2019.03.29

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

東京の街を駆け抜ける、極上で俊足なバーンドア「1954 Type-231」

真夏の夜の東京都心部。大通りをぼーっと走っていると、隣の車線からブルーのタイプ2が抜き去っていった。追いつこうとするも、車線を移りながらみるみる離れてゆく。去りゆく後ろ姿に、特徴的なエンジンリッドが目に入る。あの日出会ったのは、世界中のマニアが羨む初期モデルのタイプ2、通称バーンドアだった――。

 都内在住のサーファーでドクターの桐山智成氏、37歳。オーナーである彼が、あの日追いつけなかったバーンドアとともにやって来た。1954年型タイプ2コンビ、低めの車高とマットなドーブブルーにリペイントされてはいるが、よく見ると素性の良さそうなボディパネルとバーンドアならではの希少パーツたちが、良い状態でしっかりと備わっている。

 地味な外観とそれを裏切る走り、落差の大きなギャップの秘密は桐山氏の描いた明瞭なビジョンとそれを具現化した『K.M.Engineering』木﨑氏の持つ高い技術力にあった。そのビジョンとは、ストックの外観に地味なボディカラー、しかしそこに隠されたクルマとしての本質の部分はきっちりと鍛え上げられているまさしくスリーパー。

 ベースのモデルは、リブバンパーを備えた1958年以前の控えめなコンビが理想だった。そんなとき、アメリカのマニアが放出した一台のFOR SALE情報を耳にする。価格は相場以下、ボディも上々、それは58年以前どころか55年までのタイプ2初期モデルのバーンドア、何より高価なバーンドアならではのパーツ達がしっかりと備わっていたことからプロジェクトは突然スタートすることとなる。

 ベースとなった個体の状態の良さから外観に関してはほとんど手をつけず、木﨑氏のもとで走行性能の向上にのみ注力することとなる。オーナーが理想とする想定速度、使用頻度、使用環境を考慮し、必要なパワーとトランスミッション、サスペンション、ブレーキなど車体全体の相対的なバランスも考慮の上、設計していく。特にバーンドアならではの特殊な機構を持つサスペンションは、大幅に増大したパワーと速度設定に対応できるよう軸位置や構造、トランスミッションの微妙な搭載位置まで見直されている。

 その恩恵は絶大で空冷VW史上最も鈍足なはずの初期型のバスが、撮影場所への高速道路を含む移動の際、驚く程のペースで我々の先導をこなし、ジャンクションではこちらのステアリングを握る手に力が入るようなペースでコーナーをクリアしてゆく。到着した直後の安定したアイドリングや細かな撮影位置変更でのエンジン始動にも一切の不安は無い。

 製作期間は、わずか1年半、ヴィンテージイベントでも一目置かれるようなバーンドアは、オーナーの目論見通り、その姿からは想像も出来ないパフォーマンスを隠し持つスリーパーに仕上がった。桐山氏に今後手を入れたい箇所を聞いてみた。

 「特に無いです。趣味のサーフィンや遠方のイベントなどに出かけるのを楽しんでます。強いて言うなら素敵な当時モノのアクセサリーを見つけたら取り付けて気分を変えるくらいかな?」

 理想のゴールにたどり着いた桐山氏のTシャツからは、クレバーなマスクとは不釣合いな鍛え上げられた腕が覗いていた。

ファイナル3.875のハイギヤードなトランスミッションとタイプ1と比べ大きな車両重量に合わせエンジンはK.M. Engineering製。Specification:2180cc, 82mm VW Jurnal Crankshaft, Flat4 H beam Rods, Stock base Heads IN 40mm EX 37mm Valves, Mahle Piston Cylinder 92mm, Compression ratio 9.4:1, W110 Cam shaft, WEBER 44IDF.

ターンシグナルレバーは点灯式のSCANIA製。DELUXモデルと比べ質素なインテリアも非常にクリーンな状態。

BOSCH 製タイプ2専用のイエローカットレンズ。ライトリムはバーンドアオンリーで下部に水抜き穴を持ち、左右それぞれ専用品となる。

驚くことにシートもフロアのラバーマットもストックのまま、極上な状態で残されている。

大幅に巡行速度が上がったため、タイプ1スプリット用の120kmのスピードメーターに換装される。

カメラ:小林邦寿
テキスト:遠藤幸一
媒体:LetsPlayVWs 50

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