2019.04.08

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

スーパーカー時代に生まれた、VWベースの夢のクルマ「Sterling」

 ボディとシャシーを簡単に分離することが出来るフォルクスワーゲン・ビートル。ドイツやその周辺のヨーロッパ諸国で、ビートルはボディを換装してスペシャルモデルを製作するコーチビルドの格好のベース車となった。VW本家自身もこの無限なる可能性を生かしてカルマンギアをラインナップに加えたが、社外ではロメッシュやダネンハウアー&スタウスなど、様々なビートルシャシーベースのコーチビルドモデルが存在している。

 一方アメリカでは1960〜70年代にマンクスバギー、356スピードスターレプリカ、MG-TDレプリカなど、さまざまなビートルシャシーベースのキットカーが生まれている。特に1970年代はスーパーカーの黄金期だったこともあり、VWシャシーベースのスーパーカーキットカーも生まれた。その中でもここに紹介する「Sterling(スターリング)」は、まさに「ザ・スーパーカー」に相応しい美しいスタイリングで当時大ヒットとなり、1,000台近くが生産されたVWシャシーベースのスーパーカーである。

 そのインパクトあるスタイリングは今でも世界中で多くのファンを魅了し、特にスーパーカーブーム世代は1984年に公開された『キャノンボールII』に「スターリング」が登場しているので、記憶に残っている方も少なくないのではないだろうか。

 「スターリング」はイギリスのRichard OaksとPhil Sayersによってデザインされ、Automotive Designand Development社によって生産販売された「ノヴァ」のアメリカ市場でのライセンス供与により、カリフォルニアのCali fornia Component Carsによって1973年から生産開始された。アメリカでは「Nova:ノヴァ」の商標はGMシボレーディビジョンに押さえられていたので、車名は「スターリング」に改める必要があったのだ。

 「スターリング」は何といってもその前方に迫り出すキャノピードアが大きな特徴で、当時のスーパーカーの頂点であったランボルギーニ・カウンタックをも凌ぐインパクトで大きな注目を浴び、1973年の『Car&Driver』誌の表紙も飾り、大々的に取り上げられた。スターリングは現在でもペンシルバニア州のSterling Sports Cars社によってオリジナルのチューブシャシーにスバル製水平対向4気筒エンジンが搭載され生産が続けられている。

 現車は1974年に製作(ベースのVWシャシーは1968年型)されたボディ#50で、現オーナーBill Lewisの元でフルレストレーションが施された個体である。初代オーナーは現車でSCCAレースに参戦し、その後2,3代目のオーナーの元で長年眠りについていたというヒストリーを持つ1台だ。オリジナルのエンジンはRayjay製ターボにハーレー用のキャブが搭載されていた。

 残念ながら、Rayjay製ターボは腐食して完全に固着してしまっていたため、Billは新たに2,110ccエンジンを組み上げている。ボディレストアの際にBillは新たにサンドレールスタイルのロールケージをボディ内に増設し、車体の大幅強化と安全性を向上させている。ディテールは当時の雰囲気を重視しながらも、現在の交通事情でもストレス無くドライブできるように、ブレーキのアップグレード、ヒーティング&クーリングシステムの強化、パワーミラー追加、リアビューカメラ追加などのモディファイが行われている。チェリーウッドがあしらわれたダッシュ周りは、Bill自身に手によってレストアされ美しい仕上がりを実現している。

 父親が米軍に所属し、日本に配属されていた関係で名古屋生まれというBill。その後アメリカに帰国。小学生の頃は、VWマニアであった父親が製作したバギーやサンドレイルを、閉鎖され荒れ地となっていたオートキャンプ場に持ち込み、運転の仕方を教えてもらったそうだ。

 免許を取得して大学生になると、Billは自然な流れでVWを購入。初めてのワーゲンは1967年型のタイプ3だった。小さい頃すでにVWのプラットフォームシャシーの無限の可能性に惹かれていたBillは、大学を卒業してタイプ3のシャシーとドライブトレインを利用してキットカーを製作。以来、空冷VW車をベースに何かしらモディファイを楽しみながら、現在に至っている。今では奥様、3人の子供も巻き込み、家族全員が空冷VW車を所有する強者ワーゲンファミリーなのだ!

エンジンはアルミケースをベースに組んだ2,110cc。キャブレターはデロルト36 DRLAのツイン。ファンシュラウドはブラジルモデルに採用されていたロープロファイルを使用。

スーパーカーのスペシャル感が漂うコクピットから、これがVWビートルベースだなんて、誰が思うだろうか。サイドシルには、オーディオスピーカーがインストールされている。

電動でせり上がる巨大キャノピーは、フォード・マスタングのコンバーティブルのメカニズムを流用した。ワイパーはカスタムメイドのシングルアーム。

ダッシュの美しいチェリーウッドは、Bill自らの手で製作。ゲージ類はスチュワート・ワーナー製。スイッチ類はオリジナルの入手が困難なので、様々なモデルから流用。

シャシー回りとボディ内にはDOMロールケージが追加され、剛性と安全性を大幅に強化。ホイールはMSR STYLE043をチョイス。タイヤはフロント205/50ZR16、リア235/45ZR16を履く。ステアリングはトヨタ車から流用した、ラック&ピニオンに改められている。マフラーはグラスパックのデュアル2インチ。

text & photo:Shin WATANABE 渡辺慎介
媒体:LetsPlayVWs 51

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