2019.04.22

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ポルシェエンジン搭載の角テールディテールアップでワンランク上へ。

角テールにポルシェ912 エンジンを搭載し、そのパフォーマンスを楽しんでいたオーナー。震災による別離を挟んで再び愛車が手元に戻ったとき、すべてをリフレッシュして新車時同然の、いやそれ以上の輝きを追求することを決意したという――。

 昨秋お台場にて開催された『Street VWs Jamboree』の会場内で、ひときわ来場者の目を引くカルマンギア・角テールがあった。1957年までの、L259ペリカンレッド&L41ブラックで塗り分けられた美麗なボディと、オリジナルスタイルで仕上げられたインテリアに、ポルシェ912用のエンジンを搭載したヴィンテージ・パフォーマンスの逸品……。

 セオリー通りに説明するなら、こうなるだろう。だがこの個体の放つオーラは、そんなわかりやすいコトバでは説明できない。「そこまでやるか」と思われそうなほど、細やかなディテールへのこだわりが積み重なった結晶なのだ。

 オーナーのB.T.さんは元々は福島県に住んでおられたそうで、フルでリペイントされた美しいボディのカルマンギアを埼玉のVWショップ『merzmerz』から購入したのが、約8年前。この個体は1957年8月生産のUS仕様、モデルイヤーでいうと58年モデルになり、オリジナルでは随所に過渡期のディテールが見られる。例えばステアリングホイール、内装生地、フロントシート形状(シートバックが後期より薄い)、ボディカラー等は57年モデルを踏襲しているのに対し、バンパーは58年モデル以降US仕様のダブルバンパーとなる。

 その後、海外から912用エンジンを入手することができ、南相馬市の『グリーンポイントサービス』木幡さんに相談した結果、栃木の『Bug Spot』塚本さんにエンジンとミッションを載せ換えてもらったのだった。当時はややローダウンしてフロントをナロードしたスタイルで、2010年秋に山中湖で開催された「第2回カルマンギア100台ミーティング」にも福島県から自走参加したりしていた。

 ところが2011年3月11日に東日本大震災が起こり、当時南相馬在住だったB.T.さん一家は、関西への一時避難生活を余儀なくされる。角テールは奥様の実家へ預け、しばらく乗れない時期が続いた。やがて神奈川県に新たな生活の拠点を定め、家も建て、カルマンギアを手元に再び迎えたときには、2014年になっていた。

 あらためてカルマンギアとの暮らしを始めるにあたり、内装を中心にしっかりとリフレッシュして心機一転したいと考えたB.T.さん。そこで選ばれたのが大阪のVWショップ『Garage Vintage』だ。とりわけスタッフの奥村さんは自らも1956年式角テールを所有しており、若手といえどカルマンギアへの知識も経験も豊富。カルマンギアのレベルアップのためにこの上ないパートナーといえる。

 当初はパーツを自力で集めながら、自身で作業を行おうと考えていたB.T.さんだが、『Garage Vintage』のHPやイベントなどでそのハイクオリティな作業を目の当たりにし、遠く大阪まで作業を依頼することに決めたそうだ。

 いよいよ『Garage Vintage』で角テールのリフレッシュ作業がスタート。インテリアは一旦、既存のものをすべて取り払ってから、オーナーがカリフォルニアのWCCR (West Coast Classic Restoration)から取り寄せた新しい生地で丁寧に張り替え。なお前席は過去に60年代のものに交換されていたため、57年用の生地を使い60年代用の型でシートカバーを製作している。なおかつ将来、年式マッチのシートが入手できた時のために、57年用の型でもう1セット用意しているそうだ。

 内装張り替えと並行して、フロアのヒーター吹出口をリペイントしたり、フロアのほぼ全体に防音・防震用のサウンドボードを貼ったりと、見える部分も見えない部分も徹底的にクオリティアップを図っている。例えば、ルームミラー&サンバイザーも各パーツすべて分解し、パーツごとにクロームメッキ、ポリッシュ等を使い分けてレストアしている。通常そこまでやることは滅多にない。だがそうすることで、外からクルマを見た時に、フロントガラス越しにキリっと引き締まった印象を与える。ちなみにこれは『Garage Vintage』でカルマンギアを仕上げる際には必須メニューなのだそうだ。

 エンジンは一旦降ろし、ロングブロックまで分解された。そこから356SC仕様として仕上げるために、各カバー類の加工、ファンシュラウドやエンジンルームのペイント、配線の引き直し、各ブラケット、ボルト等の亜鉛メッキ仕上げ、エンジンサウンドボードの張り替え、そして不調気味だったSOLEX40PⅡ-4キャブレターのオーバーホール等々……。ポルシェエンジンがそのパフォーマンスと存在感を十全に発揮するための理想的な空間を創りあげた。

 その後、ローダウンされた車高をストックに戻し、『GarageVintage』取り扱いのバイアスタイヤを装着したり、トランクルームのディテーリングをしたりと、気の遠くなるような作業が多岐にわたって行われていったのだった。

 多くの人が「これでOK」と思うラインの、さらに先まで踏み込んで、しっかり仕上げていったこのカルマンギア。ディテールに関して一切の妥協をしないからこそ実現できる領域の、美しさと存在感を示しているといえるだろう。そう、まさしく、神は細部に宿るのだ。

 エンジンは356SC仕様のルックスに変更。各ハードウェアのメッキ仕上げやポルシェ純正のデカール、配線処理など拘りのディテーリング。サウンドボードは、満足のいくリプロダクションが販売されておらず、『Garage Vintage』にてワンオフで製作された。エキゾーストは356用スポーツマフラーを角テールのボディに合わせて加工し、取り付け。

 このカルマンギアを入手したときには、1,600ccエンジンが積まれていたそうだが、オーナーがeBayで見つけたポルシェ912用の356エンジンを個人輸入して載せ換えた。空冷水平対向4気筒はVWと同じながら、ボア82.5mm × ストローク74mmで1,582cc、最高出力90馬力という、当時としては非常にハイパフォーマンスなユニットだ。その走りを味わうだけでもかつては満足だったようだが、エンジンそのものとエンジンルームを細部までこだわってリフレッシュした今では、走って良し、その魅力が100%以上に引き出されているのがおわかりいただけるだろう。

MOTOMETER製3in1ゲージは、当時物NOSをB. T.さんが海外から入手した物だ。

ポルシェ356用VDM 400mmステアリングホイール、カルマンギア専用タコメーター、MOTOMETER 3in1ゲージがヴィンテージ・パフォーマンスを演出するインテリア。WCCR製インテリアに、『Garage Vintage』が取り扱うハイクオリティなココマットを組み合わせる。

シートは一旦、古い生地やパディングなどを全て剥がしてシートフレームをペイントしたうえで、生地を貼り換えている。このシートフレームは60年代の物だったのだが、生地とパターンは1957年式にマッチするものをWCCRに特注して製作してもらい、1956-57年モデル独特のシートフレームが入手できたときの準備も万端だ。

オリジナル同様、モヘアにて綺麗に張り替えられたヘッドライナー。その前方には美しくレストアされたルームミラー&サンバイザーが。カルマンギア、特に角テールを熟知した『Garage Vintage』奥村さんのディテールへの比類なきこだわりが窺え、B.T.さんも満足している。

カメラ:Kiyoshi KAMIMURA 神村 聖
テキスト:Kota TAKEUCHI 竹内耕太
媒体:LetsPlayVWs 51

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