2019.02.21

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

アメカジに魅せられた豪傑のH-D「PANHEAD MAN」

複数のH-Dを持っているマニアは数多いるが、所有する6台全てがパンヘッドとなれば話は別だろう。"Big Boss"と慕われる、愛すべき偏執狂の世界観、その血肉と呼ぶべき愛機たちを、ぜひこの機会にご紹介したい――。

新潟上越に店を構える「Western River」は、国内屈指の規模を誇るアメリカン・カジュアルの巨大セレクション。西部劇のワンシーンのような店構えが実にCOOL! アパレルブランド「WESTRIDE」のデザイナー・中井浩之の拠点である。

HIROYUKI NAKAI

アメリカン・カジュアルを基盤に、Bikerも納得の品質を備えたオリジナルブランドWESTRIDEで手腕を振るうデザイナー。6台のパンヘッドを所有するH-D狂で、新潟上越のセレクションWESTERN RIVERと東京目黒のWESTRIDE TOKYOを取り仕切るオーナーでもある。

お宝を探し当てるような感覚を大切にしたい── 中井浩之

 弊誌『ROLLER magazine』読者の年齢層を検証すると、最大のボリュームゾーンは"35〜45歳の男性"となる。ビンゴのアナタ、唐突だがここで自らの青春時代を思い返してほしい──記憶の片隅にあるだろう、かの時代のストリートを席巻した"シブカジ"と呼ばれるスタイルを──。

 革ジャン、Levi's、エンジニアブーツを3種の神器とするそれは、80年代の終盤に渋谷で生まれ瞬く間に全国各地のストリートに飛び火し、ファッションカルチャーの一大トレンドになった事象だ。渋谷BACKDROPや原宿PROPELLAといった良質なセレクトショップに加え、選りすぐりのヴィンテージを扱う古着屋がしのぎを削り、爆発的に急成長したシーンを牽引。かくしてムーブメントとなった"シブカジ"だが、元来それはアメリカの日常着を基軸にWORKやOUTDOOOR、MILITARYという質実剛健なガーメンツをアレンジしたもので、いわゆるトレンドの類とは対極にあるリアルクローズだったが、流行の定めだろう、2000年を境にブームは下火になる。  

 だがしかし、あの時代の渋谷で生まれた熱源は、ムーブメントの洗礼を受けた継承者たちの元でその後も粛々と育まれ、流行を超えた"ライフスタイル"として提唱されている。

 中井浩之も青春時代にシブカジの洗礼を受け、その後の人生をファッションに捧げたスタイラーだ。新潟上越を拠点にアパレルブランドWESTRIDEのデザイナーとして手腕を振るう中井は、同時に地元上越と東京目黒でアメリカン・カジュアルを標榜するセレクトショップWESTERN RIVERとWESTRIDE TOKYOの経営者でもある。

 中井が日常の拠点とする上越本店は、アメカジ系セレクトショップでいえば"全国屈指の規模"と表すべき大型店舗で、広大な敷地の店内には本場アメリカのインポートからドメスティックブランド、オリジナル企画のWESTRIDEのアイテムが所狭しと並び、来訪者を圧倒する。小売のインフラが店舗からネットに以降して止まない昨今、店主の世界観を顧客の五感に直訴するこの店は、もはやアトラクションとも言えるインパクトを誇る。「ステッカー1枚を買うにしても店の隅々まで掘り起こし、お宝を探し当てるような感覚を大切にしたい」という店主の言葉が印象深い。 

 元々デニムやライダースが好きで古着の世界にハマり、アメリカの文化に魅了されたという中井は、自他共に認めるH-Dフリークでもある。彼がデザインするWESTRIDEのアイテムは、バイクライドを前提に設計された堅牢なアパレルが真骨頂だ。それらはサンプル段階で着用されバイクでの走行テストを実施するという徹底ぶりで、最終的に中井自身が着心地や耐久性をチェックし、自身が納得したサンプルのみ製品化される。こうして生まれたこだわりのライドギアは、巷の“バイカー風アパレル”とは似て非なる品質を備え、然るべきユーザーの元で愛用されている。

 生粋のH-D党である中井だが、その趣向は極めて偏執的。現在6台のH-Dを所有するが、その全てがパンヘッドである。

「26年前に店を立ち上げその3年後に53FLを手に入れた。当時の面影はもはやないけれど、その53FLは今も手元にある。ガラージにはパンばかりだけど基本はチープなもの。希少なヴィンテージもいいけれど、ボクは街乗りもロングもドラッグレースも気兼ねなく楽しみたい。20年以上ポンコツパンヘッド一筋だけど、最近ストックの55年を手に入れた。ジョッキーシフトのチョッパーばかりだったので、タンクシフトとロッカークラッチが新鮮です──」。

 これまで散々"パンヘッド最高!"と豪語してきた手前、今さら他の年式には乗れないと笑う中井。H-Dと共にあるライフスタイルの素晴らしさを提唱するミスター・パンヘッドマン、新潟・上越にありき――。

Mr.Panhead Manが愛用するこだわりのアイテム。

WESTRIDE 1948JXX/
昨夏の発売以降大きな話題となった1948XXデニムパンツに続くジャケットは、ファースト48年モデルで登場。ひとりの職人が全行程を戦前のミシンを用い当時と同じ手曲げ縫製するというこだわりの製法で、1日2着のみの逸品。
価格:4万8,600円

BIKER WALLET & SWASTIKA CHAIN/
"オールドインディアンジュエリーとバイカージュエリーの融合"をコンセプトとするWR渾身のシルバーアクセサリーとレザーウォレット。Rolex GMT Masterと共に、オンオフ問わず常に身に着けている愛用品。
SLINGSHOT WALLET CHAIN 価格:21万3,840円
SWASTIKA BIKER WALLET 価格:3万2,184円
LANCE BRACELETE 価格:11万8,800円

コレクションに加えられた念願の55年式「1955 H-D FL CHROME-GLIDE」

 以前から狙っていたという55年式は、共通の友人を介して知り合ったパンヘッドマニアが手塩に掛けたクロームメッキ仕様を譲り受けた。現在所有する6台のパンヘッド・コレクションの中で1番のニューカマーである。

 「55FLを売り出すと聞いたのが、うちの定例イベントRUMBLING ART SHOWで開催している PANHEAD HEAVENの前で。オーナーにタイミングが合えばぜひ遊びに来てください。自走で来てくれたらその場で買っちゃうかもと冗談半分で誘ったら、イベント当日本当に東京から自走で現れて。もう買わざるを得ないですよね──(笑)」。エンジン/ミッション共にフルリビルド済みで絶好調、手に入れた翌週には北海道まで自走したという。

エクステリアのクローム化は前オーナーが施したカスタム。タンクのスキャロップペイントは中井の好みで描かれたもの。ウインドシールドや細かなアクセサリーも追加される。1955年式の証Victoryのエンブレムがフロントフェンダーに配されている。6本ボルトのシリンダーヘッドやトランペット型のJubileeホーンも55年式ならではのディテールだ。

ゼロヨン12.01を誇る戦闘機「1953 H-D FL MAIDS MOTORCYCLE」

 現在所有するパンヘッドの中で一番古くから所有するのがこの53FL。

「ショップを立ち上げてから3年後、今から23年前に手に入れた1台で、自分にとって2台目のパンヘッドです。当初はボロボロのガラージチョッパーでしたが、今のスタイルになる以前に5回ほど形が変わっている。普段の足からツーリング、全国各地への営業、ドラッグレースにもこれで参戦した。ベストタイムは12.01で仙台ドラッグゲームで優勝した。もちろんエンジンブローも数知れず、フレームも3回は折れてます(笑)」。23年間徹底的に乗り回した結果、ケースもヘッドもフレームも今や強化タイプのリプレイスに換装され、手に入れた当初の面影はもはや微塵もなし──パンヘッドの酸いも甘いも知る男の愛機だ。

もはや"手が入っていない箇所がない"という53FL。現在はオーソドックスなフリスコスタイルだが、外装/内燃機共に東京杉並のMaids Motorcyclesの手が入る俊足。同店代表の斉藤氏はV-Twin Drag Associationを運営するドラッグレース狂としても有名だ。昨年のHRCSの後、名古屋に行く途中エンジンブローして再び斉藤氏の元へ。入念なOHが施され復活も秒読み段階とのこと。同じタイミングでフレームもクローム化される。

JJも絶賛したB&H Chopper「1948 H-D EL」

 WRが代理店を務める"BLACKBORD CAFE"は、チョッパーカルチャーの震源So-Cal.を拠点とする若きキーパーソンAL Boyが運営するプライベートレーベルで、オリジナルアパレルを手がける一方、ガラージメイドのチョッパー製作にも余念なし。彼とは以前から公私ともに友好を持つ中井のパンヘッド・コレクションには、AL Boyが手塩に掛けた2台のチョッパーがあった。「このヨンパチは彼が自分で乗るために組み上げたもの。Born-Freeに遠征した際、ALが乗って来たの見たのが最初。壊れそうで壊れない絶妙なバランス(笑)」というお気に入り。

中井の心を掴んだのはレアなフットコントロール・キットだ。「チョッパーなのにB&Hというセンスが決め手」。英国車のフロントエンドやFlandersのライザーにワイドなエイプバー、アップスウィープのフィッシュテールなどスキモノには堪らないディテール満載!かのJJも絶賛したというこの48ELで千里浜ビーチレースにも出走している。

Big Boss仕様のトキシックゴースト「1956 H-D FLH」

 ご覧のチョッパーも"BLACKBORD CAFE"が手掛けたお気に入りで、AL Boyが中井のためにバスケットの状態から仕立てている。「Big Bossはデカイからこれだ!」と自信満々に見せられた当初は、とんでもない高さのスカイハイバーとありえない高さの煙突マフラーが付けられていた。「さすがにそれでは走れないと固い意志を持って変更してもらいました(笑)」。上のヨンパチ同様"壊れそうで壊れず"に全国を走り回っている。参考までに。中井はこの他に1952年式のハイドラと千里浜仕様の1958FLH 、2機のパンモーターを所有する偏執狂だ。

フューエルタンクのオールドペイントに注視! この56FLHが"Toxic Ghost"と呼ばれる所以である。点火方式はマグネトーに換装、日本で装着されたものだという。

PANHEADS HEAVEN@RUMBLING ART SHOW

毎年6月にWESTERN RIVERで開催される「チョッパーバッシュRUMBLING ART SHOW」では、首謀者・中井浩之の肝入りである"パンヘッドの祭典"が存在する。ここではPANHEADS HEAVENに集結した全国のパンヘッド狂を紹介する。

北陸のヴィンテージH-Dシーンの重鎮・若山篤志率いる新潟JACKSUN’Sが手掛けた59FL"CHROME FRANK"が、今期PANHEADS HEAVENのアワードを獲得! 純正 Duo-Glideのスイングアームフレームに搭載されるFLモーターはSTD製のヘッドに換装、S&S Eキャブがインストールされストックにはないホットな走りが楽しめる仕様。ポリッシュされたフロントエンドのボトムケースがクロームの外装と抜群のマッチング。そのグライドフォークは2インチほどエクステンドされ"チョッパー感"を巧みに演出する。

Photographs:Kentaro Yamada
Text:Gonz (満永毅)
媒体:ROLLER magazine vol.24

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