2018.03.15

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

一億円のプライスタグがつく、黒い宝石「ヴィンセント」をカスタム

1950sにトップレーサーとして鳴らし、Vincentのディーラーとしても尽力したMarty Dickersonが所有していたエンジンを搭載する“血統書付き”の黒い稲妻。 彼もまた伝説の海パンレーサーRoland"Rollie" Freeと共にAMA Motorcycle Hall of Fameに殿堂入りするレジェンドだ。

芸術と稲妻。

 H-Dカンパニーが唯一公認とするブロンズスカルプチャー・アーティストJeff Deckerは、ヴィンテージバイクやヒストリックカーのコレクターとしてもお馴染みだが、彼は非凡なカスタムバイクのプロデューサーでもある。このVincentを見れば、それは一目瞭然である。
 
 ベースマシンは1949年式のBlack Lightning。2018年の1月にはBonhamsで92万9,000ドル(約1億円)で落札されたことでも記憶に新しい。黒い宝石と呼ばれるVincentのモデルの中で、ことさら二輪史に名を残すこのレーサーを論ずる前に、1948年に登場した世界最速の市販車であるBlack Shadowのプロフを紹介したい。

 フィリップ・ヴィンセント率いるVincent社の北米進出の架け橋になったのは前項でも紹介したSeries-B Rapideだが、開発者フィル・アーヴィングは、チューニングエンジンを搭載するBlack Shadowという派生モデルも用意した。ハイリフトカムと専用ピストンが組み込まれたホットなエンジンのみならず、既存のBrampton製ガーダーフォークから自社開発の高性能Girdraulicフォークを採用したSerise-C Black Shadowは、Serise-B Rapideの45馬力を遥かに上回る55馬力を発揮、最高速度も120mph超を記録している。そのエンジンは黒い塗装で差別化され"世界最速"の市販車両の象徴とされた。

 ジェフが手がけたBlack Lightningは、1949年にそのBlack Shadowをベースに開発された市販レーサーで、170kgの車重で最高速度150mph(時速240km)を叩き出したスペシャルモデル。ちなみ同時代のH-DのフラッグシップであるHydra-Glideの販売価格750ドルに対し、Black Lightningの販売価格は1500ドル(!!)。性能の差も歴然だが、そのプライスも桁違いだった。

 世界中で数多くの輝かしい戦歴を残すBlack Lightningだが、1948年9月13日にユタ州ボンネビルのスピードトライアルでの快挙は白眉である。AMA Class-CやDaytona200で活躍した実績を持つローリン・フリーが、かの塩湖を海パン一丁で走らせた"黒い稲妻"は、150.313mph (時速241.905 km)という世界記録を樹立している。
 
 1949~54年の間に約20機しか製造されなかったレーサーと、ブロンズスカルプチャー作家の感性が合致したVincent。兼ねてよりJeff Deckerと深い友好を持つ滝沢伸介ならではのアーカイブだ。

一片の贅肉も存在しない、研ぎ澄まされたフォルムに注目。ワンメイクのナロードタンクと申し訳程度のフェンダーで、エンジンの存在感が際立っている。ブレーキやクラッチに連動するワイヤー類は存在しない。全て機械式のリンケージで制御される。英国Smith製の大径スピードメーターも、Vincentを象徴するディテール。

1949年式のSerise-Cには、元来Vincentの代名詞となる鋳造ジェラルミンのガードローリックフォークが標準採用されたが、Jeffの好みはSerise-Bまで採用されていた華奢なBrampton社製ガーダーフォークのようだ。フロント&リアに配された伊ボラーニのハイショルダーリム。無数に開けられたスピードホールが圧巻! 参考までに変速は左グリップのハンドクラッチと、ミッション右側に伸びるレバーによるジョッキーシフト。セルスタートオンリーで始動は良好とのこと。

カメラマン:Kentaro Yamada
テキスト:Gonz (満永毅)
媒体:ROLLER magazine vol.18

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