2019.01.23

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

SLIDER TOUR SKATE TRIP TO OKINAWA

ある意味、旅とスケートボードは似ている。好奇心や初期衝動に駆られて動くことから、新しい何かへと繋がってゆく。テールを叩く――。酸いも甘いも最初の一歩を踏み出さなければ始まらない。2017年2月下旬、基地問題などで揺れる沖縄へ。眩しい太陽の姿は拝めなかったが、温かい交流には恵まれた。ツアーのお供はもちろん、ザ・ブルーハーツ。

各々が感じた"沖縄"は、ただ"南国"のひと言では済まされぬリアリティに溢れていた。

 南国とはいうものの、2月の沖縄はそれなりに寒い。年間平均気温は23℃とのこと、同時期の本土を思えば明らかに暖かいし、旅の初日に那覇に降り立って空港から出た瞬間には、亜熱帯気候特有のもわっとした湿度とツアーへの高揚感が相まって一旦半袖になってみたりもするのだが、やはり2月という時期はそれなりに寒い。

 もちろん日中太陽が出ていればレンタカーの車内で冷房をつけてしまうほど暑いこともあるし、それはこの時期に本州で凍えそうになりながらスケートをする普段のことを思えば大変贅沢な話なのだけれど、日が暮れてくる頃には現地で生活している人たちの着込み方が一番正しいことにも気づき始める。 

 海からの風も強く、実際の気温よりも体感的に寒いということもある。沖縄観光のハイシーズンのピークはおそらく夏だと思われるが、春を迎えるひとつ手前のこの時期の観光客も、実は多い。卒業旅行の学生や、何かしらの転機を目前にした、ひと休みの人々も多い季節。近年はLCC各社の参入によって沖縄へのフライトは他の国内旅行と比べてもかなり気軽なものとなっていることもある。

 いわゆる沖縄らしい旅、例えば多くの人々の憧れる青い空に青い海を思い切り満喫したいのであれば、2月はまだ少しだけ早い。海に入っている人々もいるにはいるが、しっかりとウェットスーツに身を包んだサーファーかダイバーがほとんどで、あるいは運良く真夏日に海沿いに居た人が、高まって飛び込んでいるかもしれない程度である。

 沖縄には「うりずん」と呼ばれる季節がある。冬が終わり、緑が芽吹き潤い始める頃。春と初夏が合わさった様な、沖縄独自の季節感がある。かつて10代後半から20代前半までの7年間、那覇に住んでいた僕はその「うりずん」の頃が一番好きだった。沖縄の1年間の中でも、最も爽やかで気持ちの良い季節だと思っている。具体的にはざっくりと2月から4月頃を指すらしい。ゴールデンウィークが終わる頃にはもう梅雨がくる。真夏になると太陽はあまりにも激しく、炎天下でのスケートには身の危険を感じることすらある。

 暑いけれど穏やかな「うりずん」の、2月はちょうど始まりの季節。数年ぶりに帰ってきた沖縄は、ちょうどそんな季節の変わり目だった。スケートボードの旅としては、この時期の沖縄はひとつの正解だと思う。極寒の中での撮影が多く、スケーターもフォトグラファーもみんながつらいこの時季に、少しでも暖かい場所に居られるのは幸せだし、真夏ほどの南国感がない分、落ち着いた沖縄での日常を過ごせる。

 そもそも今回の旅の発端は、自分が最近各地を巡回している写真展示の沖縄編だった。自分にとっては久々に帰る第二の故郷的な土地であるということもあり、少しゆっくり長めに過ごそうと日程を組んでいたところに、数名のスケーターが送り込まれて来たのだった。密かな個人的休暇の企みは見事に破れたものの、長期の滞在先でスケートボーダーを撮れることの方が事実自分にとってもありがたかった。

 ツアーメンツは独特で、とにかく急遽集まったにしてはあまりにも濃かった。最近都内に潜伏しているスーパースキルフル上井 陵と、名古屋在住で都内での長期滞在から帰る間もなく新たな旅に駆り出された重藤悠樹。そして、現在どこで何をしてるのかというか、むしろスケートしてないんじゃないかと思われていそうな"DESHI"こと大本芳大。

 重藤とDESHIという、明らかにスポットの好みが重なりそうなふたりが揃うあたりも、ある意味異質な組み合わせだった。DESHIに至っては今回の旅が弊誌『SLIDER』で記事になるということすら、ほとんど知らせぬままに自分が無理矢理呼び寄せた感もあった。もしかしたら「撮影したくない」とゴネる可能性も考えたが、その心配はすぐに消えた。大阪からは沖縄にスケーターが集まることを察知していた春田真佑も合流。それに加えて、そもそも現地に住んでいる沖縄を代表するスケーターの何名かも、毎日誰かしらが入れ替わりで現れてくれた。

 スケートボーダーの旅というものは、一般的な「旅行」と比べてみると明らかに様子が違う。だいたい正午前に集合し、コーヒーをゲットし、腹ごしらえをしつつスポットに向かう。1日2,3のスポットを巡り、夜はどこかしらに集って酒を飲んだりする。ある意味ものすごく「普通」に過ごす。観光客向けの店ではなく、地元の人たちが普段行くところに行く。旅先ということで多少浮き足立ってはいるものの、基本的には普段の生活と同じように過ごしている。

 一般的な観光客が訪れることはまずありえないようなジャングルやダムにも、わざわざ行く。いわゆる観光地は稀に前を通りかかったりする程度で、車での移動の間は皆それぞれに景色を眺めたりしている。スケーターの旅の視点は、いわゆる旅行とはきっと異なる。スポットに行って撮影をする、というのはスケーターにとって決して珍しくはない日常生活の中での慣れた一行為である。

 地元を離れた、旅という物理的非日常の中でも、そこでの数日間に繰り返している大部分は、自分たちにとって生活感のある行為だ。ポジティブもネガティブも、すべてが含まれる「生活」という姿勢と視点。その中で各々が感じた「沖縄」は、ただ「南国」のひと言では済まされぬリアリティにきっと溢れていたのではないだろうか。

Yuki Shigeto(重藤悠樹)

愛知県小牧市出身のシゲこと重藤悠樹。玄人を唸らせる職人肌のオールラウンダー。
悪天候にみまわれながらも、集中力を欠くことなくイメージ通りの滑りを体現。

通称"首里城バンク"と呼ばれる、沖縄のクラシックスポットにて、Fs180リアグラインドをフェイキー抜けで決める。
タイトバンクにアジャストさせる適応能力はピカイチ。M×M×M Skateboardsよりプロモデルをドロップさせたばかりの、遅咲きプロ。

Ryo Kamii(上井 陵)

埼玉県本庄市出身のリョウこと上井 陵。性格を反映した、肩の力が抜けた滑り方が特徴的。
新鋭デッキブランドであるSLDにジョインし、業界に新しい風を吹かせる立役者のひとり。

サーフィンの有名スポットにて、強風にあおられるも流石のスキルでなんとかメイク。いつもはポーカーフェイスもこのときばかりは少し強張る。
ダイナーでのオフショットは、沖縄ではお馴染みのA&Wにて。ルートビアはお口に合わなかったとか。

Deshi(大本芳大)

愛媛県出身、現在住所不定のデシこと大本芳大。
SKATE ATOMというフォトグラファー、フィルマー、スケーターで構成される自由型ユニットの中心人物。
Carhartt WIPのライダーとしても活動し、国内外からの注目を集める日本人プロ。

SKATE ATOM主催の写真展 "川"に参加するために、苗場からフラッと沖縄に訪れるも、半強制的にスケートトリップに参戦させられたてしまったデシ。夜の国際通りのはずれにて、ウォーリーからのテールスキッドを見事にクリア。これもまた神の思し召し。流れに身を任せる like a 川。

今回のスケートトリップのハイライトといっても過言ではない、バンクからのポールジャム50-50。ほぼ90度に立ったレールに当て込んでからのFs 50-50。沖縄特有のスポットに、新たな名を刻んだ重藤悠樹。

高知県出身、大阪在住のハルこと春田真佑。今回のスケートトリップの最終日に合流し、海沿いのドックスポットにてBsスミスグラインドをカチ込む。旅先では、人もスケートスポットも一期一会。決定的瞬間を閉じ込める。

オスプレイがけたたましい音とともに頭上に飛び交う中、輪切りの円柱クウォータースポットにて、Fsノーズグラインドのリエントリーを完璧メイク。重藤悠樹の真骨頂とも呼べる、悪条件でのパフォーマンス。

アメリカ軍基地のゲート前にて、小雨の中Bsノーズグラインドを決める上井 陵。
基地問題の是非を問うのではなく、文化で結ぼうという試みなのか。交通量の多い大通りに面した基地の入口付近は、妙な静寂に包まれていた。日常と非日常が交わる瞬間。

text & photo:Shinsaku ARAKAWA
媒体:SLIDER vol.30

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