2019.04.01

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

小さな小さな稚魚を大切に育て上げる。「クマノミブリーディングレポート」

クマノミの繁殖には、さまざまなノウハウが必要だ。その考え方や方法は、飼育する人や環境によっても、大いに違ってくる。上手に殖やしているアクアリストをレポートしよう!

Report 01「創意工夫を施したシステムで 多彩な品種の繁殖を実践中!(大阪府・今中松雪さん)」

当初から窓辺で飼育している親魚水槽。現在はブラックスノーフレークと、ペルクラのペアを収容。

 以前のクマノミ特集号(11号)にも登場してくれた、今中松雪さん。さらにブリードを本格化させていると聞きつけ、再度伺うことにした。今中さんは、東大阪市の商店街にある理髪店「カットスタジオNAO」を経営しているが、店内はほぼ水槽に囲まれていて、一見、本職がどちらかわからなくなってしまうような雰囲気。店の半分が、まるで海水魚ショップのようになっている。

 2年前は親魚用水槽と稚魚用が2本並ぶだけだったが、親魚用の水槽だけで9本を管理するほど、本格的に進化していた。当時はカクレクマノミだけをブリードしていたが、現在ではペルクラやブラックオセラリス、ブラックスノーフレーク、プラチナオセラリスなどさまざまな品種の繁殖にチャレンジしている。

 前号では、カクレ以外のクマノミの繁殖を次の目標として語ってくれたが、実際、宣言通りにステップアップしている。しかもその拡大ぶりは半端じゃない。いかにクマノミの繁殖が奥深く、愛好者の心を引きつける強い魅力に気づかされる。

 今回の取材時には、ブラックスノーフレークの卵がぎっしりとライブロックに産み付けられていた。2匹の親魚は、代わる代わる卵を気にして、定期的に新鮮な水を送り込み、とてもけなげに世話をする様子を見ることができた。卵をよく観察すると、目の形がはっきり形成され、今晩にもふ化しそうな状況だという。

 クマノミの繁殖は、原種のカクレクマノミがもっとも行いやすく、改良品種によるブリードはなかなか成功しないといわれている。しかし、松中さんのところでは、ブラックスノーフレークの幼魚が各種サイズ違いで多数ストックされていて、定期的に産卵・ふ化させ、状態よく育成できていることがわかる。

 ただ、プラチナ系やピカソ系などの品種はとても難しく、産卵・ふ化しても仔魚が生育しないパターンがほとんどだという。取材をしたときには、頭部にまではっきりとした白が乗る稚魚は1匹だけが生存し、大切に飼育されていた。

 カクレクマノミの繁殖をはじめた当初から苦労をしたのは、仔魚の回収方法だと今中さんはいう。仔魚はちょっとした移動で驚くほど簡単に死んでしまうため、その取り扱いに悩んだ末、オリジナルの方法を編み出した。くわしい内容は公開できないのだが、要約すると、やわらかな光を当て、ごく緩やかに流れるサイフォンの原理を用いることで、自動的に仔魚が回収されるシステムだ。このスタイルを確立してから生存率がアップして、幼魚がたくさん採れるようになったという。

 稚魚の育成は発泡スチロールのなかに納められた専用のケースで行われている。弱いエアレーションを施し、ワムシを与えている期間は24時間小さなライトをつけ、水温がなるべく変化しないように管理されている。エサは自家培養したワムシとブラインシュリンプ、冷凍コペポーダを。親魚にはオリジナルの細かなミンチに、栄養強化剤を添加して与えている。

 各種そろっている親魚のペアは、いずれも体型が美しく、色柄もよい。また、親魚用の水槽はすべて窓際に設置しているのも特徴的だ。太陽光が入る環境が、自然のリズムを生み出すのに一役買っているのかもしれない。

新たに立ち上げられていた連結水槽。本格的なシステムで、まるで海水魚ショップのよう。おもに親魚を飼育している。

親魚水槽のサンプ。複数のろ材が小分けになって納めらている。

岩に産み付けられたブラックスノーフレークの卵。目がはっきりと確認でき、今晩にもふ化しそうな卵だ。

ふ化後、1か月程度が経過した稚魚。ここまで成長すればひと安心だ。

体側のラインがはっきり見えるようになってきた、ブラック系の品種。成長するにつれて徐々に黒みが強くなっていく。

充分に成長し、はっきりとした体色がわかるブラックスノーフレークの稚魚。1匹ずつ模様が異なり、それぞれの個性が光る。

ワムシにクロレラを添加する方法。ワムシを取った後の水を2つのプラケースに分け、片方にクロレラを加え、双方に何度か移し返して攪拌してから、培養ケースに入れている。

仔魚の回収に使用しているライト。強すぎないやわらかな光が適している。

Report 02「たまたま産卵したのをきっかけに、稚魚を育てる楽しみを知る(大阪府・T.Tさん)」

幅90㎝のメイン水槽。外部式フィルターを使った強制ろ過システムで飼育し、稚魚は隔離ケースで育てている。

 映画『ファインディング・ニモ』の影響で海水魚飼育をはじめたという、大阪府在住のTさん。選んだ魚はもちろんカクレクマノミとナンヨウハギだ。その個体は現在も大切に飼育されている。当初は45㎝キューブ水槽からスタートし、2年後には現在の90㎝水槽にランクアップした。同時にショップで見かけたブラックオセラリスに一目惚れし、ペアを導入。その後、ハタゴイソギンチャクも入手して、クマノミとイソギンチャクの共生を楽しんでいた。

 それから数年何事もなく、安定した水槽を維持管理していた。それが今から約6か月前のこと。ブラックオセラリスのペアが、急に卵を産んだのだ。とくに繁殖をめざして飼育していたわけではなかったが、産んだ卵をケアする魚を見ているうちに、ブリード魂が芽生えたようだ。そこから、さまざまな情報を仕入れて、稚魚の育成までをめざすようになったという。

 はじめに卵がふ化したときには100匹程度をすくい取り、専用の隔離ケースで育てた。現在は80匹ほどが順調に成長している。はじめてで、なおかつ繁殖を狙ったわけではないのに、かなり高い生存率を誇っているのがすごい。

 その後も、親のブラックオセラリスは2回卵を産み、同じようにふ化させて稚魚の育成を行っている。「ブリードは手間がかかって大変ですね。でも、できる限りのことはやってあげたい」と語るTさん。元来生きもの好きで、飼育のセンスに長けているのだろう。無理なくクマノミなどの長期飼育を行い、難しいといわれる繁殖まで成功させた。殖やしたクマノミは、ご自身が経営する会社にある水槽や学校などに分ける予定だ。

ケースで育成されている稚魚。3か月ほど前にふ化した魚たちだ。

小型水槽に移されたブラックオセラリスの稚魚。団子状に固まって泳いでいる。

稚魚用のワムシを培養。稚魚はワムシさえ食べてくれれば、その後の育成は比較的簡単だという。

text & photo:平野 威 Takeshi Hirano
媒体:AQUA Style 11

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