2018.09.14

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

"美味しくて、美しくて、ワクワクするような、夢のある野菜を!"「北山農園」

目の前には富士山。そんな風光明媚で長閑な町で、野菜を育てて食べる楽しみ、デザイン、空間の提供をしているオーガニック野菜農園。そこには何が待っているのだろうか。

 富士山西麓に位置する静岡県富士宮市北山。この地には火山灰土と腐植で構成された黒ボク土が広がる。水はけが良く、有機物を多く含むため、多くの作物が育ちやすい農業に適した土地だ。

 「北山農園」は平垣正明さん、紀子さん夫婦が一代で築いたオーガニック野菜を育てている農園。無農薬にこだわっている他にも変わったアプローチをしている、世界にひとつの農園である。

 "美味しくて、美しくて、ワクワクするような、夢のある野菜を!"がモットーで、月に1度はイベントに参加しているというお二人。マルシェでは野菜の販売とともに、フラワーアレンジメントの様なベジタブルアレンジメントを作り、ただの野菜直売でなく、美しく陳列し楽しい買い物を提案している。

「女の子が雑貨を見ているみたいに目を輝かせて、うわーキレイ! って言ってくれるとヨッシャ! って思いますね」。

そう紀子さんは笑う。

 正明さんはカメラマンでもあり、野菜の写真を撮ってはwebページやフェイスブック上で公開している。イベントの時に買い物してくれた方にはポストカードをプレゼントし、現在ではコレクションしているお客さんもいるのだそう。見て、食べて楽しむ、そんな機会を提供してくれる北山農園の野菜づくりを取材した。

うさぎの食事から始まった野菜づくり

愛うさぎの「ウズラ父さん」。もともとは「ウズラ」だったが、子供がたくさん生まれたため、父さんが付いた。いつも採れたてのニンジンを食べられる幸せ者だ。

 ことの発端はホームセンターで買ったうさぎ。「まめ」と名付けたそのうさぎをすごく溺愛した平垣家。

 「ある時、まめに葉っぱのついたニンジンを与えると、夢中で葉っぱばかりを食べたんです。それが切っ掛けで葉っぱつきニンジンをスーパーで探してみたのですが、ニンジン本体だけのものばかりで売っていない。市場が梱包と保存の効率を良くするために切られているんです。それで、市場に出てないのだったら自分で作るしかない! きっと私たちみたいにニンジンの葉っぱを欲しがっているうさぎの飼い主がいるはず! と思ったんです。

小さなうさぎが食べる物だからオーガニックにこだわり、飼い主が買って満足、食べさせて満足できればいいなと開いたのが、うさぎ専用のニンジン葉ネットショップ"おひさまのたね"でした」。

 それまで静岡市内で写真スタジオを営んでいた平垣さんであったが、写真撮影は店がなくても出来る。愛するうさぎの為、ニンジンを育てる農家になろうと決心した2006年、富士宮に移り住んだそう。

 「その延長で人間の食べる野菜も作ってみたらおいしくて、色んな人の縁で今の形になりました。農薬や化学合成肥料が良い悪いなどはひとつの切り口から断言出来ません。オーガニック野菜を作っている理由は、美味しいから。それだけです」。

ルバーブを収穫しているところ。春~初夏が旬、日本ではなじみが薄い野菜ではあるが、独特な香りと酸味があり、コンポートやジャムにしても美味。

玄関先に置いてあったのは新玉ねぎ? と思ったが、芽が出てきたペコロスだという。このまま植えれば初夏には分蘗し、葉玉葱として美味しくいただける。

紀子さんが野菜を切ったりならべたりしてコーディネート。正明さんが写真を撮ってポストカードを作ったり、WEBのギャラリーに掲載している。

自分たちで土間を作り、薪ストーブも設置。

春の訪れ、春の戯れ

古民家を好きにしていいと言われたのでリノベーションした母屋。隣には富士山源流の水が豊かに流れ、安らぎのBGMとなっていた。

 平垣さん夫婦は2ヘクタールの土地に年間百種以上の野菜を栽培している。

 「野菜を作る為に知識は頭に入れるけど、経験値と五感が大切だとつくづく思います。イタリアの野菜なんて、乾燥したイタリアの土と同じではないから、当然同じ味にならないですし。その土地土地でどうすれば良いのかを工夫するんです」。

 取材に伺った4月下旬はちょうど新緑が鮮やかになり、種蒔きで多忙な頃だった。標高4百メートル程の場所にある為気温が低く、他の場所に比べると作物の収穫時期が遅い土地柄ということもあり、一年を通して一番採れる野菜が少ない時期だ。しかし、北山農園には春は春の楽しみ方がある。

 良い状態の野菜だけを出荷するので、美味しい時期を過ぎたら畑にいくら作物が成ろうと収穫しない。一見もったいない行為に見えるが、やがてその作物が花を咲かす。ちょうど冬に採りきれなかった小松菜や白菜からはとう立ちが伸びていた。

 「人間に食べられる為じゃなく、種を残す為に野菜は生きて、花を咲かせます。だからあえて抜かない。春はこの美しい花畑を見て楽しむんです」。

 そう言いながらも、平垣さん夫婦はその花畑からつぼみの付いた茎"なばな"を丁寧に摘んでいた。収穫されなかった野菜も形を変え、おいしく食す。これが春の醍醐味だ。

採れたてのニンジンを丁寧に洗う紀子さん。何も付けずにそのまま食べてみると、品種によって違った味を持つことに気づかされる。

カメラ:Soichi Kageyama
テキスト:Junpei Suzuki
媒体:HUNT

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