2018.11.15

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

EUROPEAN BUG-IN 6

2007年にベルギーの片田舎Chimayを南カリフォルニアのオレンジカウンティにしてしまおう開催された「ヨーロピアンBug-In」。Chimayインターナショナル・レースウェイにはBug-In時代のオリジナルレースカーやインスパイアを受けたGasserが数多く集まった。我らが日本からは、FLAT4がコレクションするインチ・ピンチャーIIIが再びChimayを興奮の渦に巻き込み、イベントが開催された3日間は、まさにオレンジカウンティのような雰囲気に包まれたのだ。

 ドラッグレース、カーショー、スラロームカーレース、ビキニコンテスト、スワップミートなど……。かつて「オレンジカウンティ・インターナショナル・レースウェイ(OCIR)」で開催されていた「Bug-In」。ここからキャルルックカルチャーが生まれ、VWドラッグレース、ハイパフォーマンスカルチャーが生まれたといって過言でない。まさにBug-Inのようなイベントを、いつかはヨーロッパで開催してみたい……。

 そんな願いから始められた「ヨーロピアンBug-In(以下EBI)」も2007年に記念すべき第1回が開催されて以来、取材した2015年で6回目を迎えることになった。6月26〜28日の3日間、ベルギー南部に位置する「シメイ・インターナショナル・レースウェイ」は、かつてのOCIRに様変わりしたのだ!

 EBIの大きな見どころといえば、何といってもノスタルジック・ドラッグレースだ。OCIRで開催されたBug-In時代のオリジナルまたはレプリカレースカー、そしてノスタルジックにインスパイアを受けたレースカーが大集結。さらにアメリカからはBug-In世代の伝説の人物たちがChimayに駆けつけた。

 キャルルック創世記の伝説の人物でDKP創設メンバーのRon Fleming、EconomotorsそしてEMPI創設者Joe Vittoneの息子でThe Raceshop創設者のDarrell Vittone、そしてThe Head Shop創設者のLonnie Reed、RevmasterのJoe Horvath、Schley Bros.のPaul Schley。その蒼々たるメンバーが一堂に会することは本場カリフォルニアでもなかなかない。そしてもちろんMCはDyno Donだ。現在ではDynoはアメリカでのVWイベントでのMCは退いており、彼のボイスを聞くにはChimayへ行くしかないのだ。

 今回はヴィンテージレースカーのほとんどを所有していたGasser Garageが撤退するなど不安要素もあったが、フタを開けてみれば大盛況のEBIであったのだ。やはりその様を目の当たりにすると、まるでOCIRへタイムスリップしたかの錯覚に陥ってしまうのだった。

EBIはまさにVWパーティの3日間

EBI6で一番のハイライトとなったのが、我らがニッポンFLAT4から持ち込まれたインチ・ピンチャーIIIとOtto Brothersのモスキートのバトルだ! 2015年のEBIは天候にも恵まれトラックコンディションもグッド。派手なウィリーを披露するレースカーも多く、レーストラックは大いに盛り上がったのだ。

 ヨーロッパスタイルのVWイベントはとにかくスケールがビッグ。開催日は日曜日だけではなく、週末を丸々楽しんでしまおうというスタイルが一般的。金曜日になるとヨーロッパ中の至る所から人々が集まりだし、多くの人は会場内のキャンプエリアで優雅にキャンピングしながらEBIを楽しむのだ。

 会場にはDJが入るクラブエリアまであり、特に土曜日は朝から深夜まで休む暇もないほどさまざまな催しが企画されており、想う存分VWパーティを楽しむ。EBI開催中はカーショーエリアはもちろんだが、キャンプエリアも合わせると2,000台以上のVWが集まった。そこはまさにワンダーランドと化すのである。

Otto Brothersのグラスホッパーは派手なWheels Upデモンストレーションを披露。会場のギャラリーは大喜び。さらにDarrell Vittoneがグラスホッパーで全く衰えを魅せない現役バリバリの走りを魅せてくれた。この時の会場の一体感はやっぱりEBIならではなものだ。

オランダから来たHot Rod Dragrace teamは、Chimayのトラックでなんと9.39ET、147mphをたたき出した。

EBI6の大きな目玉になったのがオリジナルEMPIのショールームを再現した「EMPI EXPO」。オリジナルのGTV、Small Wonder、IMPバギーを展示し、さらにオリジナルのEMPIパーツディスプレイが行われた。Darrell Vittoneもあまりに凄い数の展示に感動。

LOVE BUG RACCOLTA

 現在でも世界中に熱狂的なコレクターがいて、最近は凄い値段で取引されている乾電池で動くモデルカー「EMPI LOVE BUG」。正式名称は「LOVE BUG Non-Fall Mystery Bump'n Go」。

 フロントフロア先端に棒状のセンサーが付いていて、ここが壁に触れたり机の端で反応したりすると、進行方向を変え机から落ちないミステリーアクションで動き続けるというギミックのティントーイで、日本のタイヨーから1969年に世界へ向け発売された。このタイヨーという会社、かつてはラジコンなどをメインとしたおもちゃメーカーで、その後セガの子会社となっていたが、2010年に自身と親会社の経営不振で残念ながら解散してしまった。

 そのLOVE BUGをEBIで集めてワールドレコードを作ってしまおうと企画されたのが「LOVE BUG JAM」。なんとEBI当日には実車版を製作してしまったクレイジーなLOVE BUGマニアがイタリアからエントリー! なんと14台のEMPI LOVE BUG(うち1台は1/1スケールの実車)が集結。21世紀では恐らく最大規模のLOVE BUGミーティングとなり、EBI6のハイライトシーンになったのだ。

 この「LOVE BUG JAM」はAlessandro Dellunto、Raffaello Rubino、Laurent ”ElDub" Dubois、Franck ”Cal Look" Agnel、そしてここには残念ながらいないが、世界的なEMPIコレクターのFred Jolyが首謀して、21世紀最大のLOVE BUGミーティングが実現。上の1/1スケールはイタリアからEBIにやってきたRaffaelloが、あまりにLOVE BUGのことが好きで実車版を製作してしまったのだ。

 なんとフロントフードのクレストやステアリングホーンボタンまで、タイヨーエンブレムを製作する凝りようだ。ありがたいことにRaffaelloは、このEMPI LOVE BUGを生み出したタイヨーの出身である日本に対して大変なリスペクトを払っていただき、この日唯一日本からの取材班ということで、嬉しそうにこの実車版LOVE BUGを紹介してくれたのが印象的だった。弊誌『LET'S PLAY VWs』としてもそのフレンドシップとリスペクトを最大限このページでお返ししたいと思う。

リアル70sのテイスト満載の Ruby Sixty-Seven「1967 Type-1/113」

 「やっぱりロクナナは自分にとって特別な思い入れがある年式。ベースがどんなに酷い状態でも何とか復活させたいと思ってしまうんだ」

こう話してくれたのは、『LET'S PLAY VWs』46号でも登場してもらっているXavier Cros。パリから200㎞ほど西へドライブした小さな田舎町ボージュに住むVWフリークだ。彼は1970年代後半から80年代前半までにカリフォルニアで当時トレンドだったカスタム手法を用いて、ロクナナをレスキューして仕上げることに情熱を注いでいる。

 このロクナナも発見当初はそれは酷いコンディションだったそうで、リペイントが6回繰り返され、ボディの一部は腐って消失していたほど。でもXavierにっては状態が酷いほど手の掛けがいがあるということで、カスタム意欲も俄然強くなるのだとか。

 ということで、今回もまさに70年代からタイムスリップしてきたかのようなシビれるメニューでカスタムされたロクナナ。エクステリアは当時の法則通りモールディングはすべて排除され、クロームパーツはすべてボディ同色かブラックアウト。ベントウィンドウも廃止してワンピース化された。フロントフェンダーはホーングリルの箇所にLucasのターンシグナルをセット。

 これに、カリフォルニアのジャンクヤードで見つけてきたというリアル70sカスタムのデッキリッドが、このロクナナのキャラクターを定める決定打となった。ルーバーだけでも涙が出そうだが、ライセンスプレートフレームがグッと入り込むフレンチングカスタムが、70sを知るEBIのフリークたちを完全に虜にしてしまった。さらにサンダーバード・デュアルエキゾーストマフラーが奏でるサウンドはまさに我々を70sへのタイムスリップに誘う! Stilautoの14インチホイールもルビーレッドのボディとパーフェクトマッチを見せる。

 それにしてもこのリアリティは一体どこから来るのか? それはパーツのチョイスのセンスはもちろんだが、良い意味で力が抜けていることではないだろうか。ペイントやインテリアの仕上がりにトップクオリティを追求しすぎるがあまり、当時の雰囲気とはちょっとかけ離れてしまうのかもしれない。作業レベルもまるで当時の予算や技術レベルに合わせてカスタムされているから、まるでタイムスリップしてきたかのようなリアリティがあるのかもしれない。

スピーカーグリルは3連ゲージパネルに変更。SW製のアンプ、油圧、油温系がインストールされる。

エンジンは在り合わせの1,600ccデュアルポートで仕上げた。ファイアーウォールのルーバーパネルも忘れてはならない。シフターは当時もののDDS。サイドミラーは1970年代後半のノーブランドアフターマーケット汎用品を装着。

メキシコ、OCIR、そしてChimayを駆け抜けたPINK PANTHER

 それは1975年1月号の『dune buggies and Hot VWs』誌。メキシコから遠征してBug-Inにエントリーした1台のレースカーが紹介されていた。それはPink Pantherというニックネームのグラフィックがあてがわれていた美しいペイントのVW。40年後も今もここChimayで活躍する1台だ。

 奇しくもそれは40年前、あのCal Lookという定義がなされた号、Jim Holmesのタイプ1が表紙で警察官にヘッドライトの高さをチェックされているあの号の1か月前のHot VWs。オレンジカウンティ・インターナショナル・レースウェイ(OCIR)で開催されたBug-In13の特集が組まれていた号で、そこには1台のレースカーが取り上げられていた。

 それはメキシコはメキシコシティーのVWフリークがレースカーを製作してはるばるカリフォルニアのOCIRに遠征してBug-In13にエントリーしたというもので、その記事によると、当初はメキシコシティとオレンジカウンティの高度の違いでWeberキャブレターのセッティングに苦労したものの、ひとたび決まると自己ベストを更新するET11.34秒、トップスピード116.27mphという誇らしいレコードを残し、K/Gasserクラス優勝を飾ったというレコードが残っている。

 このPink Pantherのコクピットに収まったのはArmando Gomezで、レースカーの製作を担当したのはPancho Mendoza。ルーフ両サイドに2人の名前が現在でも誇らしげに残っている。エンジンはDarrell Vittone率いるリバーサイドのThe Race Shopで組まれた1,947cc、ボア89mmXストローク78.4mmにWeber 48IDA、Joe Huntのマグニートが備わっていた。

 ダッシュも含めたボディフロントセクションとフロアはカットされ、軽量なアルミパネルに置き換えられ、ボディフロントはファイバーグラス製のフロントカウルに変更されている。このPink Pantherの歴史は1971年まで遡る。メキシコでVWレースに参戦していたPanchoがカリフォルニア、リバーサイドのThe Race Shopを訪れ、EMPI VSTレースカー、インチ・ピンチャー1のボディ、そして名もないVWレースカーボディを(これが後にPink Pantherとなる)購入したのだ。

 当時を覚えるDarrell Vittoneによると、購入したVSRとボディシェルのすべてをトレーラーに載せきることが出来なかったPanchoは、インチ・ピンチャー1のボディを走行可能なVWのシャシーに載せ替え、自走でメキシコへ帰ったそうだ。この名もないボディシェルはチームクルーにBaby Hippoと名付けられるが、Pancho自身はこの名前をあまり気に入らず、クルーがチームを去った後にPink Pantherと再命名された。

 メキシコに戻ってPink Pantherを完成させたPanchoは、地元でのレースに参戦し、強さを発揮することになる。The Race ShopのDarrell Vittoneによって組まれたエンジンはメキシコでは他を寄せ付けなかった。1972年にはTar Babeでメキシコシティへ遠征にやってきたRon FlemingとMike Hunsakerと対戦することになるが、これをも打ち負かしてしまう。このあとTar Babeはメキシコで売却されることになった。Ron FlemingはメキシコでこのPink Pantherをドライブさせてもらい、親交を深めたのだそうだ。

 1974年、Panchoはメキシコのレースだけでは飽き足らず、OCIRで開催されるBug-In13のエントリーを決意する。なんとレースカーを空輸しての参戦だった。カリフォルニアではRon Flemingがショップスペースを提供し、その間当時数々のカリフォルニア出身のレースカーのレタリングを行っていたRichard McPeakによって美しいPink Pantherのレタリングが入れられた。Bug-In 13でPanchoはK/Gasserクラスで見事に優勝。この時のRunner UpはLee Leightonだった。

 その後メキシコに戻ったPink PantherはMemo Morenoというレーサーの元に引き継がれることになり、1988年まで活躍していた記録が残っている。Memoは1980年にメキシカン・ドラッグレーシング・チャンピオンに輝いた。1988年以降Pink Pantherは暫し眠りにつくことになる。その後10年以上ショップの片隅で鎮座していたPink Pantherは、2000年カリフォルニアのポモナスワップミートでFor Saleサインが掲げられていた。しかし誰も興味を示さず、翌年に再度ポモナで売却を試みるも結局買い手は現れず、Gene Bergのショップで預かってもらうことになる。

 2003年、ヨーロッパから訪れたDAS VW-Clubの一行がGene Bergのショップを訪れた。この時ショップの奥でGene Bergのロクナナブラックの隣で静かな余生を送っているPink Pantherを見つける。一人のメンバーが写真を撮ってドイツ在住のレーサーOle Endlerの元へメールを送った……。OleはClyde Bergと交渉してPink Pantherの購入を決めたのであった。

 「Pink Pantherがドイツに到着して間近で見たときは正直失望したよ。シリンダーがサビでクランクシャフトは回らないし、IDAのバタフライは固着して使い物にならない。なんてジャンクを買ってしまったんだとね。でもその時このPink Pantherに秘められたヒストリーは全く知らなかった。

 調べていくうちにいろいろな人物と繋がっていく。そしてここEBIでPink Pantherが当時関わった本人たちと再会することが出来た。次回はまだ健在なPanchoと再会が果たせないかと思っているんだ」

オリジナルBug-InとEBIの両方のレースを走った貴重なVW Gasser、Pink Pantherは現在でもレーストラックで11〜12秒台のETをコンスタントに叩き出す現役レースカーとして、ヨーロッパのイベントで活躍中だ。

Memo MorenoはCopa Bonanza, Autodromo Hermando Rodriguez, Toluca, Aeropuerto, Copa Challeyes, Campeonato Nacional Monterreyのレースに出場。ナショナルチャンピオンにも輝いている。

2007年EBI1で久々に表舞台に復活したPink Pantherは、Ron Flemingが35年ぶりにドライブ、この時の相手はKeith SeumeがドライブするThe Race Shopカルマンギア。さらに2011年のEBI4ではメキシコで発見されレストアされたTar BabeとここChimayで奇跡の再会を果たす。こんな奇跡的な瞬間を間近にすることが出来るのがEBIの魅力なのだ。

Good Memories Chimay

2年ぶりに開催されたヨーロピアン・バグイン。その会場内には、空冷VWのネットワークをより広く開拓すべく6月から約1か月のヨーロッパ巡りをしていた「MY BOWS」高林氏の姿も。初のEBIをその肌でどう感じたのだろうか?

 VWカルチャーの本場、アメリカにはこれまで20回以上渡航し、すでに滞在期間は総計で1年を超える高林氏。しかし今や情報が瞬時に全世界へ広まり、空冷VWもグローバルに進化している時代である。アメリカだけを見ていればいい時代ではないと、今年は1か月にわたってヨーロッパ各地のVWイベントやVWディーラーを駆け巡ってきた。

 ドイツBad Cambergのイベントに参加してすぐ翌週、ベルギーのChimay(シメイ)で開催されたヨーロピアン・バグインにも金土日3日間、初にしてフル参加してきた。

 会場にはヨーロッパに限らず、アメリカやアジアなど世界中からVWフリークが集まって、インターナショナルな雰囲気が印象的だったという。参加者みんな、ここぞとばかりに羽目を外して楽しんでいて、キャンプする人も沢山いれば、夜通し踊れるブースもあって、すっかりお祭りムード!

 「話に聞いていたよりずっと規模が大きくて、特にカーショーとスワップミートは盛り上がり方もすごかった! VWパーツはまだまだ手に入るって実感できたよ。価格は高騰しすぎだったけどね」

と高林氏。アメリカなど世界各地の友人たちとも再会でき、また、動き出した新たなビジネスも多かった様子だ。今後の「MY BOWS」の展開にも注目したい。

スワップミートには、無いパーツは無いのではと思えるほどのVWパーツが売りに出されていた。

オフロード・ドライブのコーナーではたっぷりと泥まみれに!

カーショーやスワップミートの規模やクオリティは想像以上!

カメラ:Shin WATANABE 渡辺慎介
テキスト:Shin WATANABE 渡辺慎介
媒体:LetsPlayVWs 48

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