2019.02.04

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

「クマノミ繁殖の愉しみ」

クマノミは、海水魚では数少ない繁殖が楽しめる種類。だがそう簡単にはいかず、さまざまなノウハウが必要だ。手間をかけた分、稚魚が丈夫に育ったときの感動はより大きい。クマノミのかわいい家族を殖やしてみよう!

Point 1「繁殖を目的とした最適な飼育システムを考えよう」

カクレクマノミの繁殖用水槽。いくつかの産卵場所を提供し、高いろ過能力で水質を安定させることが重要となる。

 クマノミを問題なく飼育することができたら、次にブリーディングに挑戦してみてはいかがだろうか。中でもカクレクマノミは、比較的繁殖させやすい種類。ペアをつくって産卵させ、稚魚を育成する作業には、ほかの海水魚では味わえない楽しさがある。

 繁殖を目的とするなら、親となるペアを落ち着いた環境で飼育しなければならない。ここでは、参考例として「ビーボックスアクアリウム 松戸店」の坪田さんに、理想的な飼育システムを提案してもらった。

 幅60㎝の水槽に、カクレクマノミのペアを収容。まず、ろ過は底砂を厚めに敷いた底面フィルターと外部式フィルターの併用で、充分なろ過能力を発揮させ、水質の安定を図っているのが特長だ。親魚に充分な栄養を与えることが大切で、給餌による水の汚れに対応できるよう、強力なろ過システムを構築したほうがよい。

 また、産卵場所をいくつか用意。塩ビパイプや素焼きの土管、ライブロックも、産み付けやすい形状のものを効果的に配置している。クマノミは最も好みの場所を選んで産卵してくれるはずだ。産卵前には産み付ける場所の掃除が始まるので、水温は25~28℃をキープする。さらに、水槽の両側面にも黒いバックスクリーンが貼られているのは、なるべくクマノミにストレスを与えない心配りだ。観賞しない間は正面も黒い布などで覆ったほうがよいという。

選べる産卵床2種類。塩ビパイプと素焼きの土管。素材の違いによって、クマノミの好みが分かれるようだ。

ライブロックにも産卵することが多い。平らな岩に角度をつけて配置することで、上の表面と下の表面、どちらか好きなほうを選べるように。

Point 2「ペアを成立させなくては何事もはじまらない!」

ハタゴイソギンチャクに寄り添うようにして生活している、カクレクマノミのペア。イソギンチャクと一緒に飼育すると、ペアリングしやすくなる。

 繁殖の第一関門はペアづくり。オスとメスがうまくペアになってくれなければ、産卵は始まらない。天然のペアを導入する方法もあれば、個別の個体をペアリングして繁殖を目指すこともできる。確実性が高く、すぐに繁殖のチャンスがあるのが天然ペアだが、自分でペアリングさせるのも楽しい。

 しかし、ただ単にオスとメスを水槽に入れれば、必ずペアになるとは限らない。ペアリングは相性が重要で、どの個体を選ぶかが大切になる。同じようなサイズや色柄の個体を選ぶよりも、まったく違う個性を持った個体同士がよいようだ。できれば5~6匹ほどサイズの異なる個体を入れて、ペアリングさせるのが理想的だ。天然ではメスがかなり大きく、オスは小さめ。もしオス同士であっても、大きい個体が性転換し、自然とメスになっていく。ペアになれば寄り添ったり離れたりしながら、並んでに泳ぐようになる。

 また、うまくペアリングさせるにはイソギンチャクを入れるのもポイントだ。数匹のクマノミの中から、2匹のクマノミだけがイソギンチャクを独占するようになったら、ほぼペアが成立。1匹のみがイソギンチャクを独占してしまい、ほかのクマノミが入れない状態になったら、ペアは不成立となる。その場合は イソギンチャクを独占した個体を残し、ほかの個体を導入して、再度ペアリングに挑戦しよう。

 カクレクマノミ以外では、ペルクラやクマノミ、ハマクマなどがペアになりやすく、産卵させやすい種類といえる。これに対して、温和なハナビラクマノミなどは、ややペアになりにくい傾向がある。

セジロクマノミのように入荷が少ない種類は、メスを先に導入し、後からオスとなる小さめの個体を加えるようにするとよい。

Point 3「早く産卵させるために必要な管理のテクニック」

 繁殖成功の近道として、まず最初に考えたいのが親魚の栄養状態だ。栄養が充分に行き渡っていて丈夫で健康なら、たくさんの卵を産んでくれるはずだ。親魚への給餌による栄養強化はとても大切な要素といってよい。

 主食となるエサのおすすめは冷凍餌料。乾燥のペレットなどの人工餌料も現在は性能がよく、単一のエサとしても非常に優れているが、繁殖を目指すとなると、それだけで高い成果を得るのは難しい。冷凍餌料の主成分はイカやエビなど、高タンパクのものがよい。日海センターではイカ、エビを中心にブレンドした独自の冷凍餌料を作り、販売も行っている。

 また、冷凍餌料の利点として、病気を持ち込むリスクが少ないという利点もある。冷凍餌料には水分が含まれているということも、魚体によい影響を与えるようだ。海水魚はエサから水分を摂取しており、冷凍餌料のように水分を含んだエサを与えることで、魚体も大きくなり、体力も向上する。さらにエサには不飽和脂肪酸やビタミン、ミネラルなどの栄養強化剤なども加え、親魚の健康状態を上げると産卵しやすくなるという。

 このほか、規則正しい照明の点灯も重要だ。睡眠は生物にとって必要不可欠なもの。魚が睡眠をとるためには、暗くしなければならない。その暗い時間と明るい時間の組み合わせが1日を作り出し、体内リズムを形成していく。照明のオンオフの時刻がバラバラだと、魚の体内リズムが乱れ、産卵は遠のいてしまう。やはり照明にはタイマーをつけて10~12時間、決まった時間に点灯させるようにしよう。

 日海センターオリジナルの冷凍餌料。イカ、エビを中心に、各種栄養素の強化剤や水分、液体を吸収する乾燥餌などが入っている。乾燥餌が入っていないイソギンチャク専用マリンサクセスも新登場。

市販の冷凍フードでは、キョーリンのホワイトシュリンプなどが栄養価が高くておすすめだ。

魚体の免疫力を向上させるラクトフェリンと、水質の浄化とアミノ酸などの優れた栄養分を魚に与えることができる、クロマジェルのセット。

Point 4「ふ化した仔魚の回収はとにかくやさしくていねいに」

岩に産みつけられたカクレクマノミの卵。状態のよい卵は濃いオレンジをしている。まだ産卵から日数が経っておらず、中には何も確認できない。

 カクレクマノミの場合、産卵の3日ほど前から産卵床の掃除が始まる。掃除とは、口で同じ箇所を突くような行動だ。その突いている場所が産卵予定場所になる。産卵床は岩や水槽のガラス面、パイプなどさまざま。この行動を始めたら、毎日そこに卵がないか確認しよう。産卵の時間は、消灯の2~3時間前となる。

 ふ化までの日数は水温30℃で約1週間、26℃で10~14日。ふ化までは、親が新鮮な水を送るなどの世話を行う。卵の状態を観察すれば、ふ化までの具合を把握できる。ふ化の約3日前くらいになると卵に眼が確認できるように。そこから徐々に卵の透明度が上がり、ふ化する日の朝になると、卵がキラキラして小さな魚の形がはっきり見えてくる。そうなれば、その晩にふ化がはじまる可能性が高い。

 ふ化した魚は人為的に回収しなくてはいけない。卵のふ化は消灯から約1時間後に開始。水槽内を覗いて仔魚が元気いっぱい泳いでいれば、ふ化の成功だ。もし数匹しかふ化していないようであれば、もう1時間ほど再び真っ暗にしてふ化を待ってみよう。

 仔魚の回収手順を紹介しよう。ふ化の兆候が明らかになった水槽では、水槽の消灯と同時にメインポンプを止め、代わりにエアレーションを軽く行い、すべての明かりを消す。仔魚には集光性があり、ライトなどで水槽の一部から光を入れるとそこに集まってくるので、その習性を利用してまとめて回収する。このとき、LEDのような強い直線的な光よりもやわらかな光のほうが仔魚が集まりやすい。

 ここで最も注意を払いたいのが、仔魚の採取のしかただ。できるだけやさしくていねいに扱わなくてはいけない。仔魚がどこかの壁面や、強い水流に当たるだけで、その後うまく生存できなくなってしまう。育成用の水槽を用意できる場合は、サイフォンの原理を使って、ゆっくり水ごと回収するとよい。別水槽が設置できない場合は稚魚育成ケースが重宝する。

 集まった仔魚をケースですくい、ケースは親魚飼育水槽にそのまま固定。水質変化などの心配なく、稚魚育成が開始できて便利だ。

透明になり、眼が確認できるようになったカクレクマノミの卵。ここまでくれば、消灯後にふ化する可能性が高い。

Point 5「生存率をグーンと上げる稚魚の育成プログラム」

ブラインシュリンプの卵。ベトナム産のものはふ化率が高い。

ブラインシュリンプの卵。ベトナム産のものはふ化率が高い。

 ふ化後3日までは「魔の3日間」とも呼ばれ、最も気をつけなくてはいけない期間だ。仔魚の回収が終わったら、育成槽には緩やかにエアレーションを施し、やや薄暗い程度の照明を24時間、常時つけておく。これは朝と夜の区別なく、常にエサが食べられるような環境にしておくためだ。真っ暗にしてしまうと、その時間にエサが食べられず、全滅してしまうこともある。

 稚魚に対しての管理は上記の表を参考にしよう。回収した稚魚にはすぐに最初のエサとなる生きたワムシを投入する。口が開き、エサを食べられるようになるまでは、ふ化から3~6時間かかるが、海産のワムシは飼育水中で生き続けるので、早めに入れておけば、すぐに食べることができ効率がよい。ワムシの量は多すぎても少なすぎてもいけない。

 エサが多すぎると酸欠になりやすく、少なすぎると栄養不足で死んでしまう。ワムシの量は1㏄に対して15~30匹を目安に、朝晩与えるとよい。この期間が最も重要な時期といえる。ワムシの栄養強化、給餌、水換えを12時間ごとのサイクルで行うと作業の効率がよいだろう。

 4日後には、沸かしたブラインシュリンプを与え始め、4週間目から冷凍コペポーダを与えよう。いずれも複数のエサを同時に与える期間をつくることが大切で、稚魚は成長に合わせて、エサを選んで食べるようになる。3週間はワムシやブラインシュリンプを与え、常にエサが食べられる状態にしておくが、4週間目からの冷凍コペポーダは食べ残さない程度に与えよう。この頃から稚魚が死んで減ってしまう場合は、水質の悪化が考えられるので、水質の測定や水換えを行うようにしたい。

 また、育成ケースでも水槽でも、最後まで飼育できる数には限界がある。それを超えると成長不良や水質の悪化などで全滅ということも。育成前からどれだけの数を育てられるか判断して回収することも、成功のポイントといえるだろう。その後、1カ月後には1㎝程度に成長し、人工餌料も食べるように。さらに2カ月もすると2㎝程度の安心サイズに成長する。

生きたワムシやブラインを栄養強化する培養ケース。3~12時間後、栄養強化されたものを給餌する。

text & photo:平野 威 Takeshi Hirano
媒体:AQUA Style 11

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