2018.10.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

アイデアの根源を探る旅「Ben Wilson」

ロンドンを代表するインダストリアル・デザイナーのBen Wilson。イーストロンドンのビルの一角にある彼のガレージには、言葉では表せないほどに面白いモノが散りばめられていた。

プレイバックすることで得るものはたくさんあるんだよ。

ガレージの壁にステンシルでふきつけられたBen Wilsonデザインのカンパニーロゴ。文字だけみれば何てことのないフォントだが、文字が並べば配置そして文字間隔などすべてが絶妙なバランスで、スタイリッシュな印象を与えてくれる。

モーターサイクルを趣味とするBenの愛車は、ガスタンクに自身でカスタムペイントを施したボバースタイルのヤマハXS。リジット化を施し、前後に貴重なインベーダーホイールをセット。アメリカンテイストを感じる雰囲気抜群の1台だ。

 クリエイティブな発想を常に持っていることは難しい。日々の出来事にアンテナを張り巡らし意識を拡散させる。アイディアが降ってくることもあれば、もちろん何ひとつ思いつかないことだってある。カタチになれば、アイディアからはじまるその製作プロセスというのはついつい忘れがちだけが、僕らメディアが本当に取り上げるべきは、ふと思いついたそのアイディアであり、またプロセスではないだろうか。きっとカタチになった結果よりも、何かを成し遂げるまでの過程のほうが、学ぶべきことは多いはずだから——。

 そんなことを改めて考えさせてくれたのは、ここに紹介するインダストリアル・デザイナーのBen Wilsonだった。イーストロンドンのとあるガレージ。レンガが積み重なったその旧きビルの一角が、世界中のブランドと手を組み、自転車、アパレル、家具など様々な作品を手掛ける彼の作業場だ。とにかく日の当たらない湿気を帯びたガレージは、異質な雰囲気。作品なのかそれともゴミなのか(失礼!)、見分けのつかない様々なモノに囲まれたその空間で、主役のBenはコンピューターに向っていた。

 「よく来たね! キミたちのことはTOKYO FIXEDのMAXから聞いているよ。日本の自転車MAG.でしょ。もちろん僕に何を聞いてもらっても構わないし、どんなものだって撮影していいよ。別に隠すことなんてひとつもないんだから。とにかく僕が話をするよりも、写真を撮影してもらえば全てがわかるかな」

と、会うなり饒舌なBen。ふむふむなるほど。たしかに彼の言うとおり、作品を撮影すればそれ自体が全てを物語ってくれるかもしれない。こうして、まず僕らが撮影をしようとしたのは、Benの机に置かれていた真っ白なサドル。よく見ればそれはBROOKSじゃないか。

 「これはツバメをモチーフにしたもので、製作に2年を費やしたんだ。僕とSTUSSYとBROOKSのトリプルネーム! ほら見てよ、ツバメのシルエットの中に文字を入れ込んであるんだけれど、フォントが70年代っぽいでしょ。トラッドなBROOKSにこういった文字を使うことが面白いと思うんだ。

 そもそもBROOKSにはSWALLOWという名のモデルがあり、だったらストレートにツバメを使って、パッケージやアイコンのデザインを表現したらいいと思ったんだ。直接的なことは皆やりたがらないけれど、実はストレートな表現が一番スタイリッシュで伝わることがあると僕は思っているんだ」

作業場に置かれたたくさんのモノたち。作品なのかそれともゴミなのか、その実はBenと彼のアシスタントにしかわからない。もちろん使えそうな興味深いパーツがゴロゴロと散乱している。

スケートボードが積み重なるトレーラックには、作品の製作に使う細かなパーツが種類ごとに分けられている。スチールパイプ、ボルト、プレートなどなど。部品が積み重なり作品に変貌する。

Originality and Advance

Bike-Moto/
Benの作る自転車といえば、フレームの周囲にLEDを奢り、寝そべりながらライディングする4輪のthe Artikcarが有名だが、こちらも海外の雑誌に取り上げられた1台。タイトルが示すとおり、本来ならこちらのミニベロはブルーのオートバイ風カウルをフロントに装備するのだが、取材日はちょうどカウルを改良中とのこと。そのため、すっきりとした自転車だけの撮影となった。もちろんこちらのパイプ溶接はBen自身で行ったものである。

包み隠されたバッググラウンドを紐解く。

Ben Wilson×STUSSY×BROOKSのトリプルネームで製作されたリミテッドエディション。パッケージに描かれたツバメのモチーフが興味を引いてくれる。

 百聞は一見にしかず、そんなニュアンスでいたBenだったけれど、実際に僕らが作品の撮影を始めれば、彼は視覚的には分かりえない要素を補足的に説明するだけでなく、その作品の製作のために必要としたプロセスやヒストリー、アイディアなど包み隠されたバックグラウンドを、詳細に語ってくれる。それも全ての作品に対して……。

 どうやら彼は、出来上がった結果よりも、そこに至るまでのプロセスを大事にするデザイナーのようだ。確かに聞いている僕らとしても、そんなヒドゥン・ストーリーを聞くのは、この上なく愉しい。やはり百聞は一見にしかず、そんな言葉に当てはまらないことって世の中にたくさんあるのだから。

 「ついついしゃべりすぎちゃうのは僕の性格かな(笑)。でもせっかく作ったのだから、より深く理解してほしいと思うんだよね。誤解を招く言い方かもしれないけれど、アイディアの根源を紹介することは、また新たなアイディアを生むことだと思っているんだ。それは僕でも他人でも誰だっていい。

 とにかく新しいモノが生み出されることは素晴らしいことなんだよ。だからこそ僕は自分が作品を完成させた時に、必ずアイディアから始まった結果までのプロセスを振り返るようにしているんだ。そう、プレイバックすることで得るものはたくさんあるんだよ」

オートバイを趣味とするBenだけに、ガレージには彼のヘルメット・コレクションが幾つも。写真はリペアを自ら行ったヴィンテージのBUCOだ。

テキスト:Kota ENGAKU
媒体:PEDALSPEED UK

NEWS of IN THE LIFE

ARCHIVES

RANKING

POPULAR TAG

NEWS

SEARCH