2018.12.21

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ビンテージ・パフォーマンスエンジンを創る「making the volkswag...

 キャブレターはもちろん補機類を外し、ファンシュラウド、マニフォールド、ティン類も外し、ほぼロングブロックに近い状態でエンジンをインストールするため大変時間の掛かる作業となる。エンジンを降ろし、引き続きトランスミッションを降ろす作業に入るが、スイングアクスル車のトランスミッションはアクスルシャフトごと降ろさなくてはならない。降ろされたミッションはそのままRanchoパフォーマンスへ持ち込まれた。早速ディスアッセンブリーを開始していく。

 Roger Crawford率いる「Heads-Up Perfor-mance」で行われたベンチテストで、70馬力という大変満足いく結果が得られたビンテージ・パフォーマンス36馬力エンジン。いよいよエンジンを車両に搭載するときがやって来た。エンジン搭載はシングルキャブレター車のノーマルエンジンのように簡単には行かず、クリアランスの問題でファンシュラウド、インテークマニフォールドを取り外した状態でエンジン搭載を行い、その後に取り外したパーツを装着していかなくてはならない。

 約半日を掛けてエンジン搭載が完了し、いよいよテストドライブの時がやってきた。しかし思いもよらぬトラブルを発生することになった。それはエンジン搭載後100kmも走行していない状況で、いつもより少しエンジンを引っ張った際に、突如3速のギアが抜けなくなってしまったのだ。その後、何とかニュートラルにするも、以降はまともなシフティングもままならない症状が発生。まるでシフトカプラーが破損したかのような症状となったが、カプラー自体には異常なし。

 結論からいうと、3速のギアとシンクロハブが大幅にパワーアップしたトルクに耐えられず外れてしまい、動力が3速ギアから完全に解放できなくなってしまい(つまりシフターをニュートラルにしても3速に若干つながった状態)、この状態では当然ほかのギアにシフトすることがほぼ不可能となってしまったのだ。ストックのトランスミッションの3速と4速はハブリングとギアが圧入されているだけなので、想定外のパワーが掛かると外れてしまうのだ。

 特にドラッグレースや高出力のパフォーマンスエンジンを搭載するカスタムの世界では、パワーアップに際してこの3速と4速ギアのシンクロハブを溶接して高出力に対応させるのが一般的であるが、まさか70馬力程度のパワーで同様の症状が発生するとは全くの想定外であった。これまでのノーマルのオクラサ、つまり60馬力未満のエンジンではこのようなトランスミッショントラブルはあまり聞いたことがないので、低年式の縦割れミッションでパフォーマンスアップを検討している方はこの60馬力がトランスミッション強化のボーダーラインとして考えていたほうが良さそうである。

 ということでせっかく搭載されたエンジンを再び降ろし、今度はリアアクスルごとトランスミッションもすべて降ろさなくてはならない。降ろされたトランスミッションはそのまま「Rancho Performance Transaxle」に持ち込まれリビルトを行うことになった。縦割れのトランスミッションケースを開け、各ギアをばらしてみるとやはり当初の予想通り3速ギアに異常が発見された。クラッチギアには3速ギアから外れてしまったシンクロハブとの接触痕が付いており、ハブと3速ギアも外れてしまっている。

 4速ギアには問題は発見されなかったが、当然同様の問題が活性する可能性が高い。この問題を解決する方法はドラッグレースや高出力エンジン搭載車の世界ではごく一般的な、ギアとシンクロハブと溶接して一体化させるもので、1973年型以降のトランスミッションは純正でも溶接されたものが使用されるようになった。

 今回で最終回となるビンテージ・ハイパフォーマンス企画は、トランスミッションのリビルトに伴い少々のアップグレードも行った。その課程をじっくりとご覧いただきたい。

 ケースが割られたトランスミッション。矢印部分がメインドライブシャフト側の1〜4速ギア。1、2速はシャフトと一体構造。1速のみノンシンクロで、2〜4速は常にギアが噛み合うシンクロメッシュとなっている。

デフボールベアリングとトランスミッションケースの組み付けは非常にタイトなため、ケースを加熱してからベアリング部分をセットしていく。

ハウジングにはドライブピニオンギアもインストール。各ギアの組み付けにはマニュアルで0.001ミリ単位の組み付け精度が要求される。

トランスミッション自体は2年ほど前にリビルトを行っているので、各パーツ再利用に全く問題ないコンディションだ。

メインドライブシャフトもドライブピニオンとのギアの当たりもチェック。メインドライブシャフト側に必要に応じたシムをあてる。さらにギアチェンジを行うセレクターの動きもスムーズにシフティング出来るか、再確認。

すべてのアッセンブリーが完了した縦割れトランスミッション。縦割れといわれる所以は、写真の通りケースが縦方向に真っ二つに分かれるからで、高年式のトランスミッションケースはディファレンシャル部分が大きく開口した一体型となる。

リアアクスルチューブ、アクスルブーツベアリングハウジング、ブレーキをインストールし、ついにトランスミッションのリビルトが完了。

今回トランスミッションのリビルト作業を行ってくれたのが「Rancho Performance Transaxle」のShan CarenwelgeとMike Herbert。Shanはポルシェ356や縦割れトランスミッションなどのアーリーモデルのミッションを幅広く手がけている。

 ということで、今回最終回を迎えることになった36馬力ビンテージ・ハイパフォーマンス企画。トランスミッションのリビルトが完了した2月以降からはまったくのノントラブルで、原稿執筆時点までほぼ毎日ドライブしながら2,000マイルをすでに走破した。36馬力ビンテージ・ハイパフォーマンスエンジンでドライブした印象は低回転からトルクフルでとにかく乗り易い。

 Weber 40IDFキャブレターも全く気むずかしいところを見せず、チューニングエンジンをドライブしていることを全く意識させないドライバビリティを実現している。パワーでは1,600ccデュアルポートのノーマルエンジンをしのぎ、それでいてWeber IDFツインキャブのパフォーマンスエンジンならではの吹き上がりもみせる。にもかかわらず36馬力エンジン独特のなめらかなフィーリングも残っており、本当に素晴らしいエンジンに仕上がった。

 今回極力誰でも手に入れることの出来るパーツのみを使用して組み上げた、ビンテージパフォーマンスエンジン。パーツのチョイスもより豊富になってきているので、是非とも皆さんもチャレンジしてほしい。

カメラ:Shin WATANABE 渡辺慎介
テキスト:Shin WATANABE 渡辺慎介
媒体:LetsPlayVWs 48

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