2019.02.18

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ようこそ、神秘の世界へ「モデルのような長い脚を持つ キホウボウ」

キホウボウ Peristedion orientale/分類/スズキ目カサゴ亜目キホウボウ科生息水深/100~500メートル

いまだ解明がなされていない、神秘的で謎の多い深海の生物たち。こででは、あまり知られていない海での採取時のウラ話、水族館における飼育・展示ノウハウなどマル秘エピソードを公開。海の不思議ちゃんをどのように愛せばいいか、彼らとの向き合い方を考えてみたい。

2本のツノとモデルのような長い脚を持つホウボウ「キホウボウ」

駿河湾の水深200~300メートル付近に生息。全長は15センチ前後で、全身が硬く、顔からツノのような長い突起が伸びている。胸ビレの一部が脚のようになっており、海底を颯爽と歩く。その姿はスタイリッシュで、どこか近未来の新生物のよう。

●キホウボウの特徴とは? 「二股にわかれた口先を左右にふりながら地面を颯爽と歩いて移動する」

 顔から前側に伸びた、2本のツノのような突起がユニークなキホウボウ。移動する姿が特徴的で、胸ビレの一部が足のように伸び、颯爽と「モデル歩き」をするのだ。泳ぐこともできるというが、危険を感知したときなど、よほどのことがなければ水中を泳ぐことはなく、歩行移動が基本だとか。

 深海生物といえば、高い水圧に耐えるためか、体内の水分量が多く、ブヨブヨとしている種類も多くいるが、キホウボウの場合は全身がカチカチに硬い。外敵に安易に食べられないための進化の結果だろうか。

 口の下にはヒゲのようなフサフサした毛が生えており、触覚の役割を果たしている。この器官で海底を探ることで、真っ暗な深海でもエサを見つけることができるのだという。エサを発見したら、顔から突き出した2本のトゲ状の突起を砂に突き立てて、ドリルのように砂を掘り起こすといわれているが、水族館の水槽内ではそういった行動は見られないという。

●どうやって飼育しているの? 「採集後の措置にひと苦労。展示までは数カ月かかることも」

 沼津港深海水族館では2016年7月現在、5匹のキホウボウを展示している。駿河湾の水深200~500メートル地点に設置された、底引き網で漁獲されたものだ。水圧の変化により目が飛び出てしまったり浮袋が膨張してしまったりするため、網で揚がった時点で生きている個体は1~2割程度。深海生物は、水圧の変化で魚の体が膨張した場合注射器で空気を抜く処理を行うが、キホウボウは全身が硬いために注射針を入れるのが困難で、目の近くのわずかなすき間をねらって針を刺すことで、対処しているのだとか。

 また、病気のためかヒレが溶けてしまう個体も多いため、水族館ではまずはトリートメントタンクで治療をしてから展示をしている。ヒレが再生し、エサを食べるようになるまでは数か月かかることもあるのだとか。無事、元気になった個体のみ、晴れて展示水槽へと移ることができる。

 今回お話をうかがった、沼津港深海水族館の山野辺愛さんによると、ひとつの水槽に個体の数を入れすぎるとヒレが溶けるなどの不調が生じやすいため、90㎝の水槽に5匹程度にとどめて入れるという。水温は15度。海底を歩くため、底面積を広く取るように岩をレイアウトしているという。エサは1日おきに1度、オキアミやエビ、アサリ、シラスなどを与えている。

 ツノの生えたユニークなキホウボウの「ムーンウォーク」を見に行ってみてはいかがだろう。

駿河湾の水深200~500メートルに仕掛けられた底引き網で、ほかの深海生物とともに採取される。ここから、水圧の変化による浮袋の膨張などの処理が行われる。

エサであるオキアミをパクリ。餌付くようになれば、エサはよく食べるとか。1cm程度の大きさのものまで器用に食べてしまう。

お腹側から見たところ。脚のように伸びたヒレの一部や、口の下のヒゲのような感覚器官の様子がよくわかる。

全身。トラ柄のようなスタイリッシュな模様と、ツノのように突出した口先がクール。

取材・構成=藤森優香 Yuka Fujimori
取材・写真協力=沼津港深海水族館
媒体:コーラルフリークス 19

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