2019.01.30

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

薄肉ラーメン構造とRCとLVL木で、スペースを最大限に活用したガレージ

限られたスペースにおいてはいかに無駄を省き、良いスタイリングで使い勝手の良い空間にできるかは、建築家にとって腕の見せ所である。事務所、アトリエ、ガレージを兼ねた、一級建築士 中村高淑氏の自邸に迫る。

 愛車であるポルシェ・911とスズキ・GSX1100Sが収まる、1階ガレージ部分。クルマを外に出せば、イベントスペースとして使うことも可能。

 隣に建つのは、ミシュランガイドにも掲載される人気のフレンチレストラン「ヴェルヴェンヌ」で、こちらも中村氏が設計している。折れ戸タイプのガレージドアはオーダーメイド。間口は一間半。ほかのドアを使った一般的な構造では、もっと狭くなってしまうことだろう。

 その土地がどれほどのサイズであったとしても、その場所を最大限に有効活用し、快適な生活をカタチにするためには、建築家の経験とスキルと、そして何よりもセンスが重要であり、見せ所でもある。今回伺った建築家・中村高淑氏の自邸は、約54㎡の敷地に建てたガレージハウスであり、そこには自身の事務所、陶芸家である奥様のアトリエ、そして住居がすべて詰め込まれている。そのこだわりや工夫とはいったいどのようなものなのだろうか。

 建築面積は約32㎡で地上3階建て、延べ床面積は約95㎡、短辺スパンはわずか2.77mという中村邸。これらの数字を見ただけでも、かなり入念な計算をしないと、ガレージ付きの住まいを建てるのは難しいことがわかる。間取りとしては、1階どちらも81年式のポルシェ・911とスズキ・GSX1100Sカタナが収まるガレージ、その奥に建築事務所スペースが置かれる。らせん階段を使って2階へと昇ると狭さを感じさせない、むしろ広々としたダイニングキッチンが待ち構えていた。ガレージの上部にあたるこの場所は、ガラス窓が大きいために解放感がある。さらには陶芸のためのアトリエも用意されている。3階はベッドルームやバスルームなどのプライベートスペースとなっている。

 建築家の自邸らしく細部まで徹底的に計算されており、狭小ならではのポイントを数え上げればキリがないのだか、このガレージハウスの一番の見どころはその構造にある。1階部分がRC造、2,3階をLVL木造とした"薄肉ラーメン構造"を用いているのだ。これは耐力壁や柱型梁型を使わず、フレーム枠にした構造体により強度を持たせるもので、大空間を実現できる手法なのだ。さらには、2階部分の外面に接する部分は大きなガラスを使った出窓とすることで、解放感を持たせているうえ、ちょっとした荷物などを置いたり、パーティやイベント時には腰かけることもできるようにされている。

 さらに注目ポイントとしては、キッチンやクローゼットが可動式とされていることだ。キッチンというのは家の中での存在感がある。移動することなどできないものと考えるのが一般的だが、中村邸は違っていた。キッチン下にキャスターを設けていたり、配管をフレキシブルタイプにしたりすることで、例えばワークショップやハウスパーティを開催したときには、キッチンを移動してレイアウトを変更することができるのだ。

 実際に20名ほどの客人を招いたこともあるそうだ。それと同様にベッドルーム脇に置かれたクローゼットも、仕切りとして使ったり、ウォークインクローゼットのように使ったり、部屋の隅に寄せてフロアを広く使ったりと、レイアウトを楽しめるようになっている。これらは総じて、先述した薄肉ラーメン構造により、わけ隔てのないワンフロアを実現させていることによる部分が大きい。

 狭小地であることを逆手に取り、楽しみながら、ライフスタイルを充実させることができるような工夫があちらこちらにちりばめられた、建築家の自邸。狭小ガレージハウスのさらなる可能性を見つけられたような気がした。

特殊な工法で空間を稼ぐ

これが中村邸で取り入れた最大のポイントとなる薄肉ラーメン構造。さらに扁平(薄肉)な柱と梁とすることで、柱型や梁型が室内側に出っ張らない構造とした。

ガレージの床はフローリング材が使われている。ガレージ部分とその先で異なる色を使い、区別している。

いつでも乗ることができるように、装具はバイクのそばに置かれている。

コンクリート打ち放しと大きなガラス窓で、モダンなショールームスペースのようなスタイルのガレージ。シンプルにまとめられており、クルマやバイクとの相性も良い。

2階に上がると、狭さをまったく感じさせないダイニングキッチンが現れる。構造体であるLVL木の外側に出窓を設置することで、一階よりも広い印象を受ける。

ダイニングキッチンは、アイランドキッチンとテーブルを一体として利用することで、20人程のパーティが可能。

ガレージ奥に位置する中村氏の事務所兼作業場。ガレージ脇に打ち合わせスペースも設けられていた。

なんとキッチンは移動可能になっている。これも狭小ならではの工夫。

奥様が使用する陶芸のアトリエ。ここから素敵な作品が生まれる。

プライベートスペースである3階は、ベッドルームからバスルームまでワンフロアでまとめられている。写真中央の仕切りは可動式のクローゼットで、レイアウト変更が可能なものだ。

解放感があって、まるで露天風呂に入っているかのようなバスルーム。昼夜問わずリラックスできる。

text & photo:Dan KOMATSU
媒体:ガレージのある家 37

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