2018.09.18

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

川辺に建つFly Fisherの家

一見レストランかと思い、駐車場まで来てしまう人もいるという、洒落たこの木造の建物。広くとられたウッドデッキまで続く長いアプローチを上るとそこは、その名も言いえて妙な大人の趣味の家だった。

釣りにフォーカスした木の住宅

薪ストーブの前には寒山家具のロッキングチェア。冬は火に当たりながら本を読み、うとうと揺られる生活が見えてくる。

キッチンスペースには勿論ガスコンロを設置できるが、こちらではツーバーナーをオン! ダッチオーヴンも使えるカセットコンロも大活躍する。

趣味を反映した家づくり

テーブルの上には村田久さん、中川祐二さん、西山徹さん、田渕義雄さん著作のフライフィッシングについての資料やエッセイなど、大御所の名前が連なる。

 長野県の駒ケ根市と上伊那郡宮田村の間を流れる太田切川。そのほとりに「川辺に建つFly F isherの家」というモデルハウス兼、設計事務所がある。その事務所、914ワークショップはアウトドアライフを愛する二人の兄弟が経営しており、趣味を反映した家づくりを提案しているのだ。

 そして、この建物は兄の元島洋司さんの趣味であるフライフィッシングをテーマに、隠れ家的な釣り小屋をイメージして作られたもの。本当に釣りを嗜む人が住んでいるような内装もさることながら、一番に目が行ったのはその広いウッドデッキだった。

 「ウッドデッキって屋外と屋内を繋げるためのワンステップの空間なんですよ。全天候型だし、これが広い方が絶対良いんじゃないかと思って、幅270センチも取ってるんです。だって日本の60センチ、90センチのものってベランダじゃなくて物干し場でしょう? それだからといって180センチまで広げても、テーブルと椅子を置くと人が通れなくなる。アメリカの家には玄関の横にこういう広いデッキがあって、揺り椅子があって。あれは使い勝手がいいんだろうけど、どうして日本では作らないのかなぁって。始めはその疑問からですよ。

 正直、場所も屋根も要りますし贅沢なつくり方なんです。だけど、どうせ作るなら最低この270センチの広さを設けたいですね。我々は常にもっといい方法があるんじゃないかって探しています」。

兄、洋司さんがそう語る側で、趣味のダッチオーヴン料理の準備をする弟の浩司さん。確かにこの広さがあれば何の抵抗もなく外で食事を取ることが可能だ。

完全に趣味に没頭するためのテーブル。フライのタイイングをするにはこれ以上ない空間だ。充実のラインナップは実際使っている人がいてこそ。

 ラインナップは他に"石窯のある家"や、日本的な農業を営む古民家をイメージした"伊那谷の家"、トトロの家のような洋館の付いた"昭和の家"。その人の趣向に合わせたものが選べるが、注文住宅なので購入者の要望を反映する為、建売のように同じものが並ぶ心配はない。

 「オーディオが好きだとか、自動車が好きだとか、ガーデニングが好きだとか、そういうのをお聞きして、じゃあこんな要素を入れましょうかとか、ありきたりな家づくりじゃなくて趣味性を活かした家を作りましょうと相談させてもらうんです」。

共通するのはこぢんまりとして、使い勝手が良くて、質感を大切にしている大人の家という点だ。

 「田舎の家って大体大きく作ってあるんですよ。土地も安いですし。でもこの家は屋内面積が30畳とロフト。このぐらいこぢんまりとした家はエコにつながると思うんです。若いお母さん方も、良いお家ですねって言ってくれるんですけど、やっぱりお子さんがいる事を考えると今風な無駄のない、四角い2階建ての家を選ばれる方が多いですよね。これじゃあ面白くなかったなぁっと思うのは20年、30年あとなんです。私達も歳とってからそう思うようになりましたし」。

 そう言うように、こぢんまりとした家であるが、そう感じないのは柱のない空間だからなのだそう。

 「日本の大工さんは皆、畳の大きさで部屋を区切っちゃうでしょ。4畳半、6畳の世界を考えて。それは基本ではあるけど、それに囚われ過ぎているんじゃないかなと思います。ウチの家は、ここに柱があるからこういうレイアウト、という縛りが無くて、本当に自由。好きなところで間仕切りを作れるんです」。

元島兄弟の満漢全席

ダッチオーヴン料理の定番スタッフドチキン。今回はレバー、マッシュルーム、にんにくのみじん切り、玉ねぎ、コンソメ、パン等を鶏の中に詰め込んだ。

 まだ日本でそれほどダッチオーヴンに馴染みがなかった25年ほど前、その虜になってしまった浩司さん。

 「今でこそ皆知っていますけど、出会った当初はこんなに面白いものがあるんだなと感動しました。それ以降、我々はキャンプに行ってもBBQをしません。全部ダッチオーヴンで料理するんです。下ごしらえして火にかけて放っておいて、遊んでいるうちに料理ができるわけです」。

 仲の良い兄弟はテキパキと料理を作り上げ、食べている間にもどんどん料理し、たくさん振る舞ってくれた。

 「だんだん使い込むうちに、最初は鉄色だったダッチオーヴンが黒く育っていく。これをブラックポットっていうんですけど、西部男は、『俺の女房とピックアップは貸してやっても良いけど、俺のブラックポットだけは貸すわけにはいかねぇ』と言ったほど大事にしていたんです」。

 「一頃、流行って出てきた中国製の安物は、蓋と鍋がうまくかみ合わずオーヴン機能が果たせないとか、粗悪な鉄を使っているから鉄臭くなるとか。ダッチオーヴンを始めたいっていう人にはちゃんとしたものを買って、きちっと使って、育ててやりましょうとアドバイスしているんです。そして私らは家も育てましょうって。新建材の安かろう悪かろうでなく本物の材料を使って年季が入れば味が出てきますしね」

限定1,000個だけ作られたレアもの、ロッジ社のベビーダッチ。100円ショップで買った卓上コンロがぴったりフィット。固形燃料ひとつでご飯が炊けた。

美味しい料理でビール(ノンアルコール)が進む。紹介しきれなかったがアヒージョやカリッと焼いたバケット、豚バラ煮等、フルコースを振る舞ってくれた。

川辺で見るFly Fisherの道具

テキスト:Junpei Suzuki
媒体:HUNT

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