2019.01.21

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

きっと真似したくなる、魅惑のカスタム「VW Custom Selection v...

Patina & Low Euro Bug「1959 Type-1/113」

 免許を取ってからこのかた空冷VW一筋。数え切れないほどのVWを所有してきたStacy Wetnightがまだ17歳で免許を取ったころ、祖父は1971年型のBugをドライブしていて、おまけに叔父はVWリペアショップを営んでいた。そんな環境で育ったStacyだから、VWのライフスタイルに引き込まれていったのはごく自然な成り行きだった。

 「どこかでずっと眠り続けていたVWをレスキューしては、再び動くようにして楽しんでるんだよ。だから特別なことは何もしていない。この1959年型も長いこと放置されていた1台で、何層にも塗り重ねられていたペイントを剥がして元色を出して、メカニカルをやり直して、内装もあり合わせ。エンジンも普通の1,200cc。車高落としてカッコイイホイールを履かせただけさ……」

こう話してくれたStacy。このスタイルに共感する人は、少なくないのではないだろうか。膨大な予算をつぎ込まなくても楽しみ方は無限大。素材が至ってシンプルで美味しいから、そんなに手の込んだことをしなくても充分美味しい。それがVWの大きな魅力でもあるのだ。長年眠り続けていたVWたちに再び生を与えて再び走らせてあげられることに、Stacyは大いなる喜びを感じている。

 それにしてもこのエクステリアの深い味わいは、ニューペイントでは絶対に実現することが出来ない。これはVWがファクトリーを出てから積み重ねてきたヒストリーそのもの。まさに熟成の極み。

 やっぱりシンプルな食材はシンプルに食すに限る。そんなことを再認識させられる1台。VWはオーナーの愛の注ぎ方次第でどんなスタイルにだって染めることが出来るのだ。

ステアリングはスタンダード用を装着。グローブボックス内にモダンオーディオも備えているので、フロントキックパネルにはスピーカーも装備。ドアパネルはオリジナルではないが相当の年代物。シートはツイードのあり合わせのマテリアルだが、どことなく最初期モデルの雰囲気も醸し出している。

エンジンは1,200cc。

スーパーチャージャーで+40%のパフォ−マンスを得たNarrow & Low Zwitter「1953 Type-1/11G」

 現在世界的な広がりを魅せているビンテージ・ハイパフォーマンスエンジン。純粋にパフォーマンスの面では、後年型のケースを使用してエンジン製作した方が遙かに簡単にエクストラパワーを得ることができるが、特に25馬力、36馬力エンジン世代のVWオーナーにとっては、やっぱり同年代のエンジンを搭載したい、でも特にカスタムを志す人にとってはノーマルエンジンではやっぱりパワーが足りない。そんなニーズに応えてここ数年25馬力、36馬力エンジン向けのパフォーマンスパーツが充実してきている。

 ウルフスブルグ・ウエストのオクラサキットがその筆頭であるが、それ以外にもストローカークランクやスーパーチャージャーも新品パーツとして選べることが可能なのだ。ここに登場願った美しいフォーメーションの1953年型Zwitterには36馬力エンジンベースにSpeedwell USAのスーパーチャージャーが装備された1台だ。Speedwell USAのスーパーチャージャーは、数ある当時もののVWスーパーチャージャーの中でも最もコンプレッションが高くパフォーマンスが高かったといわれるPepcoスーパーチャージャーのリプロダクト品で、ノーマル比40%ものパフォーマンスアップが実現するという。ルーツ式のスーパーチャージャーなので回転ロスも少なくレスポンスの良さが特徴だ。

 元々はスウェーデンへ向けられたこのZwitterは、驚異的ともいえるオリジナルインテリアを残す、非常に素晴らしいコンディションの個体である。なんとインテリアのペイントはオリジナルで、エクステリアに関してはL11パステルグリーンで完全なるマッチングが図られてリペイントされている。Zwitterの特徴であるスプリットウィンドウのモールディングなど、数々のディテーリングにもキッチリ配慮が行き届いている。

 一方でシャシー周りは、フロントには1-Styleのショックタワー付き8インチナロードビームがセットされ、リアはRideHeightの3インチドロッププレートをインストール。これにFuchsホイールを組み合わせ、フロントが135/70に対してリアが205/60のタイヤでフロントは目一杯内側、リアは外へ。絶妙なスタンスを実現している。

フロントビームは1-Styleのショックタワー付き8インチナロードビームがセットされ、リアはRideHeightの3インチドロッププレートをインストール。ホイールはフロントが4.5J 、リアが6Jを履く。

 1-Styleで組まれたSpeedwell USAのスーパーチャージャーキットは、エンジンを降ろすことなくボルトオンで装着でき、取付けに必要なハードウェア類も全て含まれるので、幻のパフォーマンスパーツを手軽に実現できる。銅メッキの燃料パイプは、ファンシュラウドの背後に回して後方からキャブレターへとつなげる、芸術的な技。

完璧なまでのボディワークBlack Sixty Seven Convertible「1967 Type-1/153」

 ブラックアウトされたヘッドライトトリムリング。そこに納められるLEDのインディケーションライト。バンパーはUSからヨーロピアンに置き換えられ、ホーンリングも省かれた。そしてホイールはBBSを彷彿とさせるメッシュホイール。何となくジャーマンルックっぽい方向性も感じるが、でもやっぱりカリフォルニアの香りもする……。

 ここに紹介する1967年型タイプ1コンバーティブルはかつて、Headsup PerformanceのRoger Crawfordのプロジェクトとして進められていた1台で、それを現オーナーであるTom Urbaniakが引き継いでコンプリートとなった1台だ。TomはアメリカでのVW業界では隠れた存在でなかなか表舞台に出てこない人物だが、実はKuhl Tekブランドなどを展開するIAP Westの代表。

 このロクナナコンバチに搭載されるエンジンは、FATパフォーマンスで組まれた2,276cc。自社ブランドのKuhl Tekのクランクやコンロッド、カムシャフト、ヘッドなどで組まれ、パーツのクオリティをテストするためのデモカーとしても活用している。目指したのは大人のツーリングスポーツカー。それにしてもVWのカスタムでメッシュホイールをチョイスした例はあまりないが、VWのスタイルにもここまでマッチしてしまうとは正直いってかなり新鮮。空冷VWにはまだまだ様々な可能性があることを実感させてくれる1台だ。

インテリアは本革で、ポルシェ356スタイルにインスパイアを受けカスタム。ボディパネルとフロアにはDynamatが敷詰められてている。

 FATパフォーマンスで組まれたエンジンは2,276cc、ボアストローク 94X82mm、Kuhl Tekのクランク、コンロッド、SLRグラインドカムヘッド、ディストリビューターが使用されている。エキゾーストはA1サイドワインダーだ。

見た目はタイプ2 13Windowデラックスでも、インテリアとエクステリアはタイプ1「1966 Type-2/251」

 先に紹介したタイプ2クルーキャブの項でも述べたが、現在アメリカではVW他車種の純正カラーや、内装マテリアルなどをクロスオーバーさせて仕上げるカスタムがトレンドとなってきている。今年も何台かこの手法で仕上げられたショーカーがデビューしており、これから日本でも注目していきたいカスタム手法になるかもしれない。

 ここに紹介する1966年型タイプ2 13ウィンドウデラックス。本来は設定がないブラウンカラーであるが、デラックスモールディングとレッドのパイピングとの組み合わせも素晴らしく、なぜかシックリときてしまう。それもそのはず、エクステリアペイントはタイプ1用カラーであるテキサスブラウン(L 271)なのである。

 さらに見る者の度肝を抜くのがインテリアで、シートとドアパネルのマテリアルにはスプリットウィンドウ世代のタイプ1用のファブリックでコーディネイトされているのだ。そう、このタイプ2もまさにタイプ1のエッセンスをクロスオーバーさせて仕上げられている1台なのだ。Octavio's Upholsteryで仕立て上げられたシートとドアパネルのクオリティは、頬ずりしたくなるほどの素晴らしさで、タイプ2のインテリアの雰囲気を一変させてしまった。

 使用するインテリア生地の量はタイプ1の比ではなく、他人事ながらいくら掛かったんだろう? とついつい貧乏性が出てしまう。でも実際タイプ2アーリーモデルにファブリックの設定がなかったのは、実はコストの問題だったのではないかと考えさせられる。ここ数年間、カスタムの世界でも純正マテリアルが重宝されてきたが、そろそろ何か新しいアイディアを求めている人たちが増えてきているのかもしれない。

 オーナーのShane Ferreiraはこれまでタイプ1を乗り継いできたが、このタイプ2は自身にとって初めてのタイプ2。結婚して家族が増えることを見越してスイッチしたのだそうだ。このバスがまだプロジェクトの段階だった頃に家を購入したり子供が出来たり、ライフスタイルが劇的に変わりながらもコツコツと大事に5年の歳月を掛けて仕上げてきたそうだ。

 今、Shaneはすでに新しいプロジェクトを開始している。次は一体どんな新しいアイディアが生まれてくるのだろうか。

 Octavioで仕上げられたインテリアはため息が出るほどのクオリティ。マテリアルは1950年のスプリットウィンドウ用Bedford Cordファブリックで、ドイツから取り寄せた。ドアパネルにも同じマテリアルが使用され、タイプ2のインテリアを全く違うレベルのものへと変えてしまった。そのほかはオリジナルに忠実に再現されている。現車にはKeift en Klok製のエアバッグキットも搭載されており、ロードコンディションによって車高を調整することが出来る。サファリウィンドウはWolfgang製。AAAのビンテージコンパスも備わる。

 エンジンは1,994ccのストローカーBernie Bergmanエンジン。キャブレターはカドロン。ファンシュラウドなどはパウダーコートされ、プラグワイヤーなどのディテールにも拘る。

レン・ケーファーカップに挑むトラディショナルCal Look「1955 Type-1/113」

 2015年はドラッグデイやBug-InでのVWドラッグレースを運営するPeriscope Racing Association(PRA)のシリーズで、かつて行われていたシリーズ、Der Renn-Kafer Cup(レン・ケーファーカップ)が復活した。レン・ケーファーカップとは、ただ1/4マイルの速さを争うだけではなく、参加することができるのはショーカーのクオリティを持ち合わせていること、さらにストリートリーガル、つまり公道を走るために登録されていて、保険にも加入していること、13秒台で1/4マイルを走ることができること、そしてエンジンはノーマルアスピレーションで過給器は不可。つまりはトラディショナルなキャルルックカーでドラッグレースとカーショーの両方を争うシリーズなのだ。このシリーズが復活し、再び速さと美しさを兼ね備えるキャルルックが増えるのではないかと期待されている。

 ここに紹介する1955年型オーバルは、この久々に復活したレン・ケーファーカップにも挑むトラディショナル・キャルルックで、2014年のDKPクラブチョイスアワードにも輝いている1台だ。オーナーのEric Justusは幼少期から父親に連れられ、Bug-Inなどの南カリフォルニアのVWイベントを巡りながら育ってきた。Ericはごく自然な成り行きで免許を取ったらVWをドライブすることになった。

 タイプ2にも使用されているVW純正カラーのマンゴー・グリーン(L346)をベースに、若干濃いめにミックスして仕上げられた完璧なボディワークにJGEのTorkerホイールが素晴らしいマッチングを魅せる。インテリアはドアパネル、カーペット、ヘッドライナーに至るまでWest Coast Classic でジャーマンファブリックでオリジナルを忠実に再現。そこになんとRLRのロールケージとKirkeyのアルミフレームレースシートをぶち込んでしまったのだ! その雰囲気はまるでビンテージとレースカーコクピットの見事な融合! Ericのマンゴーグリーンオーバルの強烈なキャラクターを印象づけてくれたのだった。Ericのオーバルのその雄姿は、次回ドラッグデイでもチェックできるぞ。

 美しくディテーリングが行き届くインテリアはドアパネル、カーペット、ヘッドライナーをWest Coast Classic Restorationsで仕上げ、RLRロールケージとKirkeyのアルミフレームシートをセット。シートフレームはブラックでパウダーコートされている。

ラゲッジコンパートメントのディテールも完璧。ガソリンタンクのブリーザーパイプもワンオフの、芸術的な仕上がり。

日本で生まれた本格的なBaja Racer「1976 Type-1/114 Baja」

 「あのジャンプとかできちゃうバハバグだっけ? あれかっこいいよね!」

 クルマには興味が無い知人が珍しくこう話してくれた。そんな彼に対して僕は、ボディをオフロード風に改造はしてるけど、そんなことができるバハバグは日本には存在しないと偉そうに語った。「なぁんだ」、残念そうなつぶやきののち会話はあっけなく終了。"本格的なBaja Bugは日本に存在しない"。この時、僕は本気でそう思っていた。

 栃木県のオフロード専用コース、初夏の強い日差しの中、大排気量オフロードレーサー達に混じり、1台の空冷VWがコーナーをクイックに曲がり、バンプの続く路面を時にはジャンプしながら、しなやかに走っている。驚くような加速こそ見られないものの、速度を落とさず粉塵を巻き上げながら淡々と走り続け、数台のオフロードレーサーを見事にパスしていった。

 Baja Bug。本来はそのネーミングにもあるように世界で最も盛大で過酷なデザートレース、SCORE Baja 1000を走るようなビートルを総称してそう呼ぶ。その呼称に恥じない驚くべきパフォーマンスを見せてくれたこのBaja Bug、つい特徴的なボディに目がいきがちだが、こだわりが注がれているのはその内側にあった。見たことも無いような長いダンパーやガセットで補強された足回り、隅々から本物感が伝わって来る。

 このBaja Bugオーナーの相田氏は、カリフォルニアスタイルのオフロードレースに触れたことがきっかけで、本格的なBaja Bugの製作を決意したという。作るなら本格的に走れるものを、そしてしっかりとした定義に基づいていないとカッコわるいとBaja 1000のレギュレーションまでリサーチし、空冷VW専用のクラス、中でも最も伝統あるClass 5-1600というクラスレギュレーションに基づき製作された。

 日本では前例の無いこのプラン実現のパートナーは、『ガレージタイプ ワン』。ハードなモディファイの経験も豊富な老舗空冷VW専門ショップだ。レギュレーションや装備品のチョイスは相田氏が担当し、加工・組付は『ガレージタイプワン』。本格的なBaja Racerに必要とされる条件は、大きなバンプをいなしながら走り抜けるための、長いサスペンションストロークと激しい路面からの入力に耐えうる強度、そしてトラブル無く走り続けるためのシンプルなレイアウト。

 そのセオリーとClass 5-1600のレギュレーションに基づき、足回りには、大幅なロングストローク化としっかりとした補強がなされている。この足回りの恩恵は実際に日本で20m近くもの距離をジャンプした際にも実感できたという。

 こうして完成したこのBaja、驚くことにダートレース以外に各地で行われるカーショーやミーティングにも、自走で参加している。本場の本物にならって製作されたこの泥だらけのBaja、この栃木の山中で目の前にすると、なぜだかキャルルックよりもカリフォルニアらしいVWに見えてくる。ダートを軽快に飛び跳ね、大物達に後塵を浴びせる本格Baja Racerが日本にもいる。かつて偉そうに語った自分が間違いだったことを、早くあの知人にも知らせなければ。

電装のトラブルを避けるため、イグニッションスイッチはボタン式とし、タコと燃料系のみヒューズもダッシュにマウントされる。

 ヘッドライトはBAJA DESIGNS。11inストローク、キングピン用トーションビーム。FOXのエマルジョン2.0in径のショック。アームはWOODS製、スピンドルもWOODS製で1度のキャンバーがつき、リンクピンは7/8インチ。ブレーキはJAMAR製、SACO製のラック&ピニオンにアルミ製のステアリングロッド。

カメラ:Shin WATANABE 渡辺慎介 、Kunihisa KOBAYASHI 小林邦寿
テキスト:Shin WATANABE 渡辺慎介、Koichi ENDO 遠藤幸一
媒体:LetsPlayVWs 48

NEWS of IN THE LIFE

ARCHIVES

RANKING

POPULAR TAG

NEWS

SEARCH