2018.11.09

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

マニアック倶楽部「フジミ ペッタンコの誘惑」

現在もフジミのカーモデルの基幹シリーズとして愛される、IDことインチアップディスクシリーズ。その創成期とも言える1980年代初頭、フジミは起死回生を狙っていた。当時のフジミはこれといった看板商品もなく、業績も決して芳しいものではなかった。だからこそ当時の社員たちは知恵を絞った。お金はかけられないが、多くの人を楽しませるものは出来ないか。その答えがインチアップディスクシリーズなのである。

 本当のことをいえば当時、僕はフジミの一部の車種を避けて通っていた。その理由は単純で、僕の思う実車たちの印象とあまりにもかけ離れていたからだ。上から押しつぶしたような平べったい形は、簡単に言えば「似ていない」。そのひと言だった。

 ただ、実は僕は大きな勘違いをしていた。その形状がフジミの技術力の無さ、あるいは原型師のクセといった、ネガティブな要素に起因していると思いこんでいたのである。しかし、事実はまったく異なっていた。実は"似ていないのでは似せていなかった"のだ。今回、当時インチアップディスク(ID)創成期にフジミに籍を置き、その現場を知る人物に話を聞くことができた。

 「マークIIやチェイサー、R30スカイラインなどは企画当初の段階では普通のスケールモデルとして進行して、実際に原型のモックアップも作られていました。ところがそれを見た当時の首脳陣が"こんな普通のカーモデルが売れるはずはないだろう。もっとシャコタンにした時に低さが強調されるような形に修正しろ"と現場に指示しました。そして作り直されたのが、現在も売られているあのキットたちなんですよ」

 その話を聞いた時、僕は今までさんざん貶してきたフジミの一部のカーモデルたちに対して、申し訳ない気持ちになった。少なくとも当時の僕のまわりの"アタマデッカチ"なクルマ好き少年たちは、フジミのIDシリーズには"要注意"だというレッテルを貼っていた。

 なんせ当時はパーツの万引き防止のために箱が紐で十字に結束され、中身を見ずに買うことも少なくなかった時代。箱絵のカッコ良さに騙されてはいけない、それは少ないお小遣いをやりくりして、間違いない買い物をする僕らなりの予防線だったのだ。

 IDシリーズの立ち上げ当時、フジミ最大のライバルといえば、アオシマ。アオシマは『ザ・チューニングカー』シリーズが大ヒットし、カーモデル市場で存在感を強めつつあった。フジミとしてはあちらが約10年落ちの中古車なら、こちらは当時の新車で行く、そんな絶妙な棲み分け戦術も的を得ていたのだろう。パッケージのセンスの良さなども手伝って、アタマデッカチ少年たちの思惑とは裏腹に、IDシリーズは売れに売れた。

 「IDシリーズがヒットする前のフジミは、経費削減はもちろん、営業用の社用車ですら台数を減らそうかという状況でした。そこでなるべく基本を変えずに、ボディだけ作り分けてバリエーションを増やすという発想から、共通シャシーが産み出されたのです」

 このシャシーもアタマデッカチ少年たちにとっては面白くなかった。もちろんモーターライズとするならば申し分ないが、インナーフェンダーすら備えない平板なシャシーは"板シャシー"と呼ばれ、リアリティとは無縁のものだったからである。だが、それもまたIDシリーズが飛躍する障害とはならなかった。バリエーション戦略や時代に即したエアロパーツやアクセサリーパーツの投入に関しては、フジミにはズバ抜けたセンスがあった。

 IDシリーズが売れた結果、待っていたのはフジミ・カーモデルの飛躍的なクオリティアップだった。開発資金も潤沢になってきたこともあり、開発陣も乗りに乗っており、日本のプラモデル史にその名を残す、かつてない再現性を売りにしたフルディテールのエンスージァストシリーズを発売。このシリーズの登場によってフジミのイメージは一変する。またIDシリーズ自体も、新製品に関しては専用シャシーを与えられ、タミヤやアオシマの製品と見比べて遜色のない内容に進化していった。

 さて、ここまでは約30ウン年前の昔話だが、今改めて真実を知り、当時避けて通ったモデルたちを眺めていると何故か愛おしくすら思えてくるものだ。人間勝手なもので、これがマルイのノッポマシーンのようなディフォルメモデルだと思えば、逆にカッコよくも見えてきたりして、ついついペッタンコ・フジミたちの制作をはじめてしまった。

 今回は、同じような経験をたどったCreativityのクルーたちと一緒に、ペッタンコ祭に嵩じてみたのである。この年代のフジミのキットに対する見方が変わったという読者諸兄がいたのならば、是非ペッタンコ・フジミに挑戦してもらいたいものだ。仕上げた暁には、これまでとはちょっと違った不思議な満足感が待っているはずだから。

ペッタンコ史上随一、ハンサム・デフォルメと称される430は再販されて入手も容易に

 数あるペッタンコ・フジミの中でもプロポーションのバランスの良さ、実車をより伸びやかにデフォルメしたデザインスケッチから飛び出してきたようなボディの評価が高い430。作例はスポーティなターボS仕様をモチーフにツートンカラー、ヘッドライトリフレクターの追加、アオシマの430グリルへの変更を行ってリアリティをアップしている。べったり落とした足元にはインチアップディスクシリーズならではのポルシェディスクを装着。タイヤは京商ミニッツ用。

◆Builder : 羽山和良
◆Base : フジミ 1/24

フジミ・インチアップディスクを大成功に導いたトヨタ三兄弟

三兄弟随一のスポーティさを誇ったチェイサーアバンテをお馴染のツートンで

 現在も販売が続くGX61チェイサー後期型。プラモデルとしては唯一の存在だ。作例は素組のように見せかけて、実は直線的なバンパーの形状やボンネットセンターの凸状ラインの修正など、よりチェイサーらしく見える工夫が凝らされている。

 また、メッキのヘッドライトリフレクターの追加も効果的で実車感をアップしている。横から見た際に、シャシーが丸見えになるのを嫌って、サイドシルを下方に延長する加工も施されている。

◆Builder : 羽山和良
◆Base : フジミ 1/24

ペッタンコボディはそのままに、ファクトリーストック路線で仕上げる粋

 ほかの2台がスタンス車高でよりそのワイドフォルムを強調したのに対して、このクレスタは車高を敢えて上げて、アリイのGX51から移植したタイヤ&ホイール、フロントシートなどを組み合わせて、純正仕様にフィニッシュ。ツートンの色調や、ライトリフレクターの追加などによって不思議なほど説得力のある作品に仕上がっている。

◆Builder : 堀内 勇
◆Base : フジミ 1/24

行きつく先は純ベタ路線キット本来の味わいを尊重してフィニッシュ

 その存在を知ってから約30年経って、初めて手にしたフジミのGX61マークII。実は近年の再販品はクリアパーツが新金型部品(オリジナルが紛失したために永らく再販されなかった)に変更されており、ヘッドライトやテールライトのカットが格段にリアルになっている。

 制作にあたってはチェイサー同様、ボンネット断面形状の修正、ヘッドライトリフレクター(アオシマのAE86レビン用加工)の追加などを行っている。インテリアは完全に素組だ。ホイールはフジミのボルクメッシュに、アオシマの引っ張りタイヤを組み合わせている。

◆Builder : 鵜飼 誠
◆Base : フジミ 1/24

板シャシーはこう使う!

 リアルさは無い板シャシーだが、トレッドやキャンバーなどの加工は容易。トレッドの拡張はアッパーマウントをいったん切り離し、間にプラ材を挟んで接着。タイロッドはセンターで切断し、トレッドが拡張した分、プラ材で延長。ロワーアームは一本物のキットのパーツをセンターで切断して接着。

 ストラットにタイヤが接近すればするほど、ステア時のタイヤの前後移動が少なくなるので、ホイールのインセットで調整する。リアはプラ棒の手抜きアクスル。キャンバー角が左右対称になるように注意したい。

工作のツボ

①ゴールドメッシュは意外とやっかい。まずホイール全体をゴールドで塗装。

②サークルカッターで円形のマスキングシートを作る。リム部分にメッキ塗料が吹き込むように直径を調整。

③メッキ塗料吹き付け、仕上げにメッシュのスポーク前端にゴールドを挿して完了。

④最初は当時流行った換気扇系デザインホイールを履く予定だったが、純正ツートンと似合わないので却下。

⑤ボンネットセンターの凸プレスラインは、シアノンを盛っては削るの繰り返しで「へ」の字断面に修正。

ペッタンコではありませんが、クセのあるID初期の2台をよりハンサム箱絵仕様に!

 なかなか手ごわいことで知られるフジミの10ソアラ。単にボックスアートカラーに仕上げただけではなく、前後バンパーを下方に1mm延長、前後フェンダーアーチの小径化、ピラーが細く見えるように窓枠を削り込むなど細かな修正が積み重ねられている。

 リアホイールはオレンジウィールズのリムを使って深リム化。一方、XXはフロントバンパーを3mm短縮し、長すぎるリトラクタブルヘッドライトのリッドを同じく3mm弱短縮、リアバンパーは0.5mmほど後方へ移動、リアフェンダー叩き出し加工などを行い、見事にボディフォルムを適正化している。

 両車、キットの持ち味を尊重しながら、よりカッコよく見せるというハイレベルなモデリングを試みている。

◆Builder : 須藤一平
◆Base : フジミ 1/24

シリーズきってのハード・ペッタンコ仕様R30系は、いじると一段と面白い

実車オーナーの目線で徹底してディテールアップ

 自らも鉄仮面オーナーであるビルダー。幅広な印象なフォルムはそのままに、フロントバンパーやスポイラー、サイドステップ、窓枠などの造形を徹底して実車に近づける加工を施している。

 まっ平らなボンネット先端も加工して峰状のプレスラインを再現。二重のマフラーチップなど細部までこだわり抜かれた作品だ。自作のデカールが抜群のリアリティを演出する。実はアオシマの鉄仮面の初版の箱絵を意識した仕様ともなっている。

◆Builder : 吉田 優
◆Base : フジミ 1/24

貴重なフジミR30、前期後期の2ショット

 黄色い前期型は森山琢矢さんがかつて制作途中だったものを近年仕上げたもの。今や後期型に金型改修されてしまったため、非常に貴重な存在だ。サイドモールなどは後期型と違い、実車通りのモールドとなっている。いかにも当時らしい純正ツートンが印象的な後期型は、羽山和良さんの作品。アオシマのレーシングハートホイールやフォグランプなどが、当時感を演出。ポールニューマン仕様デカールは吉田優さん作。

これほど化かして楽しいプラモデルは滅多に無い!?

 R30スカイライン後期型唯一のプラモデルであるフジミのキット。前期型から無理矢理金型改修で後期型に変更しているため、やや無理のあるディテールも多い。特に延長されたフロントバンパーの形状の違和感は少なくない。それ以外はサイドモールの彫り直し、ライトリフレクターの追加を行った程度。ホイールはキットのリネアスポーツをスパッツスティックスと、筆塗りのフラットアルミで純正風に塗り分けた。ポールニューマン仕様デカールは吉田優さん作。内装のモールドは実車とまったく異なるが塗り分けだけでそれらしく見せている。

◆Builder : 鵜飼 誠
◆Base : フジミ 1/24

工作のツボ

①実車の写真と見比べるとどうもバンパーが寸詰まりだ。2×4mmのプラ棒を瞬着で固定。

②ひたすら削り込んで実車風の造形に。ダクト穴を追加し、モールラインを彫る。

③バンパーサイドも下方に延長。大き目のプラ材を瞬着で貼り、削り込んだ。

④後期型の金型改修で、サイドモールはなぜか1条に。

⑤上下のラインを追加して、純正のモール形状を再現する。

⑥スジボリが追加された状態。ちなみにサイドモールは、前方から後方に向かって少しずつ太くなっていく形状だ。

⑦塗り分けが面倒に思えるテールライトだが、裏からご覧のエリアを隠ぺい力の強いブラックサフェーサーで塗る。

⑧ラッカーシンナーを含ませた綿棒で、テールライト部分の塗料を剥がす。あとはクリアレッドとクリアオレンジで塗り分け、表から軽くスモーククリアを塗布すればOK。

⑨センターコンソールに接着する方式は位置決めが難しく、フィッティングも悪いので、ボディ側にエポキシ接着剤で強引に接着。

テキスト:Makoto UKAI(鵜飼 誠)
媒体:modelcars tuning 3

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