2019.03.08

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

基礎知識から最新機種まで「水槽照明の最先端LEDからはじめよう」vol.1

マリンアクアリウム市場でここ数年、最も活発な動きを見せているLED照明ジャンル。日進月歩のスピードでさまざまな最新技術が盛り込まれた機種が続々とリリースされている。そんな奥深いLEDの魅力やこれから水槽を立ち上げる初心者のための初歩的なギモンと最新機種をご紹介する。

Theme 01「LEDの基礎知識を知ろう」

 もともとは、アクアリウムの照明といえばいわゆる蛍光灯がスタンダードで、ミドリイシ類などより明るい環境を求める種類にはメタルハライドランプを使用した水槽システムが長きの間、スタンダードだった。しかし近年は多くのLED製品が各社からリリースされ、小型でシンプルな設計のものからパソコンやスマホで照明の設定を細かく操作できる最先端のモデルまで幅広いラインナップを誇るまでに至っている。

 これはアクアリウムに限った話ではなく、街を見渡せば信号機に自動販売機、車のヘッドライトや家庭用の照明に関しても蛍光管やHIDランプからLEDに様変わりしていることはみなさんもご存じだろう。そもそもLEDとはどんな照明なのか。国内のアクアリウムLEDのパイオニア的存在、グレッシーレディオシリーズの開発・製造・販売を手掛けるボルクスジャパンの西岡滋郎代表に話を伺った。

クリップ式LEDのパイオニアブランド、ボルクスジャパンの西岡滋郎社長。

――LED照明の光る仕組みやこれまでの蛍光灯や白熱灯、メタルハライドランプとの違いを教えてください。
 LEDとは発光ダイオードと呼ばれる光る半導体の頭文字をとってつけられた名称です。電気を通す金属などが導体、ガラスなどの電気を通さないものを絶縁体、その中間の半導体に+と-の電気をぶつけることで光りを得るのがLEDの原理です。

 白熱灯は電気を流して金属のフィラメントという部分を高温に熱して光にします。蛍光灯は管の両端に取り付けたフィラメントを熱して、飛び出したマイナスの電気が筒の中の物質にぶつかる時に光がでる仕組みです。メタルハライドランプは、ガラス管内に添加封入した金属のハロゲン化物をアーク放電により発光させる仕組みです。そのため、LEDはほかの照明とくらべて発熱量が少なく、またLEDの発光効率が優れているのは、電気から直接光を取り出せるからです。

――アクアリウム照明におけるLEDのメリットとデメリットをそれぞれできるだけ具体的に教えてください。
 最大のメリットは、省エネ性能ですが、アクアリウム照明としては、技術の進歩により様々な色を選べる環境が整ってきましたので、使用する環境や生体に合わせたLEDを選択して組み合わせることが出来ることでしょう。他の光源では選択肢が狭く単一の波長を選択することができません。しかし、環境に合わせて選択しないと大きなデメリットにもなってしまいます。LEDではサンゴが溶けるとか水草が育たないなどの弊害は、目的に合ったLEDを選択していないからにほかなりません。

――LED照明の説明にでてくるスペクトル。これってどんな意味ですか? 初心者の方にもわかりやすく教えてください。
 スペクトルとは、光りの波長成分の強さの分布です。ニュートンがプリズムを通した太陽光が赤,橙,黄,緑,青,紫の色光に分解されるのをスペクトルと名付けたのが最初です。

――波長や明るさを示すグラフの見方がわかりません。分かりやすく見方を教えてください。
 波長は、空間を伝わる波動の周期的な長さのこと。グラフが示すところは、波長を色の種類と考えていただくと分り易く、どの色がどれだけ含まれているかを示すグラフとなります。波長はnmの単位で表され、人が見える光の範囲(可視光)は大凡400nm〜780nm範囲です。すべての可視光が合わさると人の目には白色に見えます。

 白色を評価する項目では色温度がありますが、色温度は火や熱で金属を加熱した時に温度で決まる発光色を定義したもので、性能を評価する項目ではありません。

 明るさを示す単位にはルーメン(lm)1点から発する光の総量、ルクス(lx)は、照らされた点の明るさです。ランプの能力評価にはルーメン、明るさ評価にはルクスで表記されるのが一般的です。ややこしいのは人の目の見え方の違い(比視感度)で補正されますので、白色のための単位でもあります。JIS規格で正規に表記される値は、補正された値となります。この場合、人の目に見え難い青色が混じるとルーメン値やルクス値は、補正されるため白色に比べて小さな値となります。

 また、光合成に必要とする光を表す単位に、光合成光量子束密度(PPFD)があります。どのような光でも光合成が起る訳ではありません。光合成が多く行われるためには光の「質」と「量」が大きく影響するのです。光合成光量子束密度(PPFD)は光合成に必要な光の「質」を表す単位です。当社のHP掲載データでは、光の質「PPFD」、光の量「JIS照度(JISで定められた値)、簡易照度(比視感度補正なし)」を掲載しています。

――波長について。最新の研究でわかってきたサンゴの蛍光タンパクに必要とされる様々な波長成分ですが、ワット数によるサンゴへの影響に違いはありますか?
 白熱灯由来のW数で明るさを評価されるのとは少し違いが生じます。白熱灯や蛍光灯はワット数が大きいほど明るく光ります。同じ種類のランプ同士の比較で、20Wの蛍光灯が30Wの蛍光灯より明るいということはありえません。しかしLEDの明るさはワット数+発光効率+レンズの特性で決まります。LEDは日進月歩でどんどん発光効率が上がって明るくなっています。また、全体に散らばる光を必要な部分に集めると集めた部分は数段明るくなります。どんなLEDを使ってどう集光するかで、明るさが決まりますのでややこしいですね。

 サンゴなど褐虫藻への波長についてもさまざまな意見があり、光以外の影響も加味しないとならないところが難しいところですし、またこの趣味の面白さではないでしょうか?

――LED照明を水槽にセットする場合の適切な水面との距離はありますか?
 弊社LeDioRS122シリーズなら水面から30㎝〜40㎝を標準としています。高さ30㎝の時30×30㎝、40㎝の時45×45㎝を照射できるように設計しています。

――近年、ユーザーから求められる声はどんな意見が多いですか?
 設置方法に関わることが一番多いです。

 ①「眩しさ」:視線が低いと眩しい。
 ②「選択」 :水槽サイズに必要な数量や設置高さなど
 ③「調光」 :調光する方法などです。

――今後のRX122シリーズやそのほかの新製品の開発状況を教えてください。
 グラッシーシリーズ累計50,000台到達記念に420nmを搭載した限定謝恩モデル「RS122C」を7月発売、次にRS122フルモデルチェンジの新シリーズとしてRX122を準備しています。072の5種類と同様のラインナップですべてにUV素子を搭載し、これまでの集大成として満足できるスペクトルの仕上がりになっています。

 さらに調光タイマーをスマホやiPhoneで操作できる機能をオプション搭載しています。電波法の認証試験が終わる9月頃に発売予定です。

 その他据置型では、60W級の2chタイマー内蔵型の「エッジ」、150W級の6chスマホ制御の「ソラーレ」の開発を行っています。日本製コンセプトモデルの「キューブ」の開発は完了しています。アプリ開発中ですが社名検索すればダウンロードできますよ。

2016年3月に発売されたRXシリーズ。シーンに合わせたスペクトルをテーマに、ユーザーニーズにさらに応えた展開を行っている。

累計生産台数5万台達成を記念に製造された、特別限定モデルRS122c。厳選した素子を採用した上級モデル。

Theme 02「ハイエンドユーザーレビュー」

さまざまな飼育システムに挑戦する、自他ともにサンゴ飼育マニアでもある高野貴士さん。

 本誌『コーラルフリークス』でもお馴染みの、LEDで状態よくミドリイシを管理しているハイエンドユーザーに、アンケートにお答えいただき、ご紹介する。飼育の参考になれば幸いだ。まず登場いただくのはアクア環境システムTOJOの社長であり、本誌でもレポート執筆中の高野貴士さん。自身も骨太なアクアリストで、さまざまなシステムの経験も豊富なので回答いただいた。

――現在の水槽システムで使用しているライトの種類と使用歴を教えてください。
高野 Radion G3 Pro×2・9h点灯、Radion G3×2・9h点灯、バイタルウェーブ7w、バイオレット・6h点灯の他にそれぞれ補助光として2hほどスーパークールのコバルトブルー×3、マリンブルー×3も点灯しています。

――これまでの照明使用キャリアを教えてください。
高野 もともとはメタハラの多灯でスタートしました。これはほとんどのミドリイシキーパーと同様にエムズワンのMT250コーラルグロウに、スーパークール115やシエロを使うかつての王道スタイルです。その後、T5メインのスタイルでATI Sun power 54w×8・ギーゼマン 54w×8を経て、LEDをメインにするスタイルに移行しました。

――現在のLEDでの細かな設定を出来るだけ具体的に教えてください。
高野 Radionの設定(ピーク時)はUV85%、ロイヤルブルー95%、ブルー100%、クールホワイト60%、グリーン65%、ハイパーレッド75%にBrightness(明度)90%、Cloud Probability(くもり)10%、Storm Probability(かみなり)0%となっています。

――1日の点灯時間はどれくらいですか?
高野 Radion G3 Pro×2が9h点灯(16:00〜25:00)、Radion G3×2が9h点灯(16:00〜25:00)、バイタルウェーブ 7wバイオレットは6h点灯(18:00〜24:00)です。補助のスーパークールは2基ずつを2時間ずつ時間差で点灯しています。

――LEDに変えてからのそれぞれのサンゴの変化を教えてくさい。
高野 もともとはメタハラ多灯で育成していたSPSですが、Zeovit導入を機にT5に変更しました。しかし、発色が鈍くなったため、補助光としてスーパークールやグラッシーを隙間から鋭角に差し込んでみたところ、点灯時の色上がりが明白だったため、T5(54w×8)とスーパークール6灯でしばらく維持。その後、KR93SP×2とスーパークールに変更したところ、この時の色上がりは顕著でしたね。特にスパスラータのグリーン、パープルの発色が見事に上がりました。Zeovitでスパは厳しいのか?と疑問視していたところだったので、この変化は感動でした。

 ただ、メタハラが当たっている時間帯がピークなので、やはり光量がまだ足りていないと実感し、Radion G3 Proを試しました。使い分けてみての感想としては、個体が密集していたり、Zeovitで管理している水槽、強光障害によるダメージを受けそうな個体は、KRがまんべんなく光を届けてくれるので理想的でした。そして、スパスラータなどの強い光を必要とする個体はやはりRadionですね。ただし、Radionなどの小型LEDは影が出来やすいので個体を密集させている場合はスポットによる補助光が欲しいと感じます。私の場合はスーパークールで補いました。

――メタハラやT5と比べてのLEDのメリットやデメリットは何だと思いますか?
高野 LEDのメリットはやはり何といってもランニングコストの安さですよね。メタハラの発熱や電気代には10年以上悩まされましたから、システムLEDの普及は我々SPSキーパーとしては嬉しい限りです。ただ普及当初のLEDはチラつきも多く、また影が出来やすいので、個体差による向き不向きがありました。実際に維持できない個体や色調も明白だったと思います。しかし現在ではLED素子の進化もめまぐるしく、システムLEDでキープできない個体(SPS)は無いと思います。

 となると、LEDに残されたデメリットは影の出来やすさだと私は個人的に思っております。実際に個体を密集させている方の多くは、スポットLEDやスーパークールなどの補助光を未だに兼用されております。広角レンズを採用しても、光源が狭いので結局のところ解決できません。そのためどうしても照明の多灯になってしまうのが課題ですね。その点、T5は水槽内をまんべんなく照らし、影も出来にくいので、多灯を好まれない方にはお勧めですが、私にはどうしても気になる2つのデメリットがT5にはございます。ひとつは水の揺らぎが表現しにくいこと。もうひとつはSPSの発色がぼけやすいことです。

 ただ、色についてはZeovitなどの超低栄養塩環境により発色を引き出すことが出来れば問題ではないので場合によりますね。しかし、球の交換を含めてランニングコストはそれなりにかかります。また、LEDの特徴として細やかな設定が出来ることがあげられます。私は関心があるので、様々な設定が個体に与える影響を日々観察しており、この設定機能をメリットととらえておりますが、あまり機械が得意でない方にはとても面倒な機能なのかもしれません。ここはメリット/デメリット表裏一体といったところでしょう。

――LEDに合った種類、合わない種類などありますか?
高野 最近、Radionのみを点灯し、その他の補助光(メタハラなど)を使用せずにSPSを3ヵ月ほど維持したことがありました。多少の成長の遅れはみられましたが、スパスラータもストロベリーのシアンもまったくそん色なく維持することが出来ました。昨今のシステムLEDであれば、カバーできない色調、個体種別は無いと、私は思います。ただ、多くの方の水槽を拝見する中で、LEDの出力不足で色がくすんでしまっていたり、逆にLEDは直進力が強いことから、局地的に強光障害を起こしている個体を見かけることはいまだにありますね。

 キーパーさんが日頃からそれぞれの個体の変化をよく観察し、LEDの設定や個体の配置をこまめにケアしてあげることで、LEDのみでもサンゴの最高のパフォーマンスを引き出すことが出来ると思います。

高野さんの現在のスタイル。ラディオンG3をメインに、スーパークールを補助に使用。

日本でももっとも有名な女性コーラルキーパーといっても過言ではない、竹下妙子さん。

竹下さんの水槽でもラディオンG3をメインに、数多くのスポットLEDとスーパークールを併用していいる。

ダンゴウオの繁殖や通年飼育に成功している早川直之さんは、ミドリイシ飼育にも挑戦中。

安く購入したというノーブランドのLEDながら、試行錯誤を繰り返して素敵な水景の維持につとめている。

媒体:コーラルフリークス 19

NEWS of IN THE LIFE

ARCHIVES

RANKING

POPULAR TAG

NEWS

SEARCH