2018.09.21

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

焚火と薪ストーブに魅せられたフォトグラファー

普段は岐阜県で写真業を営んでいる写風人さん。彼が1年ほど前から始めた、長野県駒ヶ根市での週末山暮らしは、常に薪焚きと共にあった。

薪ストーブ歴19年

お湯を絶やさないよう、ポットの定位置はストーブの上。コーヒー豆は、スペシャリティーコーヒーを自家焙煎している店のもの。

バーモントキャスティングスの薪ストーブの傍らには、積み重なったロッジのダッジオーブン。研修センター時代カラオケが収まっていた場所は、薪置き場になった。

長野と岐阜とのIターン生活のはじまり

左からハッセルブラッド903SWC、500C/M、リンホフ・スーパーテヒニカ4×5。過去の愛機は現在、高級なインテリアとなっている。

趣味の部屋だけでこれだけの広さ。眼下には大きな庭が広がる。週末だけ遊びに来るのでは手に余ってしまう広さなので、友人もよく招くのだそう。

 焚火と薪ストーブを愛する写風人(しゃふうじん)さんは岐阜県在住のフォトグラファー。彼は19年ほど前に自宅兼スタジオを新設し、その際に薪ストーブを導入。以来その魅力にとりつかれているのだ。

 「写真業は親父の代からです。仕事柄、春と秋は忙しく家族で出掛けることは少なかったのですが、夏と冬は比較的暇な時期で、夏はキャンプと水泳、冬はスキーと、幼いながらもアウトドアに親しんできました。アウトドア好きとギア好きは父親の影響で、僕が焚火に興味を持ったのは子供の頃にやったキャンブでの焚火でした。焚火を見ると、子供って木の枝の先っちょを燃やしたりするでしょう?僕もそれが楽しくて焚火が好きになりました」

 今年の夏に『薪と炎』という写真展を開いた写風人さんは、その際に子供の火遊びをイメージしたポスターもつくっており、それを眺めながら子供のころの思い出を語ってくれた。

 アウトドア少年だった写風人さんは、大人になってからはスポーツ少年団の指導で子供達をキャンプへ連れていくことも頻繁にあり、アウトドアにどっぷりだったそうだが、その後、30〜40代になると、土日は婚礼などの仕事が入ることも多く、遠ざかった日々が続いたという。しかし、薪ストーブとの出会いをきっかけにアウトドア熱が復活し、8年前より『写風人の薪焚きLife』というブログを始めたのだ。
http://syahoojin.blog79.fc2.com/

 そのブログがきっかけで、駒ヶ根にある薪ストーブメーカー・ファイヤーサイド社との繋がりができ、現在ではカタログ撮影や、ウェブサイトへのコラム投稿なども任せられている。

 常日頃から薪ストーブに触れている写風人さんだが、もっと山間の場所でゆっくり過ごしたいと、昨年から長野県の駒ヶ根で週末山暮らしをはじめた。今回は本人が駒ヶ根ベースと呼んでいる趣味の家を取材させてもらった。

60年代に発行された『キャンプカウンセリング』は、今では絶版になった本で、昔のキャンプ道具や過ごし方が載っている。今流行りの遊びも、この中で既に紹介されていた。

 「ファイヤーサイド社の仕事で駒ヶ根に訪れることも多かったのですが、来るたびに南アルプスと中央アルプスの壮大な景色に圧倒されました。ゆくゆくは山暮らしがしたいと思っていたので、それならここだと、三年ぐらいその拠点探しをして、最終的にこの場所に落ち着いたんです」

 のどかな山道の途中にある駒ヶ根ベースは、元は法人の研修センターだったため、週末遊びに来るには大きすぎるぐらい(その敷地面積は600坪だというから驚き)だ。

 通い始めて1年ちょっと、外装は当初のままで、直したいところは沢山あるけれど、とにかく雑草がひどくて、雑草刈りで週末がつぶれると写風人さんは苦笑い。敷地内には東屋やファイヤープレース、友人がキャンプをしにやってくるほどの広い庭を有し、薪焚き人にはたまらない場所となっている。

 母屋にある趣味の部屋はもともと研修室として使われていたので、広さ50畳(85平方メートル)という大空間。そこには彼の大好きな薪ストーブと、キャンプを始めとしたアウトドアギアが並んでいた。

 「多国籍趣味といいますか、古い道具に愛着を感じて、色々集めてしまうんです。日本の古道具や、カウボーイのガンベルトなんかもあったりするので一貫性のない部屋ですけどね。

 ギア好きになったきっかけは父親の影響ですね。父親が使っていた駐留軍から貰ったクッカーとカラトリーがあるんですけど、今のみたいにペラペラじゃなくてしっかり作られているんです。親父はそれをすごく大切にしていたんですよ」

 本人こそ一貫性がないと謙遜しているが、その部屋はたしかに彼の世界観で統一されていた。

 「ここに来たらどうしても薪ストーブを使いたくて、夏でも火を入れるんです。いつでもホットコーヒーを飲むので、常にお湯があるってだけで気分が全然違いますよ。ダッチオーブン料理はもちろん、食器乾燥、洗濯物干しにもなりますし、生活必需品ですね。

 僕はあんまり手の込んだ料理は好きじゃないんで、パッパッパって作って、調味料なんか適当にやっちゃうんで、作るたびに味が変わっちゃいますけどね」

薪ストーブで作る豊かな昼食

厚切りのベーコンと岐阜で採れた野菜を、シンプルな塩胡椒だけで味付け。ベーコンは日持ちするし簡単で安いので、よく使う食材だそう。

縄文土器はろくろで回して作るのでなく、縄状にした土を積み上げて形作ってから均すそうで、均等な形を作るのが難しいそう。だが、どれも整った形をしていた。

焚火をテーマに撮った写真。火種が絶えまいと頑張っている姿や、木の枝を燃やして遊んでいる情景が伝わって来る。

写風人さんの火熾し

山刀を使ってのバトニングをご教授いただいた。バトニングとはナイフや鉈の背を木で叩き、直立しないものや細い薪を割る方法だ。

ナイフでフェザースティックを作る。削って羽のように薄い毛羽を立たせる。

燃えやすい針葉樹から徐々に広葉樹をくべてゆき、オキを作っていくのがセオリー。

木と火との生活

薪割りも長年やっているのでお手の物。ストーブだけでなく焚火もするので、枕木にできるような生木も含め、いくつか種類を用意している。

薪割り、焚火、ダッチオーブン運搬用の手袋各種。一番左の手袋は洗える手袋なので、手にはめたままダッチオーブンを洗うのに重宝している。

山暮らし1年生、焚火55年生

売ってるの道具を使わないこともないけれど、こうやって木を使えばやかんだって吊せる。とブッシュクラフトの精神を発揮する写風人さん。

 食事を終え、錆びつく前にとスキレット、ダッチオーブン、食器を手早く洗い、乾燥させる為に薪ストーブのウオーミングシェルフへ。お腹が満ちて、それでは手製のチッペワ食器棚の下で焚火でも。そう思っていたのだが、当日は生憎の雨。今回はタープの下だが、いつもやっている小さな焚火遊びを見せていただいた。

 「登山ブームで多くの人が山に登っていますけど、いつ遭難するとも限らない。そんな時に火を熾す術を知っていれば必ず生き延びられると思うんですよ。いまどき火熾しなんて非現実的な行為みたいですけど、標高が高ければライターも使えないし、マッチは雨風には弱い。マグネシウム製のファイヤースターターなら雨の日でも使える全天候型なんです。

 だからファイヤースターターとナイフさえ持っていれば、その辺りの乾いた木を拾ってフェザースティックを作り、火が熾せるんです」

 と言っても、私も普段はあんまりこれはしないですけどねと、うそぶきながらも写風人さんは話を続ける。

 「焚火が楽しくなってくると、火熾しに懲りたくなるんですよ。いろんな方法がありますが、麻ひもを細かくほどいて綿状にして着火する方法や、チャークロスと火打ち石で付けるというクラシックなスタイルもいいですよね。まずやらないですけど、木と木の摩擦で熾す、きりもみ式とか。

 山暮らしの大先輩、田渕義雄さんのフィールドで焚き火料理をしてた時に、火がくすぶってきたんです。すると、そんなのバーナーでつければいいんだよ。っておっしゃっていました(笑)」

 写風人さんの焚火はミニマムで無駄がない。異なる大きさの調理具を置けるようにとハの字に寝かせた丸太の間に小枝や薪が寝そべる形だ。一人二人での焚火なら暖も取れるし、料理もできるので、このサイズで充分だという。

 「焚火というとピラミッド型に積み上げる人が多いですけど、実はあれ、ボーボー燃えるだけで薪の無駄使いなんですよ。。空気の通り道を作るのは最初だけで、熾きが充分にできたら寝かせるように置いた方が火持ちいいですね。

 焚き火に関するギアも色々興味はありますけど、最近は枝や木など自然の素材を使って、焚き火周りを工夫することの方が面白いんです。想像力を働かせると、単純な焚き火でもいろんな発見があったりして愉しいですね」

 焚火は55年生ですけど山暮らしは1年生。今までDIYをやってこなかった写風人さんは、ここに来て丸鋸や角鋸を手に入れ、テーブルを作ったり、キャンプカウンセリングの本を読んで焚火の道具を作ったり、ロープワークを覚えたり。今はやることなすこと新鮮で楽しいのだそう。

たどり着いた場所、モノ

これ一本で狩り、料理、藪を切ったりできるマタギ用のナイフ「ナガサ」。ナガサを作れる最後の職人、西根さんの作で、名前も彫ってもらったそう。

東屋の前に作ったチッペワ食器棚。焚火の上に設置して鍋やケトルを掛けたり、食器を掛けておくことができるクラシックなアイテム。

世界中から集めた写風人セレクション

右はロングセラーだったライカM6。左はライカとミノルタの共同開発した、ライツミノルタCL。共にコンパクトで操作のしやすい小型レンジファインダー機だ。

左下は関兼常の山刀、その上がバークリバーのブラボー1、右側2本がフィンランド製のプーッコ、一番上が北欧ナイフでは珍しいという折畳み式ナイフ。

よく見るとモデルガンも並んでいたり、男心くすぐるコーナー。まるでパズルのピースがバッチリあったかのように雰囲気のある空箱が並ぶ。

テキスト:Junpei Suzuki
媒体:HUNT

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