2018.12.14

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

地味だなんていわせない!「テンジクダイの魅力」

最近は海水魚店でもよく見るようになったテンジクダイの仲間。派手な色や模様のもの、透明な体で涼しげな色彩のものなど、さまざまな種類がいる。飼育方法も種によって若干異なるところがあるが、丈夫で飼いやすいものが多く、サンゴをつついてしまうようなこともない。さあ、テンジクダイの飼育を楽しもう!

How to テンジクダイ

テンジクダイとはどんな魚?

 テンジクダイとはスズキ目・テンジクダイ科魚類のうちの1種の標準和名であるが、テンジクダイ科魚類の総称としても使われることがあり、ここでもそのように用いる。世界の暖海におよそ350種が知られている大きな分類群で、日本にも100種ほどが知られている。

 ほとんどの種は背鰭が2つに分かれ、臀鰭に2棘ある。頭部に大きな耳石を持っていることから、「イシモチ」とも呼ばれており、和名の語尾に「〜イシモチ」とつくものが多い。英語ではカージナルフィッシュ、枢機卿魚と呼ばれている。枢機卿は教皇の最高顧問で、地中海には枢機卿の着る緋色の服をまとったような真っ赤な体のテンジクダイ科魚類が生息している。他の熱帯性海水魚同様インド︲中央太平洋に多くの種類が分布し、沿岸の岩礁・砂泥底・サンゴ礁域に生息するが、一部淡水域に生息するものも知られている。

 テンジクダイの中には全長20㎝を超えるものもいるが、大部分は大きくても10㎝前後で、食用になるものは少ない。しかし科の和名になっているテンジクダイのように重要な食用魚になっているものもいる。テンジクダイ科は、近年の分子系統学的研究ではハタンポ科、あるいはハゼ科に近いとされている。また、コモリウオ目とされることもあるが、時期尚早だと思われる。

アクアリウムに流通するテンジクダイの仲間

 観賞魚店では多くの種類のテンジクダイを見ることができる。日本の観賞魚店で販売されている種だけでも50種類ほどはいると思われる。比較的温和な種が多く、サンゴにも無害、色彩が綺麗で、飼育しやすいものが多いなど、マリンアクアリストに人気が出るための条件を多くそろえているため、もっと入荷する種類が増えれば、もっと人気が出てくるだろう。

 テンジクダイの仲間には名前がいくつかあるものもいる。たとえば、シールズカージナルフィッシュは観賞魚店では「フタスジイシモチ」という名前で販売されていることもあるが、フタスジイシモチというのは日本近海のやや深場に生息する種で、シールズカージナルフィッシュとはまた別の魚である。

 またフィリピンや沖縄から大量にキンセンイシモチなどが入ってくることがあるが、その中にはミナミフトスジイシモチやハイフィンカージナルなどの別種も混ざっていることがある。そのような混ざった個体を抜いて飼育するのもまた楽しいもの。

 海水魚店でのテンジクダイの選び方のコツとしては、体に傷がついていたり、鰭や体表に白い点がついているもの、透明な体をもつ種は妙に白っぽいもの、体が赤くただれているものを絶対に避ける。また入荷直後の個体も選ぶのはやめよう。

似合う水景や他種との混泳

ソフトコーラル水槽での飼育例。サンゴにいたずらしないので、サンゴ水槽でも飼育しやすい。

 テンジクダイの仲間はサンゴにいたずらすることはないため、サンゴ水槽での飼育も楽しめる。沖縄などからやってくるネオンテンジクダイやスカシテンジクダイのような涼しげで繊細な種は沖縄産のソフトコーラルを集めた水槽にもよく似合う。またプランクトンを捕食しているため、陰日性サンゴとの組み合わせもよい。マンジュウイシモチやイトヒキテンジクダイ、スジイシモチ属の種は枝状サンゴの奥に潜んでいたりするため、ミドリイシなどのSPS水槽が似合うのだが、一般的に観賞魚店で見られる種はどの種もどんなサンゴとも飼育可能だ。

 プテラポゴン・カウデルニーは棘の長いガンガゼなどウニの合間に潜むが、ガンガゼは棘が細く毒を有するため扱いには注意が必要。このほかヒカリイシモチ属の種もガンガゼやトサカ、ヤギなどの合間に群れているため、そのような生き物と飼育するようにしたい。

 テンジクダイは種類が多くコレクションしたくなるが、ネオンテンジクダイなどのような極端な小型種や、ヤライイシモチやオオスジイシモチといった大きめの種を同じ水槽で混泳するのはやめたほうがよい。とくに小型種は他の魚に襲われたり、攻撃されたりする可能性が高く、傷ついて弱ってしまいやすい。同種同士では種類によっては争うものもいるが、大人しいマンジュウイシモチやキンセンイシモチ、イトヒキテンジクダイなど複数飼育が可能なものが多い。ただ繁殖期はそのような種同士でも争うこともあるため注意したい。

 他の魚種との混泳は問題ないことが多いが、ハタやウツボ、バスレットの仲間の大型種はテンジクダイの仲間を捕食するおそれもある。大型種は逆に、小型のハゼやカエルウオの仲間を捕食してしまうおそれもある。小型種であってもシボリの仲間などは細身の魚を襲って食べてしまうのでやめたほうがよい。ネオンテンジクダイのような極端な小型種はベニハゼやイソハゼ、小型カエルウオなどのおとなしい小型種と組み合わせるようにしたい。

 テンジクダイの仲間を複数種、あるいは他の魚と飼育するときは、ライブロックを組み合わせて洞窟のような隠れ家を作るのもよい。

マウスブリーダー

テンジクダイは口腔内で卵を保護するものが多い。派手なマンジュウイシモチも口腔内で卵を保護する。

 海水魚の繁殖様式では親が卵を保護するものがいるが、これは浮遊性の卵を産みっぱなしにするチョウチョウウオやキンチャクダイ、ベラなどの魚に比べて生存率を高めるための工夫といえる。

 海水魚の卵の保護の方法としては、スズメダイ科やモンガラカワハギ科の魚のように岩に付着した卵を保護するもの、コモリウオ科やヨウジウオのように雄の体に卵を付着させたり、雄の育児のうの中で孵化するまで保護するもの、マハゼのように砂中に巣を作りその中で卵を保護するもの、ハマギギの仲間やアゴアマダイ科の魚のように雄の口腔内で卵を保護する繁殖様式をとるものがいるが、テンジクダイの仲間も同様にマウスブルーダーで口腔内で卵や、孵化したばかりの仔魚を保育する習性でよく知られている。

 卵は雄のみが卵の保護を行うもの、雌雄ともに口腔内保育を行うものがいる。成魚は産卵期に鰓耙にある小さな棘の上に膜を生じ、鰓耙の棘で卵を傷つけない工夫をする種や、雄は下顎の峡部が膨らみ、雌雄の区別がつく種類もいる。ただし科の和名になっているテンジクダイは雌でも下顎の峡部が膨らむことがあるようだ。

 プテラポゴン・カウデルニーは孵化した子魚が大きく、稚魚はすぐにブラインシュリンプなどを食べるようになるという。それ以外のテンジクダイ類の子は小さく、家庭の水槽では孵化させることはできても、その後育てることは難しい。

 卵を口腔内で保育している親魚は絶食するが、まれに口腔内で保護している卵を食べてしまうことがある。絶食中に雄の調子が悪くなると卵を食べてしまうことがあるらしい。飼育下でも卵を食べてしまうことがあり、口内保育を行っていることを確認したら雄から卵を取るのがよいかもしれない。あるいは卵を産む前に栄養価が高い配合飼料や生の餌を与えるのもよいだろう。ぜひ家庭の水槽でもテンジクダイの仲間の繁殖にチャレンジしてほしい。

スジイシモチ属のコスジイシモチ。卵は10日間ほど雄の口腔内で保護され、親はその間餌を捕食しない。

テンジクダイカタログ

 テンジクダイの仲間はおよそ350種と非常に多くの種が知られ、残念ながらその全ての魚種を紹介することはできないが、日本の観賞魚店で比較的よく見られる種類を中心に紹介したい。透明なもの、派手な色彩のものなど豊富なキャラクターが揃っている。

プテラポゴンカウデルニー/
インドネシアのバンガイ諸島に生息する一属一種のテンジクダイ。黒い帯と白い斑点が特徴的。親は口腔内で卵や稚魚を保護するが、他の種より卵が大きいため孵化した稚魚も大きくブラインシュリンプも捕食できる。温和な種類のため強い魚との混泳は避けたい。

マンジュウイシモチ/
全長8cmほど。形や色彩がおもしろいため古くから観賞魚として飼育されてきた種。温和で複数飼育も可能、かなり丈夫で飼いやすい。内湾の枝サンゴの合間にすむ。この属には2種おり、もう1種ホソスジマンジュウイシモチは内湾やマングローブ域に見られる。

ネオンテンジクダイ/
体が透明で尾部に赤色斑がある小型種。このような透明な体のものはスレに非常に弱く、水から上げただけで弱ってしまうこともあるため扱いには十分注意したい。大型魚との飼育は厳禁だ。全長3cmほど。スジイシモチ属の他種とは別の亜属に含められる。

イトヒキテンジクダイ/
透明感のある体が美しいテンジクダイ。和名に「イトヒキ」とあるように第1背鰭棘が長く伸びるのが特徴。温和な性格で複数飼育も可能。琉球列島以南の浅いサンゴ礁に生息する。飼育しやすいがスレに注意が必要。全長7cmほどになる。

マルゲリータカージナルフィッシュ/
体側のオレンジ色の縦縞模様と、はしごのような模様が目立つテンジクダイ。日本では見られないがフィリピンでは浅いサンゴ礁域でごく普通に見られる。スレ傷や白点病の注意が必要だが基本的には丈夫で飼育しやすい魚である。全長8cmほど。

スカシテンジクダイ/
透明な体をしたテンジクダイの仲間。ネオンテンジクダイと同様にデリケートな種類なので扱いには注意が必要。自然界では群れをつくるので、水槽でも複数で飼育するようにしたい。もちろん気が強い魚との混泳は避ける。

シールズカージナルフィッシュ/
体側に2本の縦線があるのが特徴。全長10cm近くになり、大きな個体は性格はやや強め。西太平洋にいるが日本では未記録。写真は幼魚で、成長するとクリーム色になり、体の透明感が弱くなるが鰓蓋に橙色の横帯が入り美しい。丈夫で飼育しやすい種。

カメラ:佐々木浩之 Hiroyuki Sasaki
テキスト:鶴田賢二 Kenji Tsuruta、椎名雅人 Masato Shiina
媒体:CORAL FREAKS 26

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