2019.05.21

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

Turbo City ターボを選択する !『1965 Type-312』

 数年前、本誌のイベントレポートにおいて北海道昭和新山で毎年開催のVWミーティング『BUG PICNIC』に、気になるクルマが写っていた。落ち着いたグレーのボディにアルミホイールを履き小綺麗な感じのタイプ3ノッチバックだが、ターボエンジンを搭載していて気になる存在であった。クルマのナンバーは「帯広」。帯広のVWショップ『ファットモービル』田原氏に話を聞いてみると、やはりここに通うお客さんであった。取材のオファーをし、この夏、北海道帯広へ取材に向かうこととなった。
 『ファットモービル』で待ち合わせるとそのクルマとオーナーが出迎えてくれた。程よく下げられた車高にクローム加工が施されたレーダーホイールを履き、ステンレスボディモールと各部のメッキ部分が輝く。好感度の高いルックスのVWであった。早速、エンジンをかけてもらうと普段聞くVWのエンジン音・排気音とは全く異なり、マフラーからは、図太いサウドが響く。容姿からは想像できない攻撃的なサウンドにも聞こえてくる。そして、エンジンルームを開けてもらうと、タービンとサイドドラフトキャブレターに、カーボンサイレンサーのマフラーとファンカバーが、エンジンパネルから突き出し顔を出している。トランクとしても使えるこのスペースをエンジンルームのみに変貌、ターボキットを見せつけるレイアウトとなっていた。また、エンジンパネルが、エンジンチンの代わりとなりタービン・キャブレターをエンジンの下から上がってくる熱気からシャットアウトしていた。このタービンキットは、VW用ターボキットとして有名な「Turbo city」から発売されている「Turbo Kit」だ。取り付けも思いのほか簡単。キット内容はギャレットタービンにWEBER40 DCOEサイドドラフトキャブレター、そしてエキゾーストシステムなど全てが揃っている。マニュアル通りに組めば出来上がる内容で、あとは、肝となるセッティング次第といった感じだ。今回、ベースとなるエンジンは、69mmクランクに1.5mmボアアップした87mmピストンを使用した1641cc。ノーマルエンジンより力があるデイリーユースなライトチューンエンジンだ。これにターボキットをセットし、ブースト圧は最大1.0kg/㎤までに設定されているという。
 果たしてその実力は如何に……早速、乗せてもらう。かなりのトルクがあり、大排気量エンジンを載せているかのようである。これが1641ccのエンジンなのか?アクセルを開け始めブーストが立ち上がったその瞬間は、「速い!」そしてシフトアップ!エンジンから排出された排気ガスのエネルギーが、タービンを回す。同軸上のコンプレッサーを回し、空気を圧縮して強制的にシリンダーヘッドへと空気を送り込む。このときの送る空気量、ブースト圧は最大1.0kg/㎤と、ブーストに比例してクルマをグイグイ前へ、前へと引っ張っていく。この加速は、NA(自然吸気)では決して体感することのできない加速感だ。ビッグモーターのNAエンジンの場合、3速と4速のギア比が開いているため、加速が物足りなくなり、ドラッグレースの世界では、3速・4速のギア比を下げて加速を補うクロスミッションを搭載したりするが、ターボの場合、その3速でどんどん加速する楽しさが味わえるのだ。そして4速でもその加速は更に増す。
 参考までに、ターボをNA換算するとタービンの容量にもよるが、おおよそ1.5倍の排気量に匹敵すると言われている。つまり1641ccのエンジンをターボ化すると2400ccオーバーに匹敵。実際は、エンジン強度・耐久性を考慮してのセッティングなだけにそれよりは下回るとしても、絶大なパワーを得ることが出来る。しかも、考え方によっては、ローコストでこのパワーが得られるのである。
 実際、このエンジンは、1641ccエンジンにターボキット、メーター類、イグニッションコントロール、サイドドラフトWEBER40、マフラーといった程度のアイテムを揃えセッティングしただけである。もし、NAでこのターボエンジンと同等のパワーを持つ2000ccオーバーのエンジンをビルドアップした場合、カムシャフト、ボア、ストロークアップに対するケース加工、ロッカーアーム、プッシュロッド、強化コンロッド、強化クランク、そして、大口径ツインキャブレターなど、揃えるパーツがいっぱいだ。しかもどれも決して安価なものではなく、全て強化パーツなためパーツ代・加工・工賃だけでもかなり高価な代物になってしまう。それと比べれば、ターボキットの方が明らかに価格を抑えることが出来るのだ。エンジンの特製、好みにもよるが、チューニング手法の1つとして覚えておいて損はないはずだ。
 しかし、この加速・パワーを手に入れただけに失うものもあるはず。そう、ターボ化して燃費が悪くなるというのはよく耳にする話だ。その点をオーナーに聞いてみると、「燃費は、ノーマルエンジンに比べれば悪いかもしれませんが、普段街中ではリッター12kmくらいは普通ですね。高速とかだと15kmは余裕です」とのこと、燃費が悪いどころか良いではないか。その秘密をビルダーの田原氏に説明してもらう。ジェッティ
ングはもちろんだが、おそらくこのターボ用のMSD にあると。「MSD 6 BTM」、そのラベルには「MSD 6 Boost Timing Master Ignition」と明記されている。ブースト圧に応じて点火タイミングを調整し高回転時にも安定したスパークを供給し燃費向上にも繋がっているという。また、NAの場合は高圧縮にしてパンチある仕様にするのが主流であるが、ターボ化したことで燃焼室の圧縮は、低めの7.6:1。ブーストがかからない時は、圧縮が低い分エンジンが熱を持たないことも利点となっているという。結果、燃費も悪くなく、ターボ仕様にして失うものは何もなく、プラスになることばかりであった。
 速く!安価!燃費よし!の三拍子揃ったターボチューンは、搭載した人だけが体感できる正にスペシャルメニューなのであった。
 他車を寄せ付けない加速・スピード・パワーを手にしたノッチバック。容姿こそ愛嬌あるフェイスのクルマだが、追い抜かれたクルマは、このノッチがどんどん視界からい小さくなっていくことに驚かされる。その姿は、これぞ「羊の皮を被った狼」。このクルマのためにある言葉と言っても過言ではない。実に魅力的なパワフルなVWであった。

リアハッチを開ければ、エンジンパネルを突き破って出て来たかの様にタービンキットが現れる。タービンはGARRETT T3G。過給をコントロールするキャブレターはWEBER40DCOCサイドドラフト。マニフォールドがタービンに溶接されキャブレターをがっちりと固定される。

インテリアはノーマルの雰囲気を壊さず自然な感じ。ダッシュボードの上にはシフトライトが備わる。

リアシートの下には、パワーの源でもあるターボ用のMSD 6BTMがセットされる。

ダッシュ下にされげなくセットされる追加メーターは左から油圧計、空燃費計、ブースト計、その下は、デジタル油温計が備わる

エンジンパネルを外すとエンジン全てが顔を出す。イグニションコイルはMSD ブラスター2に009ディストリビューターを組み合わせている。

1641ccのエンジンには、W110のカムシャフトがセットされる。オイルサンプはCBPrformance製。オイルクーラーはエプロン側に電動ファンと共にセットされる。マフラーはバイク用のカーボンサイレンサーを加工したワンオフ物。

カメラマン:Yusuke YARIMIZU 鑓水 雄介
テキスト:Yuji OHSAKO 大佐古裕士
媒体:LetsPlayVWs
号数:52

ARCHIVES

RANKING

POPULAR TAG

NEWS

SEARCH