2019.03.28

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

making the volkswagen go! 「36hp チャレンジのター...

シャシーダイナモで265馬力、モハーヴェ・マイルのトライアルではトップスピード242.24km/h をマークし、"36hp チャレンジ最速"の称号を獲得したDarrell Vittone。そのパワーの源となるエンジンビルドを、あのDean Kirstenに解説してもらった。

 現在アメリカ、ユタ州のボンネビル・ソルトフラッツ、カリフォルニア州のモハーヴェ・マイルを中心に行われているヴィンテージ・フォルクスワーゲン・ランドスピードレコード「36hpチャレンジ」は、VWの25/36馬力エンジンケースを用いたパワーソースでトップスピードを計測するレースで、エンジンモディファイの制限で4つのクラスに分けられている。

 Darrell Vittoneが参戦するのはトップカテゴリーのNA(NEWAGE)36クラスであるが、レギュレーションで、シリンダーヘッドのスタッド位置変更は禁止され、ヘッドはストック、デンゼル、オクラサ(WWのリプロも可)の3択のみ(ポルシェのヘッドの使用は禁止されている)。さらにバルブカバーの形状も制限がある。ただそれ以外は基本的にモダンパーツを用いたエンジンチューニングも許されていて、ターボ使用もOKなのだ。

 2年前、Darrell VittoneはTechtonics TuningのCollin GyenesとInch Pincherのレプリカに25馬力エンジンをベースに排気量を1,800ccまで拡大したNAエンジンでボンネビルに参戦し、トップスピード185.6km/hを記録。さらに同じエンジンを用いて空力面で有利なカルマンギアに載せ替えモハーヴェ・マイルに挑み225.6km/hをマークした。そして迎えた2016年、DarrellとCollinは新しくターボエンジンを製作して再びスピードレコードに挑戦することになった。

 ベースとなったケースは1951年モデルの25馬力エンジンケースで、DarrellとCollinは、レースユースのような特殊な用途では後年のマグネシウムケースよりもアルミケースの方が強度と冷却の面で有利と考えている。25馬力ケースはオイルギャラリーなどを慎重に洗浄後、80mmのシリンダーをインストールするためにボアの拡大から行われた。

 前回はNAエンジンで1,800ccを得るために80mm以上にボア拡大を行ったが、スタッドの位置を変更できないことを考慮すると、今回は耐久性、信頼性の観点から80mmがベストと考えた。シリンダーはAAパフォーマンスからリリースされている36hp用80mmがチョイスされた。ヘッドスタッドは、Dee EngineeringとRacetechクロモリに変更している。クランクシャフトはポルシェ356用の74mmをベースにオフセットグラウンドを行いストロークを78mmまで得ることに成功。

 ロッドジャーナルは45mmに加工して、ホンダ用のペアリングの使用を可能にしている。HビームコンロッドはCP/Carrilloによってカスタムメイドされた45mmジャーナル&22mmリストピン。ピストンもCP/Carrilloによってトップが若干くぼんだ形状でリストピン回りも強化されたカスタムメイドを使用している。デッキハイトは1mmにセットされた。クランク、フライホイールは、ダイナミックバランスが行われ、アッセンブリーの準備が整えられている。

 リフター、カムシャフト回りはハイプロファイルのカムシャフトの使用を可能とするために、エンジンケースに大きなモディファイが加えられている。特にリフターは全くデザインの異なるポルシェ912用を使用するため、ノーマルのリフターホールはボアが拡大され、912用リフター用のブロンズブッシュがフィットされた。ポルシェスタイルのカムシャフトをフィットさせるためにフロントカムジャーナルは3mmほど削られている。

 カムはWebの86Aグラインドで、Advertisedデュレーションが290°、252°@.050"、Lobeセンターが108°、Lobeリフトが0.335”となっている。このカムシャフトは1.4:1レシオのハイロッカーアームの使用を想定しているが、今回のモハーヴェ・マイルではバルブスプリングの強度に不安が残ったため、ノーマルレシオのロッカーアームでトライアルに挑んだ。

 シリンダーヘッドはウルフスブルグ・ウエスト製のオクラサヘッドを使用しているが、ボアが80mmに拡大し、バルブシートも変更。バルブガイドは吸気がマンガン・シリコン・アルミ・ブロンズで、排気はキャストアイロンに変更。バルブはターボユースを想定し、吸気はステンレス、排気はインコネル(ニッケル超合金)製に変更された。ただし燃焼室はノーマルのままだ。圧縮比は8.3:1に設定されている。

 ヘッド本体は高回転でターボの高加給を想定し、大幅な強化が施されている。スタッドボルトの応力がかかる箇所の内部のフィンは取り除かれ、頑丈なアルミ製のチューブをTIG溶接し、スタッドボルトの応力をフィンだけでなく、追加したチューブで受け止めるようにモディファイが加えられた。

 今回ターボユニットのフィッティングは全てワンオフにより各部材が製作されている。インテークマニフォールドはSpeedwell USAのOKRASA manifolds toSolex40-P11、Weber、Dellortoをカットし、ターボチャージャーからの配管を接続するためのフランジとTIG溶接して、ワンオフのマニフォールドを製作。これがカスタムで製作されたパイプを介してターボチャージャーと接続される。ターボチャージャーはTurbonetics製のF1-62タービン、0.68ARSuperVeeT-4ボールベアリングを採用。2インチのチューブを介してインテークへ接続されている。ウェイストゲートはTurboneticsのEvolution35mmでターボ本体直下にフィット。

 一方、燃料供給にはキャブレターを選択。WeberDCOサイドドラフトで、42mmベンチュリに、何とバレルごとに異なるエマルジョンチューブ、ジェットを組み合わせて、最適なセッティングを得ている。完成したエンジンはカルマンギアに搭載され、シャシーダイナモで性能がチェックされた。265馬力(エンジン単体では323馬力)@6700rpm、206.4ft-lb(280.0Nm)という途方も無いパワーを手に入れたのである。

 こうしてDarrellとCollinは2016年4月にモハーヴェ空港に特設されたトラック、モハーヴェ・マイルでスピードトライアルに挑むことになった。1.5マイル(2.4km)の走行でトップスピードを計測、ここでDarrellがドライブするカルマンギアはトップスピードは151.4mph(242.24km/h)という驚異的なレコードをマーク。

 しかし実をいうと、このスピードは1マイル地点で計測されたもので、このあと2番シリンダーの燃焼室が溶解するトラブルで、あえなくシャットダウン。そのまま走り続けていれば、160mphも夢ではなかったのである。DarrellとCollinはすでに原因を突き止め、改善を行った上で、10月に開催されるモハーヴェで再チャレンジの予定だ。弊誌でも、引き続きDarrell Vittoneのチャレンジをお届けしていきたい。

The Race Shopは、父Joe VittoneがEMPIの権利を売却後、1972年に創業。空冷VWのハイパフォーマンスとドラッグレースに没頭する。軽量のフィアットボディにパワフルなVWエンジンを搭載し、NHRAで大暴れした。

2014年、Inch Pincherレプリカでボンネビルのソルトフラッツのスピードレコードに参戦。1,800cc近くまで排気量アップした25馬力エンジンで、116mph(185.6km/h)をマーク。

1951年モデル用のアルミエンジンケースはオイルギャラリーなどを慎重に洗浄、クラックなどが無いか確認した後、ボーリング加工でボアが80mmまで拡大された。ヘッドスタッドの位置を変更することができないので、80mmが耐久性を考慮すると限界と思われる。

リフターはポルシェ912用を使用するため、ノーマルのリフターホールのボアを拡大。912用リフター用のブロンズブッシュがインストールされている。

ウルフスブルグ・ウエスト製のオクラサリプロヘッドはCollinの手によってマイルドポーティングが行われた。そしてスタッドが通る箇所は、フィンを取り除き、肉厚のあるアルミチューブをTIG溶接で一体化し、4カ所、スタッドボルトの応力がフィンにかかることのないように加工した。

ダイナミックバランスによってクランク、フライホイールのバランスも組み上げる前にしっかりとチェック。

ボアが拡大されたが燃焼室はストック。バルブは吸気はステンレス、排気はインコネル(ニッケル超合金)製に変更されている。78mmストロークでもケース内の加工はほとんど必要なかった。

ターボチャージャーの回転力となる排気のラインモックアップ。Darrellは、エンジンリッドがキッチリと閉まり、大幅なカットはしたくなかったので、試行錯誤の末、この形状となった。

ターボ回りの配管も非常にコンパクトにまとまり、エンジンフードを完全に閉じることが可能。Speedwell USAのOKRASA manifolds to Solex 40-P11, Weber, Dellortoマニフォールドは、ターボチャージャーからの配管を接続するためのフランジとTIG溶接され、インダクションパイプと接続される。ヘッドカバーの赤いキャップは、エンジンインストール時にAccusumpと接続される。

text & photo:Dean KIRSTEN
媒体:LetsPlayVWs 50

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