2019.05.15

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

薄汚いのでは無く、積み重ねてきた年月による佗寂をまとった名車たち。

「patina(パティーナ)」:ラテン語で「時を経て刻まれた味わい、風合い」を意味する。その個体が歩んできた、その時代のままの姿を維持している車両が数多く存在するのも、VWの世界の奥深きところ。ここでは、半世紀を経て良い具合にエイジングが進んだ3台のパティーナをフィーチャーしよう。

ニューペイントよりも遙かに手間を掛けた一台。「1959 Type-113」

 L14 Mignonetteのオリジナルペイントのエイジングが進み、なんとも味わい深い風合いを醸し出すChase Hillの1959年型タイプ1。現車は小さな農場で30年放置されていた個体で、Chaseの友人が数年前にレスキュー。前オーナーが腐食していた箇所などの修復を行い、その後Chaseが引き継いで足周りなどのカスタムを行っている。

 インテリアは、ダッシュをはじめオリジナルペイントの状態が良く、ドアパネルもオリジナルが残っていた。ただ運転席側のドアは交換が必要で、奇跡的に同じようなコンディションのドアを、カナダから入手。ただ、1960年型以降のドアだったので、ドアハンドルの穴をキレイに埋めて、酸化したペイントをうまく再現しながらマッチングを行っている。

 また、レスキュー当初欠品していたフェンダーもオリジナルを探し当て、ボディシェルの酸化が進んだオリジナルペイントとマッチするよう、絶妙なブレンドでエージングを再現している。そう、パティーナは時として、ニューペイントよりも遙かに手間が掛かるのだ。

 オーナーのChaseは、ネバダ州リノをベースに溶接/ファブリケーションのビジネス『Cage66』のオーナーとして忙しい日々を送っている。現車のほかにも1958年型、1961年型、1962年型X2台のタイプ1を所有。奥様が日本人ということもあり、定期的に訪日してVWイベントにも顔を出しており、日本のVWシーンにも詳しいVWガイなのだ。

 Chaseはロワード(スラムド)用のさまざまな足周りの製作も行っており、Hood Ride系では知られた存在。現車ももちろんChase自身によって、足周りのカスタムが行われている。フロントビームはAutowerksサスペンションの6インチナロードビーム、リアはJer Fabの4インチドロッププレートをチョイス。

 フロント7インチ、リア6インチのロワードを実現。これに自ら製作した、Cage66のエクステンド・コントロールアームを組み合わせて、ロワードした際のフロントホイールはフェンダーアーチのセンターにキッチリと収まっている。

エンジンはオリジナルとの年代マッチを重視し、36馬力のストックをチョイスした。30年以上農場の片隅で放置状態だった現車は、乾燥した環境下で塗装のエージングが進み、実に味わい深い風合いとなった。ボディの状態も素晴らしく、やはり湿度の高い条件下では、このような枯れ具合にはならないだろう。

運転席側のみドアを交換。奇跡的に同じカラーで同じやれ具合のドアを発見。ドアパネルは58-59年型オンリーのオリジナル。

ステアリングはコンセプト1の、リプロのスタンダード3スポーク。マップトレイも当時もののアクセサリーをShorty's Customが再現した、リプロダクション。

普段はネバダ州リノでファブリケーション・ショップ「Cage66」のボスとして活躍している、Chase Hill。ひらがなであれば日本語でのテキストメッセージでもOK。

7インチドロップ&6インチナロードのフロントサスペンションには、Cage66のエクステンド・コントロールアームが装着されており、ロワードした際のホイールもフェンダーアーチセンターに収まる。ホイールはサウス・アフリカ(SA)スプリントスター。リムとディスクをカットして、ワイドリムにウェルドされている。

弱冠20歳が愛情を注ぐ、味わい深い"パティーナ"。「1958 Type-113」

 「物心ついたときには父親が'70年型のタイプ1と'71年型のウエストファリア・キャンパーを所有していて、小さい頃から空冷VWで育ったんだ。免許を取った自分にとって初めてのクルマも、VWしか考えられなかった」

 こう話してくれたのはネバダ州リノからBugoramaにやってきた、弱冠20歳のNick Hilton。本当は父親のVWを引き継ぐ予定だったが、家庭の事情で父親が所有していたVWは売却しなくてはならず、その夢は叶わなかった。でもNickのVWへの想いは、決して冷め止むことはなかった。

 Nickが17歳の時に友人経由で引き継ぐことになったのが、この1958年型タイプ1だ。'58年オンリーのカラー、L245Light Bronzeのオリジナルペイントが残る、実に味わい深いパティーナだ。

 Nickの元にやってきた'58は、これ以上塗装の酸化が進まないようクリアを吹いた。毎日の足として使用するので、Jbugの21/2インチドロップスピンドルをインストールし、リアのトーションプレートはノーマルのままでロワード。決してお金は掛かっていないけど、この'58からはNickの愛情が注がれていることが伝わってくるのだ。

 父親の影響で、新しいクルマに全く興味がわかなかったNick、今ではこの'58のほかに'63バハバグのプロジェクトカーを入手して、思う存分VWライフをエンジョイしている。

リアシートも、フレームからカスタムワンオフメイドされている。両サイドにはアームレスト&カップホルダーも、アレンジされている。シート下には家庭用電源コンセントが配置され、オーディオアンプユニットも収まる。

幼少期は父親のVWで育ち、17歳で免許を取得後、すぐにこの'58タイプ1を手に入れた。アメリカでも、10代でVWを購入する人は少数派。VWコミュニティの期待の星として、VW仲間たちから慕われている。現在は1963年型のバハをノーマルにレストアしようと、プロジェクト進行中。

味わい深い、世代交代過渡期モデル「1960 Type-117」

 「気がつけば所有しているのは、いつもこの世代のタイプ1。やっぱりスモールテールランプとビッグウィンドウのモデルが好きなんだ。塗装が塗り替えられてしまったレストア済みの車両にはあまり興味が無くて、どこかで眠り続けているVWを助け出して、再び動くようにしてあげることに喜びを感じるんだ」

 こう話してくれたのは、サクラメント在住のStacy Wetnight。彼の1960年型ラグトップはエージングがL451 Indian Redのオリジナルペイントが至る所に残る、味わい深い1台だ。ところでスモールテールランプ&ビッグウィンドウとは、一般的には1958〜1960年型を指す(1961年型も該当するがエンジンは40馬力)。

 外観はオーバルから世代交代を果たすものの、メカニカルは依然として36馬力&縦割れノンシンクロトランスミッションのオーバル世代のままという、世代交代過渡期のモデルなのだ。

 Stacyはこの1960年型ラグトップをニューメキシコ州からレスキュー。絶妙な風合いのエクステリアは酸化の進行を抑えるためにクリアを吹いたのみ。フロントビームは5インチナロードビーム、これにCage66のエクステンド・コントロールアームを組み合わせ、リアはDub Fabの23/4インチドロッププレートをチョイス。絶妙なスタンスを実現している。

バンパーとFuchsスタイルホイール、ウィンカー、モールディングに至るまで、コッパーメッキ仕様で仕上げ。

ダッシュのオリジナルペイントは、素晴らしい状態。ステアリングは'59年モデル用にスワップしている。

サクラメント在住のオーナー、Stacy Wetnightは、どこかで眠っているスモールテール&ビッグウィンドウのタイプ1をレスキューしては、再び動くように仕上げて楽しんでいる。免許を取得してからずっとVW一筋。これまで40台以上の空冷VWを乗り継いできた、重度のVW ガイだ。

text & photo:Shin WATANABE 渡辺慎介
媒体:LetsPlayVWs 52

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