2018.03.05

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

オリジナルポマードを原点とするブランド「BYRD」

photo&text◎Yuichi Toida coordinate◎Viva

何もかもが黄色と黒で統一されたデザイン、アイコニックな鳥のキャラクター。 オリジナルポマードを原点とするブランド「BYRD」が放つ世界感はどこか懐かしく、 サーファーの感性を刺激する。その理由がどこにあるのかを知るために カルバーシティのオフィスを訪ねると、待っていたのはまだ20代前半の若者だった。

「BYRD」が描くハイコントラスト

 ファッションの背景にはカルチャーがあり、ルーツがある。うわべのカッコよさを求めただけのものは、結局はチープの粋を抜け出せないか、トレンドに飲み込まれて終わりだろう。チェイス・ウィルソンはまだ20代前半の若者だが、それを感覚的に理解しているようだ。いや、カリフォルニアという土壌が、その感覚を植えつけたと言ってもいい。
 2012年。チェイスは自身のブランド「バード(BYRD)」の礎となるポマードを作った。最初はなんと自作。12歳でサーフィンをはじめ、やがてWQSにも出場するほどのサーファーへと成長するチェイスはスタイルにも敏感で、海でも調子のいいポマードを探していた。
「今のような髪型をするようになったのは高校生のときから。でも市販されているポマードはサーフィン中に目が痛くなったりして、ベストなものがなかったんだ。そんな想いがずっとあって、4年前に自分で作ってみたってわけ。完璧なものは作れなかったけど、諦めずにいたらいい工場と出会えて、自分好みのポマードが作れることになったんだ。カチカチで海に入ったら流れてしまう通常のポマードとちがい、ワックスベースで海でもセットし直せる。この“クラシック”というポマードこそがバードの原点だ」
 こうしてチェイスはワンボックスにオリジナルのポマードを積んで、周囲に宣伝して回った。サーフショップ、バーバー、セレクトショップ。コンテスト先でもサーファー仲間に配って回ったそうだ。
「僕はサーファーだから、仲間がみんなつなげてくれた。おかげで浸透するのは早かったと思う。2014年にはアーバン・アウトフィッターズの取り扱いが決まったりして、一気に存在が広まっていったんだ」
 まるでどこかのレジェンドに、'50年代生まれのブランドのサクセスストーリーでも聞いているかのようだった。思えばバードのアイコンやデザインも、一貫してクラシカルな趣きだ。それでもチェイスはニューポートで生まれ育った、ばりばりのリッピング・カルチャー世代である。
「生まれた時代を間違えたって自分でも思うよ(笑)。

ニューポートで1ラウンド。プロサーファーでもあるチェイスはリッピングもエアーも朝飯前。

ポマードの背景に息づくサーフカルチャー

僕とアートディレクターのスコットは'50年代や'60年代のデザインが大好きで、バードのデザインアプローチはその時代に多くの影響を受けている。ちなみにバードというブランド名は、僕の高校時代のあだ名が“ビッグバード”だったから。知ってる? セサミストリートの黄色い鳥の名前だよ。せっかくこんなユニークなニックネームがあるんだから、活かさない手はないよね。そしてブランドのアイコンである鳥のキャラクター“ミスター・バード”が生まれた。かつてカートゥーンのキャラクターがブランディングに起用されていたようにね」
 チェイスの物語はすべて一本の線でつながっている。カリフォルニア、ファッション、サーフィン、デザイン、そんなひとつひとつが人生を通して結ばれているのだ。生まれるべくして生まれたブランド、ということか。そんな彼だけに、製品にもひとつひとつストーリーがある。
「“クラシック”ポマードは僕の原点だから、ニューポートのエコービーチをイメージした香り(ライム・ロー
ズマリー・マリンのブレンド)。ライトポマードはノースショアのエフカイ、ソープはフィジーのクラウドブレイク、車で使うエアフレッシュナーはマリブをイメージして香りを作っているんだ。あくまで僕なりのイメージだけどね」
 目を閉じて、その情景や空気感を想像できなければ香りなど生み出せるわけがない。うわべだけじゃないスタイル、ブランドの背景にあるカルチャーというのは、つまりこういうことだ。ちなみに机に置いてあったイエローのコームは、なんとフィンブランドのフューチャーズとのコラボレーションだそうだ。フィンと同じ素材で作られていて、そのフレックスはヘアメイクにも最適なのだという。その実力のほどは愛用者だけが知るところだが、チェイスの視点の面白さは十分伝わってくる。
 こうしてチェイスは若くして、バードを軌道に乗せ始めている。アメリカ、日本、ヨーロッパ、ロシア、台湾、韓国、シンガポール……その広がりはもはやワールドクラスだ。
「去年まではバードとコンペティションの2足のわらじを履いていたけど、今年からはしっかりバードと向き合うことにしたよ」
 参考までに、チェイスは現在24歳。19から23歳までQSをはじめコンテストにも出場し、ハンティントンビーチで開催された4スターでは4位という成績を収めている。生まれた時代を間違えたと言って笑っていたが、サーファーとしても本物であり、クイックシルバーはそんな彼をいまなおサポートし続けている。
 サーファーとしてのネットワークは他の場面でも活きている。彼らの拠点があるカルバーシティのオフィスが非常に個性的な造りで、オフィスを抜けるとガーデン(裏庭)があり、なんとバーバーがある。さらにその横にはコンテナを重ねて作った部屋が4つあり、チェイスはアートディレクターのスコット、フリーのビデオグラファーであるジョン、そしてチェイスの弟の計4人でここに住んでいる。このガーデンが、パーティに最適な場所なのだ。
「これまでにサーファーマガジン、スタブ、ヴィスラ、リーフとかがここでパーティを開催したかな。あとは僕たち自身が夏のあいだ、月一回のペースで“スリックサタデー”というイベントを催しているんだ。ビールのスポンサーを付けて、フリービアーで、フリーヘアカット! 今ではけっこう有名なパーティになっているよ。イベントを開催するのは、バードのバックグラウンドやライフスタイルを知ってもらうため」
 どこまで末恐ろしい青年なのだろう。そしてチェイスは、こんな話も聞かせてくれた。
「昔の話で自分で見たわけじゃないんだけど、僕のひいおじいちゃんはバーバーを営んでいたんだ。場所はノースダコタ。お店は有名なホテルのなかにあり、オリジナルのヘアトニックも作っていたんだって。これがサーファーとしてじゃない、僕が大切にしているもうひとつのルーツ」
 ガーデンにあるクラシカルなバーバーは、そんな時代に想いを馳せてデザインしたのだろう。同時にチェイスは未来を見据える。
「今後はシャンプーやボディソープ、そしてアパレルやボードショーツも作りたい。髪型を気にするようになれば、つま先まで気になってくる。そういうものでしょう?」
 そうだね、ミスター・バード。その背中の見えない翼は、まだまだ高く舞う力を秘めていると感じるよ。

Blue. vol.60 掲載

オフィス裏にあるバーバー。夏は月一でイベントを開催し、その日はなんとフリーヘアカット。

クラシカルなバーバー店内。ルーツへの想いが宿る。

オフィスの一画。ミッドセンチュリーが好きなチェイスだけにインテリアのセンスも抜群。

このパッケージに見覚えのある方も多いのでは?

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