2019.02.13

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ステッカーチューンじゃない、本気でオリジナルを追求したレプリカ。

'71〜74年、ヨーロッパ・ラリー選手権を駆け抜けたビートルがいた。ドイツのお隣、オーストリアのVWとポルシェの正規輸入代理店のレース部門が、スーパービートルをベースにラリーコンペティションを製作。参戦していたクラスで他を圧倒したのである。現車は、そんなビートルのラリーカーに見せられた一人が製作したレプリカだ。

 カナダはブリティッシュコロンビア州、バンクーバーアイランドの小さな街、ポート・アルバーニからGCVWSにやってきたDave Hord。少年の頃は親がVWに乗り、レースを見るのが大好きなカーマニアだった。普段はインディカーやF1をよく観ていた彼が、ある日偶然テレビで放映されていたワールド・ラリー・チャンピオンシップにカルチャーショックを受け、ラリーの世界に魅了されてしまう。いつかは自分でもラリーカーをドライブしたい。免許を取ったDaveはアウディで草ラリーレースに参戦するようになる。でもラリーの歴史を掘り下げていくうちにVWビートルのラリーカーに目がとまった。

 「Salzburg Ralley Beetle(ザルツブルグ・ラリー・ビートル)」と呼ばれるラリーカーは、オーストリアの正規VW &ポルシェインポーターがヨーロッパラリー選手権に参戦するため、1971〜74年にかけてスーパービートル(1302&1303)をベースに製作し、当時のヨーロッパ・ラリー・シリーズを席巻した伝説のビートル・ラリーカーだ。当時のVW代表、ハインリッヒ・ノルトホフは自社でモータースポーツのワークス参戦を許していない中、お隣の国のVW &ポルシェ正規インポーターのレース部門がビートルで参戦するラリーには、ヨーロッパ中で大きな注目が集まった。

 オリジナルのザルツブルグ・ラリー・ビートルは4年の間に11台が製作され、計15勝を飾る輝かしい戦績を残している。これらはヨーロッパでのVWブランドのイメージアップにも大きく貢献し、1970年代中盤に入ってモータースポーツ部門発足をVWに決断させるほど、影響力を与えたのである。

 ここに紹介する1台は、そんな伝説のザルツブルグ・ラリー・ビートルにインスパイアを受けたDaveが、細かいディテールに拘って自らの手で製作したレプリカである。1971年型の1302をベースに、車輌の裏側に気の遠くなるようなモディファイが隠されている。Daveはこのスーパービートルでラリーイベントに参戦するので、レギュレーションにも合致するように仕上げられているのがキモである。

 ディテールをよく見てみると、4連のドライビングライトはボッシュではなくPIAAだし、貼られるステッカーも当時の完全コピーではなく、実際に現在使用している関連ブランドのものでアレンジされている。それでも雰囲気は完全に当時のザルツブルグ・ラリー・ビートルの雰囲気なのだ。

 Daveはこのラリー・ビートルを完成させるために、なんと4台ものスーパービートルをドナーカーとして購入。それぞれから程度の良いジャーマンパーツを引き継いでいる。ボディパーツも純正のオリジナルに拘り、特にフェンダーをそろえるには3台のドナーが必要だった。シャシーは、ポルシェ901トランスミッションを搭載するために、マウント位置とシャシー構造をモディファイ。エンジン搭載位置をオフセットすることなく、901トランスミッションを実現している。

 ボディはラゲッジエリアのファイアーウォールをカットしてエンジンルームの拡大、トランスミッションへのアクセスドア追加、リアクオーターウィンドウに設けられたNACAエアダクト、そしてエンジンのドライサンプ化に伴い、タンクやオイルラインの取り回しが張り巡らされ、完全なるラリーコンペティションカーへと変貌を遂げている。

 エンジンに関しては、オリジナルのザルツブルグ・ラリー・ビートルの1,600ccに、ポルシェ914、904から移植したSolexPII4もしくはWeber46IDAで大幅にパフォーマンスアップして現在は2,110ccに、Weber44IDFのコンビネーションでラリーに挑んでいる。

コクピットと呼ぶに相応しい仕上がりの、インテリア。ドライバーシートはFIA公認のカーボン・ケブラー製のCobra Imora II。ステアリングはOMP 330mm。カーボン製のシフトロッドを介して、ポルシェ901トランスミッションと接続されるシフターは、Hargettパフォーマンス。急激な方向転換に対応する油圧サイドブレーキレバーも備わる。

ゲージ類はモンスタータコをセンターにマウントし、スピードメーター、油圧、シリンダヘッド温度計を配置。ラジオプレートには油温計をセットして、スイッチの切り替えでエンジン内、オイルタンク、さらにエンジンへ注入するオイルフィードの、3カ所での油温チェックが可能。

トランクに収まるスペアタイヤはグラベル用。Daveはロードコンディションに合わせて3セット履き替えている。さらにラゲッジエリアには寒さの厳しいカナダの気候に備え、Eberspacher製燃焼ヒーターも備わる。

リアシートを取り払って油圧を管理し、万が一の油圧低下の際にエンジンを守るAccusumpを装備。

リアエプロンはクイックリリース化。エンジンは2,110cc、90.5mm × 82mm, 4340クロモリクランク、CB 5.4" Hビームロッド、Engle K8カム、CB 1.3:1ロッカー、Kroc Portedヘッド 40X35.5ステンレスバルブ、Weber 44IDF、CB Black Boxイグニッション、エキゾーストはビンテージ・スピード・スーパーフロー。

text & photo:Shin WATANABE 渡辺慎介
媒体:LetsPlayVWs 51

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