2019.03.07

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

目指せ最高速300km/h!!Karmann Ghia Wind Tunnel ...

ランド・スピード・レコードに挑む300馬力オーバーのカルマンギアが、最高スピード記録を破るため、風洞実験設備で空力性能を徹底検証した。

風洞試験で、LSRカルマンギアの空力性能を徹底検証

 自分のクルマは、一体どこまで速く走ることが出来るのか? クルマを愛する人であれば一度は思い描いたであろう、最高スピードへの憧れとロマン。空冷フォルクスワーゲンでもスピードには古くから挑んできたが、ランド・スピード・レコードの世界では1950年代からVWが登場しはじめる。

 当初100km/hそこそこだったVWの最高速は、エンジンチューニングの発展と共に1987年にはLarry Monrealがカルマンギアで268km/h、1988年にはスウェーデンのHans Dahlbackがタイプ1で280km/hのトップスピードを記録している。さらに昨年は36hpチャレンジに参戦したDarrell Vittoneのカルマンギアが262.72km/hという驚異的なトップスピードをスプリットウィンドウ世代の25馬力エンジンで実現した。

 しかしながらここでひとつの疑問が浮かんでくる。近年エンジンチューニング手法とパーツの進化に伴い、より高い性能とパワーを得ることが出来るようになったはずにも関わらず、最高スピードは1980年代の記録がいまだに破られていないのである。それは一体なぜだろうか?

 200km/hオーバーの高速域でより高いトップスピードを実現するには、単純にエンジン出力アップだけでなく、サスペンションセッティングや車輌スタンス、ギア比など様々なファクターが大きく影響する。そして中でも忘れてはならないのがエアロダイナミクスである。空気抵抗は速度の2乗に比例して大きくなっていくため、エンジン出力を上げていくだけで最高スピードは比例上昇しない。しかし言い方を変えれば、空気抵抗を抑えればまだまだ最高速を更新する可能性が秘められているのだ。ただVWランド・スピード・レコードの世界ではこれまでエアロダイナミクスの観点から最高速の探求がなかなか行われてこなかったのが現状だった。

 そこで、2017年ランド・スピード・レコードに挑戦するMike Fischerは、完成間近の1966年型カルマンギアのベストなエアロダイナミクス性能を引き出すために、ユタ州オグデンにある風洞実験施設DARKO Technologiesで空気抵抗を数値化しセッティングを探ることにした。今回は280km/hレンジでのベストセッティングを出すための実験を行った。風洞設備はこの速度域の風速を再現することは不可能なので、風速125km/hから換算し、280km/hの空力環境をシミュレート。風洞に配置されたカルマンはシステムに車輌のホイールベース、トレッド、そして前面投影面積が入力され、いよいよテスト開始。

 今回はフロントエアダム&バンパーの有無、車高、リアウィングの角度調整を行いながら空気抵抗を比較しベストなセッティングを探っていく。まずは製作されたそのままの状態で1回目の風洞テストを行い、これを基準にデータを比較していく。ただお断りしなくてはならないのは、この施設で算出されたcd値は、一般市販車のスペックに記載されているcd値とは全く異なるテスト環境、試験条件で算出されているので、単純に比較できない。あくまでも今回テストを行ったセッティングごとの比較用のみの参考値としてほしい。

 ということで1回目のテストの結果は、cd値(空気抵抗係数)は0.180という非常に良好な値となり、280km/hで走行する際のDragHP(空気抵抗によって失われる出力)は138hp、134kgものDrag抗力(逆方向に押し戻す力:抵抗)が発生していることが算出された。さらに前後併せて121kgのリフト(揚力:上昇してしまうと、当然車輌の接地性が悪化するので数値は低い方が良い)が発生していることも判明した。

 続いて、フロントエアダムを取り外してテスト#2に挑む。すると、cd値はなんと0.146、DragHPは112hp、そしてDrag抗力は109kg、リフトは72kg(フロントは変わらずリアのみ低減)まで劇的に改善(低減)された。

強烈な風量を生み出すファンの背後には巨大ディフューザーが備わり、エアが排出。再び前方へと戻される。

コントロールルームからファンの調整、各パラメータの入力、空気抵抗の算出が行われる。今回のテストでは風速125km/hで行い、設定速度の280km/hの抵抗値を算出した。

 クラシカルで美しく仕上げられたワンオフ製作のバンパーとエアダムは、皮肉なことに装着しない方が良好なcd値を得られることが判明。フロントの車高は地上からフェンダーアーチ最上部まで53cmがスイートスポットであることがわかった。

 リアウィングにはGurney Flapと言われるリップが装着されていたが、これもDrag HPに悪影響を及ぼしていることが判明し、取り外されることになった。テスト#6ではリアウィングを+13°にセットし、リフト量を大幅に抑えることに成功した。

左よりカルマンギアオーナーのMike Fischer、車輌を製作したBryon Pryde、DARKOTechnologies代表Layne Christensen、ボンネビルスターターDoug Fuller、 36hp& Big Block Challenge創設者Burly Burlile,、 DarkoのTom Burkland、そして筆者のDean Kirsten。

 これは正直想定外の結果で、続いてフロントバンパーを外してテスト#3を実施することにした。空気抵抗はさらに改善し、cd値は0.141、Drag HPは107hp、そてDrag抗力は104kg、リフトは95kg(フロントが増加、リア低減)となった。カスタムワンオフで製作したバンパーとエアダムは皮肉にも無用の長物であることが判明したが、リフトのセッティングを確認するため、次のテスト#4はフロントの車高を1インチ落として実施。しかし予想外にcd値、Drag HP、Drag抗力、フロントリフトは悪化。ただしリアリフトは数値が低下することになった。

 ということで、フロント回りはテスト#3のコンディションへ戻し、リアウィングのセッティングを変更してテストに臨むことにした。まずはリアウィングの端に装着されているGurney Flapを取り外し、角度を0からマイナス1°に変更。すると、テスト#3からcd値とDrag HPはほぼ変わらずリフトはフロントがテスト#1、2ほどではないものの#3と同程度に改善。そしてリアリフトは大幅増加(悪化)となった。そこで最後のテスト#6はリアウィングの角度を+13°へ変更して臨むことにした。結果はcd値は0.149で若干悪化したが、テスト#1よりも良好。Drag HPは114hp、そしてDrag 抗力は111kg、そしてリフトは79kg(フロントが75kg、リア4kg)と大幅に改善されることになった。

 こうしてエアダム、バンパーやウィングのセッティングが煮詰まってきたところで、次は風の流れを可視化して、細かい箇所の改良点を探ることにする。風洞のスピードを45km/hに抑え、ボディの各セクション先端から白煙を当てて、空気がスムーズに流れているかどうか目視しながら、改良箇所を絞り込んでいくのだ。今回改めてカルマンギアの美しいフロントデザインが空力的にも優れているのを確認することが出来たが、厚めのストックの前後ウィンドシールドラバーがエアフローに悪影響を及ぼしていることが確認された。

 さらに車高が落とされている影響でホイールハウスのセンターから後方へ若干オフセットしているフロントホイール、フェンダーから入り込んだ前後ホイール、そしてエキゾーストパイプの位置をモディファイすることでエアフローをさらに改善することもわかってきた。

 Mike Fischerは今回行った非常に貴重な風洞テスト結果から、フロントビーム、スピンドル、タイヤプロファイルの見直しを行い、ホイールとフェンダリップの位置関係を改善。さらに前後グラスのフラッシュマウント化、エキゾーストパイプのセンターマウント、そしてよりダウンフォースを得るためにリアウィングの調整範囲拡大のモディファイを行い、9月にユタ州ボンネビルで開催されるWorld of Speedに参戦予定だ。空力性能が大幅アップされたカルマンギアは夢の300km/h突破となるか? 本誌も今後の動向に注目していきたい!

 風の流れを可視化するために白煙をボディの各セクションに当てて、エアフローをチェックする。人が安定して立つことが出来るよう風洞のスピードを45km/hに抑え、空気がスムーズに流れているかどうか目視しながら、改良箇所を絞り込んでいく。

 カルマンギアのボディラインは空力学的にも非常に優れたデザインであることが、今回の風洞テストでも確認することが出来た。ボディ内側に入るホイール回りをもう少しボディライン側に出すことが出来ればさらに空気抵抗が低減される。

text & photo:Dean KIRSTEN
媒体:LetsPlayVWs 51

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