2019.03.12

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

聖なる山をVWバスで登る。「Mt.Shasta Type II Adventur...

サクラメントのVWショップKombi HausのオーナーJustin Campbellのベルベットグリーンが川を渡る。

そこにある大自然があるからタイプ2たちは前へ進む

 カリフォルニア州北部のカスケード山脈に位置する、標高4,317mの高峰「マウント・シャスタ」。古来よりここは、アメリカ先住民の聖なる山とされ、山の名前はその部族のひとつであるシャスタ族に由来。山頂は氷河と万年雪に覆われる、マウント・シャスタへのルートは、オフロード車でも過酷を極める。そんなマウント・シャスタに、今年も30台のVWバスたちが聖なる挑戦を果たした。これはVWバスたちがマウント・シャスタに挑んだ、想像を絶するアドベンチャーである。

1961年型スタンダード・サンルーフ、通称「Rusty bus」が、北カリフォルニアのレッドウッドの森林を進む。

 弊誌『LET'S PLAY VWs』47号ではじめて紹介した「シャスタ・スノー・トリップ」は、アメリカ海兵隊に所属しているタイプ2乗り、BrianPiercyによって2000年に提唱された、北カリフォルニアのメンドシーノカウンティからシャスタ山まで、数々の山を越えるルートで、約400マイル(640km)もの行程を走破するアドベンチャー・トリップだ。

 参加は1967年型までのタイプ2を対象とし、その行程はほとんどが未舗装のオフロード。参加には冗談抜きで命のリスクも伴う。完全な自己責任で雪道や泥道、川を渡るような過酷な条件でのドライビングスキルも必要なのだ。参加するタイプ2は見た目はボロボロでも、サスペンションの強化、充分な予備ガソリン、スペアタイヤとパーツの確保、悪路を走破するための備え、防寒対策などのメンテナンスなどをしっかりと行いながら、アドベンチャーに挑む。

 2016年のシャスタトリップは、これまでにない大波乱の幕開けとなった。トリップ集合場所であるLetts Lakeへ向かっていたJoshua ConradとErik Davisのドライブするバスが、何と夜間のオフロード走行中に60メートル以上も山の急な斜面を滑落してしまったのだ。アクシデントを知った我々は、真っ暗なオフロードを走り、救助に向かう。最悪の事態が頭をよぎったが、我々は滑落したバスを発見。不幸中の幸い、滑落した車内にまだいた2人は、骨折するなどの大怪我を負っていたが、命に別状はなく生還を果たした。

 一方の滑落したバスは相当大きなダメージを受けてしまっていた。我々はトリップのスタートを1日遅らせ、翌日は崖下のバスの引き上げに丸1日を費やすことになった。各参加者達は重整備にも対応できる工具を装備していたので、我々は山の急斜面を慎重に降り、大きくダメージを受けたバスから外せるモノは全て外すことにした。エンジンやトランスミッション、サスペンション、タイヤやドアなど、できる限りバラバラのパーツの状態にして、ほぼドンガラになったボディは、ほかのバスが装備していたウィンチでなんとか引き上げることができた。我々はバスがどんな姿になっても決して森に残してきたりはしない。

 今回は、トリップをスタートしてもいない内にさまざまなことが起きた。集合場所へ向かっていた1グループ、Kevin KilfoylとRich Morrisのバスが途中オフロードで川を越えようとしたところ、深みにはまってしまい、不運にもエンジンストール。エンジン内に水が入り込んでしまい、そのままの状態で不動となり、不安な一夜を過ごすことになった。

 我々参加者は二手に分かれて、KevinとRichのレスキューにも向かった。しかし大自然の道なき道では時としてGPSを有していても道に迷ってしまうほど、ルートの選択は困難を極める。また山奥のオフロードでは携帯電話の電波もまったく頼りにならず、一度はぐれてしまうと、それは連絡手段が途絶えることを意味する。山岳のオフロードでの連絡手段はCB無線が必須装備だ。我々はKevinとRichの場所を突き止めるのに2日を要した。川でスタックした2人のBUSはなんとかレスキューし、エンジンの水抜きも済ませるが、結局リタイヤとなり、帰路につくことになった。

オレゴン州からシャスタ・トリップに挑み、川を渡るJoePorterのMango Bus。

すれ違いもできない1レーンの木組み路面の鉄橋をドライブするRustybus。バスから望む北カリフォルニアの大自然は、まさにアドベンチャー。シャスタ・スノー・トリップの醍醐味である。

 こうして2016年のシャスタ・スノー・トリップは、大アクシデントやスタート地点にすら辿り着くことの出来ない挑戦者もいるほど、過酷を極めたが、1日遅れでスタートすることになった。今年のルートは前年コンディションが非常に悪く、途中で断念したルートを再チャレンジすることになった。

 今回のルートは川を越える箇所が複数あり、相当な傾斜もクリアしていかなければならない、難易度の非常に高いルートだ。さらにルートを進めば進むほど道幅が相当狭い箇所もある。2016年、マウント・シャスタを取り巻く山々には雪も少なく、ロードコンディションは良好かに思えた。しかしこれまで毎年このトリップに挑んでいてコンディションが全く同じだったことは一度たりとも無い。

 毎年我々は大自然、気候条件と相談しながら、最後は自身の嗅覚を働かせルートを進んでいかなくてはならない。ただ結論から言うと、今年我々が選んだルートはタイプ2たちには過酷を極め、全ての参加車がクリアすることを叶わせてくれなかった。我々は時として、1日中様々な過酷なコンディションの道なき道をクリアして、あと一歩で目標ポイントに到着という所で、無情にも引き返す決断をとらなければならないこともある。

 そんな事態が今年は起きてしまったのだ。我々は1日走ったルートを戻り、前日のキャンプサイトで一夜を過ごすことになった。翌日はこれまで走ったことの無い新しいルートを見つけ、マウント・シャスタを目指すことにした。

 時として我々は目標地点に辿り着くことが叶わないこともある。でも我々はなぜにもこうして過酷な道に挑むのか? それは森を抜けたその向こうには聖なる山が待っているからだ。

山の急斜面で60メートル近く滑落してしまったJoshua Conradのバスをレスキューするため、トリップは一時中断。丸々1日を費やしてバスをできる限りバラバラに分解して、全てを引き上げた。バラされたパーツは人の手で、ボディはほかの車両に装備されるウィンチで、急斜面を引きずりながらリカバリーした。

400マイル以上に及ぶシャスタ・スノー・トリップのルート行程のほとんどは未舗装。一部舗装路もあるが、どちらかというとグラベルも多く、非常に厳しくタフなドライブが強いられる。

今回、新しいルートでマウント・シャスタを目指したが、偶然ホットスプリング(温泉)を発見。滑落したバスのレスキューなどで疲れた体を癒やすのに一役買ってくれた。気の知れた仲間達と裸で過ごす温泉でのひとときは、シャスタ・スノー・トリップを特別なものにしてくれた。

シャスタ・スノー・トリップの道中、レッドウッド・ステイト・パークにも立ち寄った筆者のRusty bus、ここでサンセット時に目の当たりにした光景は、今でも忘れることができないほど美しいものであった。これだからVWタイプ2での旅はやめることができないのだ。

text & photo:Richard KIMBROUGH
translation:Shin WATANABE 渡辺慎介
媒体:LetsPlayVWs 50

NEWS of IN THE LIFE

ARCHIVES

RANKING

POPULAR TAG

NEWS

SEARCH