩わしい手間がなく、初心者からベテランまで老若男女が気軽に自然を楽しむスタイルとして近年注目されている。「グランピング」という言葉及びスタイルとしては、2005年頃英国で発祥したと言われており、以来欧米では非常に人気となった。

グランピングの源流

 ヨーロッパの貴族文化の一つがご存知の通りHUNT。狩猟である。1800年代後半から欧米の白人が狩猟を目的としてアフリカを訪れるようになる。その後、1960年代頃から動物愛護の思想の高まりもあり、アフリカ観光の主流は狩猟から写真撮影へとブームが移行すると共に、富裕層向けの豪華なサファリロッジが多数登場。そのロッジが現在のグランピングの源流のひとつと考えられている。

日本に於けるグランピング事情

 1990年代、オートキャンプの登場で多くのキャンプ未経験者がオートキャンプ場を訪れるが、野外特有の不自由さでキャンプ経験の少ない人達が定着せず、いろいろと思案を巡らすが、より快適さを求めロッジなどに宿泊するのではアウトドア本来の楽しみが薄れるなどの理由から、オートキャンプブームも沈静化。2000年代に入り既存のキャンプ場に限界を感じた事業者が従来にないアイディアを模索、実践していくなかでグランピングの土壌が整った。(一般社団法人 日本グランピング協会)

日本初のグランピングリゾート「星のや富士」

 2015年秋、日本初のグランピングリゾートとして山梨県の河口湖を臨む6haもの広大な丘陵に、あの星野リゾートが初めてのグランピングリゾートをオープン。都心から高速で約2時間というロケーションにありながら、国立公園として保護されてきた美しい赤松が林立する森の中、快適に過ごせる贅沢な施設が誕生。欧米にあるような本格的グランピングリゾートが登場したとして当時話題に。そこで、昨秋、実際に「星のや富士」のグランピングを体験してみた。

日常から解き放たれ、森の中へ

 河口湖インターを出て約20分ほど車を走らせ、湖畔沿いを走る通りから1本路地に入ると、印象的な黒い木の小さな建物が突然現れる。白いロゴの映えるここが目的地「星のや富士」のレセプションである。ガラス張りの開放感のある建物に入ると、壁一面に自然な風合いのカラフルなリュックが飾られている。中にはアウトドアのフィールドで必要な「7つ道具」が入っている。お気に入りの一つをチョイスし、ジープに乗り換えいざ森の中へ。

住宅街に一際目立つ黒い建物はレセプション棟。エリアマップとバードコールのついたキャビンの鍵をもらいチェックインしたら、車をジープに乗り換え森の中へ。

建物に入るとまず目に飛び込んでくるのは、壁一面に散りばめられた自然な風合いの色とりどりなリュック。この中からお気に入りの一つを選ぶ。

リュックの中にはフィールドで必要な「七つ道具」が入っている。ヘッドランプ、双眼鏡、マット&ピロー、ダウンのブランケット、エリアマップの他、オリジナルボトルと「森のビスコッティ」は持ち帰り可能と嬉しいサプライズ。

自然との一体感が得られる開放的なキャビン

 急な斜面を登ると数分で石造りの建物が見えてくる。スタイリッシュであるが景観を損なわないデザインのキャビンはスコープのような形状で、すべての客室が河口湖に面し、四季折々の風情が室内にいながらにして楽しめる。部屋は白を基調にシンプルで、壁一面の窓から臨める雄大な景色は、さながら一枚の絵のよう。風景が主役というミニマムな美しさ、窓の外にはソファベッドのあるテラスが広がり、自然との一体感を味わいながら、ゆったりとくつろげる空間となっている。日没後はバイオエタノールを原料としたエコスマート(暖炉)に灯る炎を眺めつつ、地元のウイスキーなどを嗜みながら夜が更けていくのを静かに楽しむのもいい。冬場にはこたつが設置され、外気を感じつつ鍋料理なども堪能できるのだ。

 ミニマムなキャビンとはいえ、寝心地の良いベッド、清潔なバスタオルや天然素材に拘ったアメニティが備えられたバス、トイレに加え、素材の良いコットンのナイトウェア、防寒用のダウンコート、突然の雨風も防げる長靴と傘まで用意されているのが嬉しい。そのうえBluetooth対応の小型スピーカーや、Wi-Fi環境も整っているという至れり尽くせりぶりある。加えてオリジナルブレンドのコーヒーがスノーピークのドリッパー&マグでいただけるなど、ツボを押さえた演出が憎い。ふと思い立って手ぶらで訪れても何不自由なく滞在できる空間。雨風が凌げる以上の快適さを確認し、身軽になったところでメインステージへいこう。

滞在の拠点となるキャビンは、全室が河口湖を眼下に望むスコープのような形状。

部屋の扉を開けると壁一面の大きな窓から雄大な景色が目に飛び込んでくる。美しい景色を眺め自然を楽しむためのシンプルな空間。四季折々の眺めを生かすため、室内は色を消しミニマムなデザイン。個性豊かな4タイプ。冬場は床暖房やテラスにコタツが設置されるなど、快適な滞在の為の様々な工夫が随所に凝らされている。

窓の外にはテラスリビングが広がる。この季節ならではのコタツがソファベッドの上に設置されているのも嬉しい。外気も心地良く、快適に過ごすことができる。日没後はファイアスペースに灯る炎を眺めながらゆったりと。

遊びのフィールド、クラウドテラスで過ごす贅沢な時間

 エリアマップを手に、キャビンの裏手から森の奥へと続く階段を上っていくと、フロントとダイニングのあるメイン棟が現れる。林の中に隠れ家のように佇む建物である。レセプションから最上層まで高低差100mもあるだけに、中継地点であるこの場所すらも、空気が一段、凛としたように感じられて気持ちがいい。緑溢れる開放的な空間を通り抜け、さらに上へと階段を上る。

キャビンの裏手の階段を上がるとフロントダイニングのあるメイン棟に到着。右手がフロント、ここではオリジナルグッズやアウトドアで活躍する名品などが購入できる。旅の思い出に。左手はメインダイニング。食事は落ち着いて室内でという宿泊者のために、コースディナーがいただける。森に溶け込むようなデザインのデッキを抜けて最上層のクラウドテラスへと向かう。

 雲のように幾重にも折り重なったウッドデッキは、滞在中の拠点となる遊びのフィールド「クラウドテラス」。「木漏れ日デッキ」にはユニークな形状の椅子が点在する。「空中ベンチ」や「木陰のハンモック」など要所要所で自然と溶け込む様々な工夫が凝らしてある。

クラウドテラスは最上層に向けて幾層にも重なる雲のように浮かぶ。「木漏れ日デッキ」にはユニークな形状の椅子が点在する。揺れる椅子に座り、足を投げ出し体重を後ろに預けると自然と木々の合間の空を見上がられる。しばらく空を見ていなかったと気付かされる瞬間。

「空中ベンチ」はデッキからせり出しているワイヤー製の椅子。体を預けると宙に浮いているような不思議な感覚を得られる。

 昼夜問わず焚火の灯る最上層のメインステージでは。併設されたライブラリーカフェの暖炉の前で読書をしたり、コーヒーやハーブティー、スイーツをいつでも自由に楽しむことができる。時間帯により季節ごとの様々な催しも行われ、美味しい誘惑に溢れている。森の息吹を感じながらハンモックに寝転んで鳥の囀りに耳を傾けるのもいいが、グランピングマスターの指導のもと薪割りを体験したり、グランピングならではのマシュマロの焼き方を伝授して貰ったりとアクティブに過ごすのもいい。

 一度は挑戦したい「山麓の燻製づくり」や、富士の溶岩で造った石窯で焼く「森の石窯ピザづくり」など、グランピングマスターが全てサポートしてくれるオプションプログラムも充実。一瞬も飽きることがない。何の準備も片付けもせずにアウトドアライフを満喫できる贅沢。まさにグランピングの醍醐味である。ここでは滞在中、思い思いのスタイルで心ゆくまで遊び尽くすことができるのだ。

最上層にあるライブラリーカフェには森やキャンプに纏わる書物が豊富。フリードリンクとスイーツがいつでも用意されている。

クラウドテラスでは時間帯により「森の珈琲店」がオープンするほか、 季節のスイーツをいただける「森のひととき」などウェルカムイベントも盛りだくさん。

アウトドアの楽しみの一つ「山麓の燻製づくり」を体験。季節のフルーツやナッツの他、厳選された地元の食材、忍野サーモン、鹿肉のソーセージ、豆腐、塩、味噌などを山梨県北杜市の蒸留所で造られるウイスキー白州を熟成させた樽のチップで燻す。グランピングマスターのサポートのもと自分だけのオリジナルに仕上げられる。蜂蜜を垂らした白州のお湯割りとの相性は絶妙!

せっかくなので薪割りを体験。グランピングマスターに指導してもらいコツをつかめば意外と簡単。ちょっとしたストレス解消に!

夕食は野性味溢れる森の恵みをいただく

 フィールドを一通り探索した後は、お待ちかねのディナータイム。ディナーは3つのスタイルからチョイスできる。一つは野外のフォレストキッチンで、ダッチオーブンやスキレットを使いグランピングマスターの指導のもと、食材の火入れから盛り付けまでを自身で仕上げる参加型ディナー。一つはメインダイニングで、大きなグリル台の前にいるシェフが目の前で肉を豪快に焼くコースディナー。そして、キャビンで時間を気にせずゆっくり過ごしたい人のために、テラスリビングでいただけるインルームディナーがある。せっかくなので、ここは野性味溢れるジビエ料理を野外でいただくことにする。

野外のフォレストキッチンでダッチオーブンやスキレットを使いグランピングマスターの手ほどきを受けながら自身で仕上げる「秋の狩猟肉(ジビエ)ディナー」。

秋は鹿・猪の餌となるドングリなどの木の実が豊富なため、1年で最も脂がのり旨味が増す時期だという。熱々の猪とキノコのスープ、希少部位である鹿のモツ煮込み、リゾット、猪とキノコのすき焼きなど秋の味覚をワイルドにいただく。

 1年中ジビエが食べられるこのエリア。春夏秋冬、それぞれの森の恵みを蓄えた鹿や猪の肉は季節毎に味わいが異なるという。地元山梨の食材を中心に厳選された季節の野菜やフルーツと共に、グランピングマスターのアドバイスに従って自身で焼いた鹿肉の深い味わいは格別である。増えすぎた鹿や猪をただ駆除するだけでなく、森に感謝して美味しくいただく。自然と会話も弾む。

1日の締めくくりは焚き火BARで

 グランピングは夜も楽しい。ほどよくお腹を満たした後は再びクラウドテラスへ。夜も更けた頃、「焚き火BAR」がオープンしている。地元のウイスキー白州を中心に厳選されたジャパニーズウイスキーや山梨のワインを嗜みながら、タープに投影された往年の無声映画を眺めていると、徐々に「森の演奏会」が始まる。

 日によって異なるアーティストを招いて演奏されるギターやオカリナ、バラフォンなどの幻想的な音色が漆黒の森に響き渡り、まるで木々に溶け込んでいくかのような不思議な感覚にとらわれる。その心地良さと酔いも手伝ってか、いつの間にか睡魔が忍び寄る……。初めてのグランピングに心も体も解放されて森に癒され、眠さもピークになった。キャビンに戻り明日の狩猟体験ツアーに備え、ヒノキの香りのする入浴剤を浮かべた湯船にゆっくりと浸かり、寝心地の良いベッドで眠りにつく。

夜が更けると、地元のウイスキー白州を中心に、厳選されたジャパニーズウイスキーやワインを楽しめる「焚き火BAR」がオープン。「白州12年」など貴重な銘柄も。

朝食はテラスリビングでモーニングBOXを

 朝食も夕食同様3つのスタイルを選べるが、快適な睡眠を得て爽やかに目覚めた朝は、目の前にある贅沢な景色を満喫しながらゆっくりとキャビンでいただくことにする。朝食限定の彩り鮮やかなインルームメニューは、河口湖での釣りをイメージし、ツールボックスに見立てた木箱に詰めて運ばれる。蓋をあけると、STALEY(スタンレー)のジャーに入ったスープにWECK(ウェック)のガラス容器に入ったサラダとケフィアヨーグルト。ベーコン&ソーセージにスパニッシュオムレツ、焼きたてのダッチオーブンブレッドの香りが否応なしに食欲をそそる。好みの器に入った完璧な朝食である。
食後のコーヒーでまったりした後は、いよいよ今日のメインイベント「命と食を学ぶ狩猟体験ツアー」へと向かう。

information

星のや富士
所在地/山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
TEL/0570-073-066(星のや総合予約)
https://hoshinoya.com/

協力:ホグロフス(アシックスジャパン株式会社 ホグロフス事業部)https://haglofs.jp
    SUUNTO(アメア スポーツ ジャパン株式会社)https://www.suunto.com

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