2019.01.31

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

地威陀亜の挑戦。「THE COMET IN THE USA」

まだ見ぬ世界に放たれた、ほうき星の行方。西海岸最大級のチョッパーバッシュ"Born-Free"の花形であるインバイトビルダーとして、今季日本より召集された唯一のビルダー大沢俊之。いわずと知れた"Neighborhood"のデザイナー滝沢伸介とのユニットJurassic Customsでメイクした、空前絶後のKoslowを引っさげての初遠征から、3年ぶり2回目。自らの屋号Cheetah Custom Cyclesとしては初参戦となる、BF9での勝負のためにひねり上げたのは、45ciフラットヘッド以外をフルスクラッチした渾身の1台。現時の集大成として組み上げたそれは"The Comet"と命名される。Calif.オークキャニオンの会場中央に設置された招待枠ビルダーの車両のみ置くことを許されるスペシャルゾーンに展示され、世界中のフリークの羨望を集めた日本の"彗星"は、かくして並いる強豪を制しビルダーズチョイス2位という栄光を掴む――。

年齢や性別、趣味趣向を問わず、見る人全てが"綺麗"だと感じるモーターサイクルを目指して── 大沢俊之

 地威陀亜(Cheetah)の看板を背負っての大一番に、全てを手掛けたThe Cometで勝負した大沢は、ビルダーズチョイス2位という誇るべき結果を残す。表彰式で主催のマイク&グラントより、賞金3,000ドルの手形が贈呈された。

 Jurassic Customsとして初エントリーを果たした2014年、第6回目のBorn-Freeから3年が経過した2017年6月24〜25日、大沢俊之は再びCalif.オークキャニオンにいた──。世界各国で活躍する気鋭のビルダーから選出されるインバイトビルダーとその新作で競われるコンペティションは、BFにおける最大の見せ場だが、第9回を迎えたBFに選出された26人の招待ビルダーで、ただひとり日本より召集されたのが大沢だった。さらに今期は自身の屋号Cheetah Custom Cyclesとして、巨頭・滝沢伸介の後ろ盾なしに、どこまでいけるのか──BF主催からのオファーを受け入れた昨年末、大沢の孤独な戦いは静かに幕を開けた。

 大舞台の一番のために選出したベースマシンは、45ciのSVを搭載するWLモデル、そのプロジェクトをビルダーはThe Cometと名付けた。

「タイヤとリム、エンジン以外はフルスクラッチですが、だからといって"いかにも手が入ってます"というこれ見よがしのショーバイクではなく、逆に"かつて実在した市販車のよう"と形容してもらえるような、自然な佇まいのカスタムを目指した。実は3年前のBF6でJurassic Customsとして招待された際、滝沢さんとKoslow Krakenを考案した時のコンセプトを踏襲したものです」。

 名作Krakenの延長線上に位置付けられた大沢の"新彗星"は、初の試みの宝庫でもあった。

「1からフレームを作ったのは実は初めてで、その他の箇所も持ち得る技術の全てを駆使していますが、パッと見では手を掛けたことすら気付かれない、そんな相反するテーマを両立させるのに細心の注意を払いました──」。

 Cheetah Custom Cyclesとして挑んだ大舞台。結果をいえば、インバイトビルダー枠で2位という堂々たる結果を残した。授賞式の後、安堵の表情を浮かべながら大沢は言った。

「正直ホッとしています。でも出るからには、1位以外は眼中になかった。そのためのイメージを描き、入念に計画を立て、それを忠実に作り上げてきたから。タイトな納期にもかかわらず、協力を惜しまなかった各業者の皆さんや、フレームを作るにあたってCADの基礎を教授してくれた、古巣Hot-Dockの河北師匠。

 何より希少な旧車に触れる機会を与えてくれ、同時に世界水準のカスタムを教えてくれた滝沢さん。最後にBFの1週間前から合宿させてもらい、最終仕上げを見守ってくれたCalif.のChabott Engineering木村さんとアユミさんのご恩も忘れられません。そんな皆さんの応援に少しでも報いるためにも1位を取りたかった──」。

 参考までに。招待車両全26台からビルダーたちが選出した2017年度のチャンピオンは、スウェーデンから召集されたMartin Carlgren率いるRingo Chop Shopで、1930年式のVLフレームと1929 JDのフロントエンドからなる骨格に、自国のHasqvarna社が1947年式に設計したプロトエンジン"SRM"を搭載した、空前絶後のカルトなチョッパーだった。ちなみにこのアワードバイクは横浜HRCSに展示された。

 「45ciという小排気量ゆえチープに見られがちなWLという素材を用い、その上Chopper Showを標榜するBorn-Freeにクラシカルなスタイルで挑むのも、ボクなりの挑戦でした。デザインのセンスとそれを具現化する技術力、作り込みやまとめ方、アクの出し方までを含め、今の自分はどこまで世界に通用するのか、それを体感した貴重な経験だった。年齢や性別、趣味趣向を問わず、見る人全てが単純に"綺麗"と言ってくれるモーターサイクルが、ボクの理想。もちろん走って楽しいことは大前提です」。

 東京練馬のCheetah Custom Cyclesから放たれた彗星は、長いダストテールを従えながら今もアメリカの上空を飛び続けている──。

滝沢伸介のイメージを大沢俊之が具現化するドリームコンボ。── Jurassic Customs

 CrockerやBrough Superior、Excelsiorといった車には、開発者のクラフトマンシップがすべからく内包されており、だからこそ決して色褪せぬ個性として威光を放ち続ける。多くのカスタムをデザインしてきたが、"究極"と評されるそれらヒストリクスと並べても引けを取らない品位を備えた One&Onlyを手掛けてみたい──滝沢伸介が抱いた壮大なロマンを具現化するべく、結成されたのがJurassic Customs。多くの傑作を産出したが、白眉はKoslowだ。3年前のKrakenから進化し続け、昨年TROG WESTにも出走。大沢は全工程を担当した。

2017 THE COMET CHEETAH CUSTOM CYCLES

 全てが見所という芸術だが、要はクロムモリブデン鋼のパイプをBronze Brazing=ロウ付けで繋ぎ合わせた、3Bar形状のレーシングフレーム。製作者曰く「Pea ShooterのスプリンガーとVincentのガードローリック、 Sunbeamのフォークのいいとこ取り」というフロントエンドも、サスペンション含めハンドメイドされた。バンク角を確保するためエンジン/トランスの位置は、正規より高く設定される。

 俯瞰から見ると、The Cometのコンパクトさが際立つ。美しいアールを描くハンドルや、Back Drop 製のシート形状/ポジショニングはビルダー自身の体格を基軸に算出される。"コッカーチルドレン"を自称する大沢ゆえ、前後タイヤは共にCoker社がリリースする、3.50-19 サイズの"DEKA"が選択される。ペイントはS-Paint Work、レタリングとピンラインはシェイキン清水の仕事。

 2つのハブのドラムサイドをニコイチで繋ぎ合わせ、両面に丁数の異なるスプロケットを配し、タイヤの向きを入れ替えるだけでファイナルのセッティングを変更できる、クイックチェンジャー式のフリップフロップハブにも注目されたし。ちなみに大沢は、BFの前夜祭として開催されたCosta mesa SpeedwayでのダートトラックレースにThe Cometを乗り入れ、レースに出走。本場のカスタムフリークの度肝を抜いた。上の写真はレースの後に、実際に走ったトラックの上で撮影したもの。

Photographs:Kentaro Yamada
Text:Gonz (満永毅)
媒体:ROLLER magazine vol.24

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