2018.12.21

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ラリー王国・ノルウェーで生まれたヴィンテージRennenスプリットウィンドウ

ラリーの本場・北欧はノルウェー オスロから自走でドイツにやってきたVegard Foseidの1952年型スプリットウィンドウ。ヴィンテージVWをベースにラリーカーに仕立てられた1台にはAbarthのツインキャブキットが収まる。

 土地柄なのか、ノルウェーをはじめとする北欧は今も昔もラリーの人気が高く、WRC(世界ラリー選手権)だけでなく、様々なカテゴリーのラリーイベントが開催されている。中にはヴィンテージラリーカーを対象にしたレースも開催され、かつての名ラリーカーも現役さながらの走りで活躍しているという。

 ノルウェーはオスロからドイツへ自走でやってきたVegard FoseidもPetermaxラリー主催メンバーの一人で、ヴィンテージVWラリーにどっぷりと填まっている一人だ。Vegardは1952年型をベースにエンジンとボディにモディファイを加えて、1950年から1964年までスウェーデンで開催されていたラリーイベント「Midnattssolsrallyt(MidNightSunRally)」にエントリーしていたVWをイメージして、このスプリットウィンドウを仕上げた。

 かつての「Midnattssolsrallyt」には、ボルボPV544やサーブ96などのスウェーデン車に混じり、ポルシェ356やVWビートルなどのドイツ勢も活躍。特にポルシェはメーカー自ら参戦。またVWも当時健闘しており、1956年にはビートルが優勝した記録も残っている。この「Midnattssolsrallyt」は、2006年に復活し、1985年型の車両までのラリーカーを対象としたヴィンテージラリーとして人気を呼んでいる。

 1952年型の現車は10年前にVegardの元に引き継がれてきた。内外装は1960年代にダークグリーンに再塗装されていたが、ノンレストアのボディ鈑金歴も無い状態がキープされており、インテリアに目を移せばシート、ドアパネル、そしてヘッドライナーはオリジナルが維持される素晴らしいコンディションだ。Vegardはこれにラリーカーのエッセンスを加えていく。バンパーレスのエクステリアはマーシャル製の大型ドライビングライトを装備、さらにルーフにはサーチライトも装着。フロントフードに備わるホワイトカラーのストーンチップ(石はね)カバーは、実は布や樹脂製のカバーではなく、別の車両からドナーされたフロントフードそのものをカットして装着している。

 リアセクションに目を移せば、エンジンリッドはVegardの友人でボディワーク職人によるハンドメイドのアルミ製ルーバーがリベット留めされ、サイドのエアスクープもアルミ製だ。さらに目を引く16インチのホイールは、Kelsey Hayesで、イギリス・フォード用に使用されていたもの。VW/ポルシェと同じパターンが採用されていたので、そのままボルトオンが可能な上、若干トレッドがワイドになるので、コーナリングでもメリットが得られるという。

 そして肝心のパワーソースだが、エンジンリッドを開けるとそこにはイタリアのチューニングブランドAbarthのツインキャブレターキットで武装された空冷4気筒ユニットが鎮座する。1950年代には、すでにさまざまなVWエンジンのチューニングキットがドイツを中心に存在したが、イタリアンブランドのAbarthも名を連ねていたのだ。Abarthといえば、主としてフィアットなどイタリアの小排気量車をベースにしたエンジン・チューンやレース車の製作を行ったチューニング/レースカーブランドだが、1950年代はVW用のチューニングキットも製作していた。Abarthは後にポルシェ356をベースにしたCarreraAbarthGTLを製作するなど、意外とジャーマン空冷4気筒との関係も深いのである。

 現在Vegardはこの1952年型スプリットウィンドウをほぼ毎日の足として使用しており、ヴィンテージラリーにも積極的に参加している。ノルウェーでは36馬力エンジンまでのVWを対象としたヴィンテージVWラリー「FlugplatzSchmutzRennen」も開催されているそうだ。ヴィンテージ・パフォーマンスで仕上げられたヴィンテージVWが、思い存分性能を発揮することができるうらやましい環境がスカンジナビアには整っているのである。

フロントウィンドシールドには曇りを除去するための電熱デフロスターが装備される。スイスのMoutier製。デフロスターに使用されるガラスにもSEKURITのロゴが入る。

オリジナルインテリアのカーペットには磨り減りやすい箇所にプロテクションのレザーを当てているが、ラリーカーの雰囲気を駆り立てるアクセントにもなっている。クロススティッチを入れるなど、そのセンスには恐れ入るばかりだ。

オリジナルのリアシートは全て取り払われ、カスタムでラゲッジトレイを製作。ラバーのマットはポルシェ用を使用している。マップや小物類を整頓し固定するストラップなどの小技も効いており、Vegardのセンスの良さが光る。

シートやドアパネル、ヘッドライナーなどオリジナル度の高いインテリアであるが、細かいディテールの技でオリジナリティを演出。ドアパネル下部にもプロテクト用のレザーをあてがい、これだけでも雰囲気ががらりと変わってしまう。

ホイールは1949年のイギリスフォードに採用されていたKelseyHayesの16インチ。タイヤはダンロップのバイアスプライ。

1953年型以降の36馬力エンジンをベースにAbarth製のインテークマニフォールドが備わるツインキャブレターキットを装備。キット自体は1951 〜52年に掛けて販売されたものだ。

text & photo:Shin WATANABE 渡辺慎介
媒体:LetsPlayVWs 49

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