2019.04.26

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

世界中を飛び回っても探したい、VW純正NOSパーツの魅力とは?

VWパーツを求めて世界中を精力的に飛び回っている『MY BOWS』代表の高林氏。2016年11月にはタイにも出張した。高林氏をそこまで駆り立てるのは一体何か? そこには、貴重なVW純正NOSアイテムを巡る、世界的にシビアな状況への認識と危機感があるようだ。そこで、現在のVWパーツ事情を語ってもらった。

 リプロ部品がとにかく豊富な空冷VWですが、それが世界中にオールドVWが未だに現存し、世界各国の愛好家が維持できる理由の一つだと思います。部品が無い国産旧車のオーナーさんから見たら夢のような話ですね。ただ、その豊富なリプロの中には使用に耐えられない低クオリティどころか、取り付けすら不可のパーツも普通に存在し、マーケットで流通しています。

 問題はそういった部品を製造したり、流通させたりしてきたマーケットにあるんですが、最近はだいぶ変ってきました。たくさんのアフターマーケットブランドからオリジナル純正パーツをコピーして、質の高い部品もプロデュースされていますし、逆にオリジナル部品のマニュファクチャラーであるジャーマンブランド(Bosch等)が出している現行のリプロ品のクオリティがどんどん落ちてきていて、それなのに価格が上がったりもしています。

 今の自分は空冷VWパーツショップのオーナーですが、長い間現場の最前線で実際に毎日VWの整備をして、部品を交換したり取り付けをしてきました。ただ部品を海外から輸入して売っているだけのパーツ卸会社にオーダーして、届いたクオリティの低いパーツを使用しての修理には、大きな苦労と時間のロスをしました。

 加工しないと取り付けできない、もしくは全くできないとか、付いてもちゃんと機能しない、またはすぐにダメになる等の話は普通にあり、さらに同じ品番の同じパーツでも届く物が毎回のように違ったりして、もっとマトモな部品は無いのか? 安定して供給はされないのか? と自分で探しているうちに、パーツを売ることが仕事のメインになってしまいました。

 今は世界中のマニュファクチャラー、サプライヤーと直に取引をして、限られてはいる中でもできる限り厳選しています。すでに5000アイテムを超えるパーツの取り扱いがありますが、全てのパーツでトップクオリティのものは用意できませんし、チューニングパーツは別として、結局ドイツ製造時代の純正パーツを超えるリプロは「ほとんど無い」のが現実です。

 VW社が何年もかけてテストして研究し、何千人も関わって開発製造された部品は大工場で大量生産されたものです。そもそも話が全く違うんです。VW社の多額の設備投資と、管理・厳選された素材、工作精度、耐久性を追求したパーツと同じものを、今の中国生産のリプロコピー品に求めることはできません。下手したらただコピーしただけで、耐久テストどころか取り付けテストもしてない場合も多々あります。

 でも残念なことに、我々の乗る空冷VWの何十万点もあるパーツのほとんどは、すでにVW社からの供給が終わっています。同じVW純正でもメキシコやブラジルで作られていたパーツも流通していますが、それすら全体の一部しかなく、物によっては同じく供給が終わっています。さらにクオリティがドイツ時代の純正よりも劣る場合が多いです。

本場のヨーロッパで長年眠っていたパーツのハンティング。もちろん一般人が入れないエリア。

アメリカのウェアハウスでのハンティング。1か所でのハンティングは、とても1日では終わらない。

 結局のところ、完全社外のリプロ品に頼らないで整備をするのは厳しい状況なのですが、社外新品よりも純正中古を求める声も実際には多いです。物によっては中古を使うのが現実的でない場合もあり、そんな中で当時の新品を入手できるのであれば有難い話です。それが以前より認知され、需要が世界的に大きく高まり、ほとんど取り合い状態になっています。

 どこかで眠ってたりコレクションされていたパーツが売りに出ているだけなんですが、もう皆さん価値がわかってるので、とにかく高いんです。ヨーロッパのイベントのスワップミートでは、どのブースにもNOSがあるんじゃないか? ってくらいにオールドVWの純正箱が並んでいますが、価格が日本の感覚とまったく合いません。とてもじゃないけどそこで買って在庫するなんてできず、予算のある方からの探し物依頼でもない限り、入手することはできません。

 そんな中で、長い間色々な場所で買い集めてきたNOSパーツをキープしてきたり、物凄い労力とお金を使って、閉店することになったイタリアのNOS専門ショップの在庫を全部買い取ったりして、在庫を増やしてきました。先日訪れたバンコクでもパーツショップの倉庫の奥で、ホコリと汗で真っ黒になりながらパーツハンティングをしてきました。

 現在未紹介のものも含めて、1,000アイテム以上のNOSパーツのストックがありますが、今後のことを考えると売りたくなくなってしまう自分がいます。とにかくNOSパーツは現存して残っているものが減っていくだけなので、「次」が無いんです。パーツショップをやっていて売るために仕入れたのに、売りたくないとはなんともおかしな話ですが、次に入手できる当てが全く無いんです。現場に長くいたせいでそんな自分になってしまいました。まぁ、日本でパソコンの前に座ってても得られないので、これからも世界中を回って探してきます。

現行のボッシュ社製リプロ品コンデンサーはトラブルだらけですが、当時物は大丈夫です。数が限られていますが、世界中から集めています。

マフラーのクランプは、各メーカーからリプロが出ています。が、純正を超える品質の物はありません。社外品の中には内径寸法が合ってなかったり、取り付けが不可能なレベルのものもあります。

SWF社からの供給が先細りになり、チャイナ製リプロばかりのウインカースイッチです。これはリプロすらない、バスの1972年オンリーのNOSです。

フロントハブのスペーサーで、これも寸法が合わないゴミのようなリプロパーツが普通に売られています。足周りやブレーキパーツは、特に注意が必要ですね。

ハブのロックワッシャーです。削ったり曲げたりしないと使えないリプロでは、良い仕事ができません。もちろんこれは苦労なくすんなり取り付けできます。

これもレアアイテム! リプロが出ていない「合わせガラス用」の、バスのドアスライドガラス部のファスナーです。破損していることが多いですね。

ベントウイングのロックをフレームに固定するための専用リベット。これを使えば確実な固定ができます。できれば、ハンドリベット等で代用しないでください。

text & photo:Chiaki TAKABAYASHI 高林千昭
媒体:LetsPlayVWs 51

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