2019.02.15

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

バーンファインドのD&Sは製造わずか3台、現存する最後のクーペ。

誌面に登場するのは、世界初。弊誌『LET'S PLAY VWs』の独占取材が実現した、「1954 Dannenhauer & Stauss(ダネンハウアー&スタウスクーペ)」。確認されている現存車両はわずかこの1台という、レア度でいえば史上最高峰のコーチビルドVW をご紹介する。

 シュツットガルトでGottfried Dannenhauer(ゴットフリード・ダネンハウアー)と、義理の息子であるKurt Stauss(カート・スタウス)の2人によって設立された「Dannenhauer & Stauss」(以下D&S)。ダネンハウアーはポルシェのボディの製作を担当していたコーチビルダー、ロイター社に籍を置き、VWビートルのプロトタイプ「VW38」のボディ製作にも携わったキャリアを持つボディワーク職人であった。

 ボディとシャシーを簡単に取り外すことができるビートルのプラットフォーム構造に、大いなる可能性を感じていたダネンハウアーは、自らデザインしたボディに換装したスポーツカーを製作。1951年に華々しくデビューを果たすことになる。D&Sの総生産台数は正確な記録は残っていないが、80~130台ほどといわれている。

 D&Sの流線型ボディは、ほとんどハンドメイドによって製作されている。微妙な曲線を描くフェンダーラインとボディは、木型をあてがいながらボディラインが叩き出されるという、非常に手の掛かる行程で製作された。1951~1957年の間に生産されたD&Sだが、生産開始当初からダネンハウアーを悩ませたのが、VWシャシーの調達であった。

 基本的にはシュツットガルドのVWディーラーでシャシーをパーツとして仕入れていたが、間に合わないときにはお隣のスイスや、ときには遙か遠くのスウェーデンからシャシーを仕入れることもあったという。この問題は、1955年になってVW社から直接シャシーの供給を受けることになり、ようやく解決した。現存しているD&Sはわずか20台ほどといわれており、VWベースのコーチビルドモデルとして非常にレアな存在である。

 現車は1954年にコーチビルドされた、極めて珍しいD&Sのクーペモデルだ。当時オーダーを受けたD&Sは殆どがカブリオレで、クーペが製作されたのはわずか3台のみという記録が残っており、現存が確認されているのはこの1台のみだ。

 この1954年型D&Sはドイツ、ヴィスバーデンのたばこディーラーの元にデリバリーされた。その後の詳細の経緯は不明であるが、前オーナーが1962年に、ドイツでこのD&Sクーペを450ドルで購入し、アメリカへ輸入する。オレゴン州に住んでいた前オーナーは、10年程日常の足として使用していたが、1973年に納屋の中にこのD&Sをしまい、以後全く動かされることなく38年間にわたって放置されていたらしい。

 2010年、このD&Sの処遇に困っていた前オーナーが現オーナー、Lloyd Keeの友人に相談を持ちかけることになる。そこに眠っていたのはなんと予想にもしていなかったD&Sのクーペであったのだ。

 発見当初、D&Sはホコリと牧草やガラクタに埋もれていたが、ボディの程度は思いのほか良く、また欠品パーツも殆どなかった。もちろん動力系、燃料系などは40年近くも放置された状態だったので、リビルトが必要であるのはいうまでもないが、エンジン、トランスミッションはどうにでもなる。

 しかし肝心のボディ、インテリアパーツに関しては、欠品パーツが見つかる可能性はゼロに等しいのだ。当初フルレストアを考えていたLloydであったが、あまりの程度の良さに加え、友人の強い勧めもあって、ボディはこのままの状態で維持していくことにしたのだ。

 こうして、このD&Sクーペはエクステリアは発見当初から何も手を加えず清掃のみ。インテリアはカーペットとリアシートのみリフレッシュ。それ以外は全て発見当初のままでクリーニングするだけにとどめた。

 一方メカニカル面では、エンジンは新車時に搭載されていたオリジナルと同じスペックのポルシェ1,500ccエンジンが組まれた。これに伴い、ブレーキも前後にポルシェ356用の大径アルミドラムを装備している。Lloydはできる限り現状の状態を維持していきたいと考えているようだ。

オーナーのLloyd Keeは、カードゲームやボードゲームの製作販売を手がけるサクセスビジネスマンで、ドイツのヴィンテージトレッフェンには欠かさず足を運ぶ、重度のVW信仰家。いつかは日本のVWイベントにも足を運びたいと考えている。

美しくディテーリングの行き届いた、1,500ccポルシェユニット。D&Sでは当時ストックのVWエンジンはもちろんだが、オクラサやデンゼルエンジンなどさまざまな空冷4気筒エンジンの選択が可能であった。

ダッシュにはVeigel製のタコメーターが備わる。速度計は一見ストックだが、ビートルには設定のない160㎞/hスケールだ。ダッシュ回りは同年代のビートル、つまりオーバル世代のダッシュの面影を感じることができる。

ホイールは16インチのポルシェ356用をチョイスした。ブレーキもポルシェ用のアルミドラムを前後に装備する。

オレゴン州の片田舎のバーン(納屋)で発見当初の姿。まさかD&Sが眠っているなど夢にも思わなかった。

text & photo:Shin WATANABE 渡辺慎介
媒体:LetsPlayVWs 49

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