2018.12.17

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

意識の拡散。そして創作の根源。「ELEY KISHIMOTO」

イギリスのみならず世界中から注目を集めるブランドEley Kishimoto。今回のロンドン取材では幸運にも、そのスタジオに足を踏み入れることができた。そして、そこには創作の根源たる様々なソースが隠されていたのだ。

そのデザイン・スタジオはまるで宝箱のようだった。

サウスロンドンに位置するEley Kshimoto(イーリー・キシモト)のデザイン・スタジオ。夕刻になると柔らかいタングステンの灯りがつき、ホワイトの外壁と相まって温かい印象を見るものに与えてくれる。

ロンドンで行われた、Eley KishimotoのFashion on Weekを記念したサイクルジャージ。チネリやBMW、incase、そしてDuvelなどコラボしたブランドのロゴがフロントには並ぶ。

 イギリス滞在中にお世話になったTOKYO FIXEDのMaxとMegumiに薦められて訪れたのは、ロンドンの南部に位置するEley Kishimotoのデザイン・スタジオ。白壁に覆われた少し粗野で、けれどどこか温かみのあるそのスタジオは、Brixtonの警察留置場の脇にひっそりと建っている。留置場と聞くと、ダークな雰囲気を想像してしまいがちだが、その街は小さな公園が幾つも点在するだけでなく、イギリス古来のレンガ家屋が建ち並ぶなど、クリーンでクラシカルな印象を与えてくれた。

 さてEley Kishimotoといえば、すでにご存知の方も多いとは思うが、イギリスを代表するコレクション・ブランドのひとつである。創始者は同ブランドのデザイナーを務める、Mark Eleyと岸本若子夫妻。その創設は1992年のことで、それぞれにファッションとテキスタイル・デザインの分野を突き詰めてきた、ふたりの感性とコンセプトが見事に融合した。

 そして創設当初より、ふたりの研ぎ澄まされたセンスは様々なところで発揮され、ジョー・ケイスリー・ヘイフォード、フセイン・チャラヤン、アレキサンダー・マックイーンとのコラボを実現。また1995年にはオリジナル・コレクションをスタートさせ、2001年の秋冬で初参加を果たしたロンドン・コレクションでは、キャットウォーク形式ではなく、ティーパーティー形式で作品を見せるといった趣向を凝らした演出で、大きな話題を呼ぶこととなった。

 こうしてEley Kishimotoは現在、オリジナル・コレクションとともに、ヴェルサーチ、マーク・ジェイコブス、ジル・サンダーなど数多くの有名ブランドとのコラボを進め、ファッションそしてテキスタイル業界において、確かな地位を築いている。

様々なデザイン・パターンをテーブルに並べて、何やら悪だくみ(笑)しているのは、Mark EleyとTOKYO FIXEDのMaxそしてDavid。もしかしてまた新たな自転車を題材としたコラボレーションが生まれるのか!? だとしたら僕ら自転車好きには嬉しい限りだ。

スタジオの壁にはコレクションでのランウェイの模様を一枚一枚丁寧にレイアウトしたものが貼り付けられていた。ぱっと見ただけでもEley Kishimotoのデザインは愉しくそしてエモーショナルである。こんな洗練されたデザインが、すべてこのスタジオから生まれている。

THE FLASH CINELLI/
2010年9月に開催されたEley KishimotoのFashion on Weekにて展示された1台。チネリ・スーパーコルサのフレーム、そしてサドルには同ブランドのシグネチャー・デザインパターンの"Flash"が奢られる。ペインティングおよびビルディングはMark Eleyの友人でもあるDeath Spray CustomのDavid。コンポーネンツにはカンパのヴィンテージ・レコードが採用されている。自転車史に記録される名作といえるだろう。

「難しいことはない、答えはいたってシンプルなんだ」

雑然としたスタジオの1部屋。がしかし、無駄なものはひとつとしてない。ここには創作に必要なツールそしてソースが散りばめられているのだ。まさにクリエイティブ最前線である。

取引先や友人だけが得られる特権がここにはある。なんとコレクションなどで使用したサンプル品が、信じられない価格で売られているのだ。サイズが合えばとにかく儲けもの。

 またEley Kishimotoといえば、ビビッドかつ緻密に計算された美しいデザイン・パターンがウリのひとつといえるが、そんな彼らのパターンが生かされるのは、ファッションの分野のみならず、家具やアクセサリー、またスニーカーや下着など多岐にわたっている。中でもここで特筆したいのはもちろん自転車である。

 以前ロンドンで開催されたEley Kishimotoの"Fashion on Week"では、同ブランドのシグネチャー・デザインパターンである"Flash"をベースとした作品が数多く展示されたのだが、その中でとりわけ異彩を放っていたのが、チネリのスーパーコルサ・フレームに“Flash”パターンを奢った1台の自転車だった。まるで3D写真を見ているかのような、飛び出るパターン。ホワイトとブラックの洗練された美しさ。

 これまで自転車史には数多くのアーティスティツクなバイクが生まれてきたが、このFLASHチネリも間違いなくそのひとつとして記録されるべき1台にちがいない。そして、この自転車のペイティングおよびビルディングを担当したのは、Death Spray CustomのDavidである。

 「"Flash"パターンを奢る題材として自転車を選んだのは、自然な成り行きだったよ。難しいことはない、答えはいたってシンプルだ。そう、僕は自転車が大好きなんだから。それ以上の理由があるかい?」

 そう話すのはMark Eley。確かに……。好きだからこそ造ってみた、それこそが全てなのだ——。

ダンディという言葉がぴったりなMark Eley。自転車とオートバイを心から愛する、ウェールズ出身の粋人である。

カメラ:Soichi KAGEYAMA
テキスト:Kota ENGAKU
媒体:PEDALSPEED UK

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