2018.08.16

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

人里離れた荒野に生きる孤高の芸術家「LEE BULLOCK ART」

"H-D乗りのアーティスト"なんてプロフィールはもはや掃いて捨てるほど存在するが、"米国南部を拠点とするMCのパッチホルダーにして彫り師"というハードコアな過去を持つ絵描きとなればハナシは別だ。アメリカのH-Dシーンで昨今メキメキと頭角を表す芸術家はカントリーサイドにひとり静かに暮らす旧車狂だった――。

圧倒的な孤独の中で創作に没頭するバイカーのライフスタイル。

 テキサス州ランパサスの町の外れに暮らすリー・ブロックは昨今のH-Dシーンで注目を集める新進気鋭のアーティスト。アメリカ南部屈指のチョッパーショウGiddy Upで出会って以来、取材のチャンスを虎視眈々と狙っていたが、遂に機は熟した!

 古いH-Dと芸術を愛するテキサス生粋のアトリエを訪ねた─。

DIYで建てたアトリア兼住居は今も現在進行形でアップデートされている。周辺には緑豊かな大地が広がる。

 アメリカではテキサスのローカルをTexan=テキサンと呼ぶ。彼らは地元に対する誇りが非常に高いことで知られる。西部劇の舞台でもあるアメリカ南部ゆえ荒削りな面もあるが、総じて働き者で友人や家族を大切にする情に厚い人々である。

 そんな無骨な気質もあってか、テキサスは昔からMCの活動も盛んで、今も某メジャーの拠点が存在する。この特集の主役である絵描きのリー・ブロックも、同州オースティンを拠点とするVise Grip MCのパッチホルダーだった過去を持つバイカーだ。このクラブは"Vintage Chopper Only"という作法を持つ稀なMCとして知る人ぞ知る存在で、1969年以前のビッグツインH-Dを自分の手で組み上げることがメンバーになる最初の条件。このMCの詳細は姉妹誌『Ripper Magazine』Vol. 07の特集を参照されたし。

 MC在籍時のリーはChopperに取り憑かれ、64FLのチョッパーを組み上げ乗り回していたというが、その後ヴィンテージH-Dに魅了され、現在はBobjobに傾倒しているご様子。

「ここランパサスの田舎に移り住む以前は、オースティンという賑やかな街で暮らしていた。そこで15年ほど彫り師として生計を立てていたんだけど、当時も空いた時間で好きな絵を自由に描いてはいたんだ。するとどうだ、気付くと刺青より絵のリクエストが多くなっていたのさ」

と笑うリー・ブロック。

「オレの場合、ペインティングをしていると心が落ち着き、リラックスできるんだ。反面、彫り師の時は常になんらかのストレスを抱えていた—— 」。

 ひとの目を避けるように移住したランパスの拠点は、25年前に父親が手に入れた牧場。広大な大地が目の前に広がる敷地では、その昔桃が育てられていたと言う。そんな豊かな土地を譲り受けたリーは、DIYで家を建ててヤギを飼い、大好きなヴィンテージバイクをビルドしながら創作活動に没頭するという、芸術家を絵に描いたような生活を実践している。

「この土地の一番のお気に入りは静寂。オレにとってそれは何よりも尊いもの。敷地内にある100年以上前に建てられたバーンもお気に入りだよ——」。

 絵を始めたのがいつかは定かではないが、少なくとも物心ついた頃には描いていた。その才を生かし15年ほど彫り師として活動したが、今は画家としてのプライドを胸に生きている。水彩画を得意とするリー・ブロックは彼自身のフェイバリットより創作のインスピレーションを得ることが多く、モーターサイクルを筆頭に音楽家や俳優などのアーティスト、動物や風景までその源泉は多岐に及ぶ。背景などにも遊び心が見えるが、その時のフィーリングに依る柔軟なタッチも彼の作法と言える。今後は大きなサイズの作品に挑戦し、新たなスタイルを探求したいと話してくれた。

ペイントに没頭するリー・ブロック。デスクに向かうのはもっぱら午前中。

ゆっくりと時間が流れるランパサスの生活から生まれ出るもの。

所有する土地を一望できるポーチのソファでゆったりと過ごすひと時も、このアーティストの欠かすことのできない日課だ。

 都会の喧噪から離れたその日常は、日の出と共に起きて丁寧にコーヒーを入れ、それを飲みながら昼過ぎまで絵を描いて。午後はヤギの世話や土地の管理に勤しむ。空いた時間が出来ればバーンに入り、1942年のナックルヘッドをビルドするのが目下の楽しみだという。

「ヴィンテージバイクの面白さって色々だけど、オレの場合は個々のパーツのあり方を感じられること。それからライダーとマシンの関係性につきる。旧車って乗りっぱなしでは調子を維持できない。逆に常にメンテナンスしていれば、その状態は不思議とわかるようになる。今の時代、人間と機械のそんな依存関係って興味深いことだと思うよ」。

 ゆったりとしたカントリーリビングも、日が沈めば家を出ることは少なく、床に就くのも早いという。ゆっくりと時間が流れるランパサスでの今後は、

「家のサイズを拡張しようかと目論んでいる。それに向けてのプランが進んでいるが、何せひとりで全て行うためスローペースだね。他にも様々なプロジェクトが同時進行しているけど、絵を書くことと旧車でのライドは常に生活の核であることは変わらないよ」。

 彼の作品はホームページから購入可能だ。本誌読者からの愛機を描いて欲しいというリクエストも大歓迎とのこと。描いて欲しいモノの写真と簡単な英文と共にメールすればOK。米国南部の荒野に生きる孤高の芸術家の描くペイント。旧車好きの家のリビングやガラージを飾る最高のアートピースだ——。

PORTFOLIO BY LEE BULLOCK

昨年のBORN-FREEではブースを設営して作品を展示販売。多くのオーディエンスが彼の作品に目を凝らしていた。共に写る自ら組み上げたナックルは、なんとBest Bobberのアワードを獲得!

Bikerを絵に描いたような屈強な出立ちのリー・ブロックだがその作品はタッチも色使いも繊細。
水彩の美点を巧みに取り入れた独自の作風で注目を集めている。
先述の通り、これらの作品はホームページからも購入可能。
HPやインスタグラムでは新作も続々アップされるからぜひチェックしてほしい。

Race Knuckle 11x15” 

Accessories 36x36”

Bowie 9x12”

Whitehorse 18x24” 

ヴィンテージバーンの中で組み上げられた1949年式のELが放つタイムレスな趣「1949 H-D EL HYDRA-GLIDE」

築100年という年代物の納屋でコツコツと組み上げられたパンヘッド。
作家リー・ブロックがレストアを手掛けたファースト・ハイドラグライドを紹介しよう。

ハイドラグライドのスタイリングは"威風堂々"という形容がピタリとハマる。ウインドシールドやサドルバックなどの装備は、その風情をさらに際立たすファクターだ。蛇足だがバックグラウンドに写るBarnが築100年を超える年代物で、現在もショップスペースとして活用中。

 荒々しいフィニッシュが目を引くご覧の1949年式は、作家リー・ブロックが所有する広大な土地の中にある自慢のヴィンテージバーンで、彼自身がコツコツと組み上げたガラージビルドのハイドラグライドだ。彼は様々なタイプのH-Dを所有し走らせてきた生粋のバイカーだが、フェイバリットを問えば間髪入れずに“Hydra-Glide”と断言する生粋のパンヘッドフリークだ。

「このハイドラは以前リビルドした1938年のELモーターとトレードして手に入れたもので、当初はバラバラの状態で欠品を確保しながら組み上げていった。初期ハイドラグライドの特徴であるウィッシュボーンフレームはリポップだが、ラゲッジラックやフェンダー、サージェントストライプトリム、クラッシュバー、ウインドシールドはH-D Genuineで、お気に入りのサドルバッグ(※左右のそれぞれのフラップ中央に配された彼のイニシャルL&Bのスタッズに注目)とそのマウントプレートはBucoの当時モノなんだ。荒削りだがなかなかいい雰囲気で仕上がったし走りもスムースだよ」。

 創作活動の合間を縫うようにガラージにこもり、約1ヶ月でなんとか走行状態に。以後はデイリーライダーとして活躍したというが、この撮影後に新たなプロジェクトの1942年式ナックルをフィニッシュさせる資金として、1956年のパンヘッドと共に日本のバイヤーに売却したという。

 現在は進行中のナックルヘッド・プロジェクトに余念が無いリー・ブロックだが、近い将来には何よりも好きだというフルストックの"Early Hydra-Glide"を手に入れたいと熱く語ってくれた─。

photographs & text:Ken Nagahara
媒体:ROLLER magazine vol.26

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