2019.01.10

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ノルウェー・オスロのEVライフ①:新車販売の5割がEV、環境先進国はEV先進国!

2025年までに、個人購入のクルマすべてをゼロエミッションにすると掲げたノルウェー。 2018年9月には、新古車を含めた新車のうち、52%がEVとなった。 そんなノルウェーの首都、オスロのEV施策やEVライフの今をご覧いただこう。

ノルウェーにおけるEV車販売の割合

 北欧ノルウェーといえば、フィヨルド、オーロラ、画家エドヴァルド・ムンク作『叫び』、石油産業と高い税金による潤った経済、福祉や男女平等政策で有名な国だ。その中で、各国の報道陣や政治家が、「あること」を探ろうと首都オスロに視察に訪れる。ここは世界一の「EV先進国」でもあるのだ。

 9月、新車販売におけるEVの割合が45.3%と、ノルウェーと世界新記録を同時に塗り替えた。中古ではあるが「ほぼ新車」という新古車も加えると52%に及ぶ。EV普及のショーウィンドウともなっているオスロでは、新車EVの割合は40.7%(11月時点)。8月での新車の売り上げでは、EVが26%、プラグインハイブリッドカーは19%、ハイブリッドカーは12%、ガソリン車が25%、ディーゼル車は18%を占める(ノルウェーではハイブリッド車はEVとして統計では換算されない)。

 フランスのEV団体Avere Franceによると、欧州でのEV市場売り上げの62.5%を占めるのがノルウェー、フランス、ドイツ。EV関連の国際ランキングで、ノルウェーは常に王者のイスを独占している。2016年、ノルウェー政府は「2025年までには、個人が購入する一般の全新車はゼロエミッション車に」という目標を掲げる。テスラのイーロン・マスク氏は報道を聞いて「なんて素晴らしくて、かっこいい国なんだ!」と自身のSNSツイッターで絶賛した。

観光客が多く訪れるトイエン地区ムンク美術館前にて。充電中のEVがずらりと並ぶ。オスロではこのような光景を至る所で見ることができる。

オスロ市の都市環境課の建物は、ソーラーパネルで覆われていた。その手前には、職員がEVを充電できる設備が整えられている。

都市環境課のマリアンネ・ムルメン氏。オスロ市では、公務員にも勤務中にはできる限り環境に優しい車で移動してもらうよう、取り組んでいる。

ノルウェーのEVヒストリー ~EVが走り始めたのは1903年頃から~

 EVが道路を走り始めたのは1903年頃からで、90年代から成長期が始まった。当時はノルウェー産EVもあったがサイズが小さいなどの課題があった。2011年以降は三菱・i─MiEV、日産リーフが市場に参入。「ノルウェー市場に合った商品を届けてくれた日本には感謝している」と語るのは、オスロ都市環境課でEV充電スポットのプロジェクトマネージャーであるマリアンネ・ムルメン氏。今、ノルウェーで最も売れている新車のトップスリーは、日産リーフ、フォルクスワーゲン「e-golf」、テスラ「モデルS」だ。

 政府による優遇策は90年代から始まる。人口525万人しかいない小国では顧客数が限られ、企業や個人は高い税金も払っているので、新市場を立ち上げようとする時には、「政治家が助けるのが当たり前」というカルチャーがある。日本以上に政権交代も頻繁にあるため、各党は選挙毎に新しい案をさらに必死に考える傾向がある。小国だからこそ、実験・失敗・やり直しがしやすいという背景もある。だからこそ他国にとっては、ノルウェーは「EVラボラトリー」。体験談から参考になることもあるだろう。

 またノルウェーは環境や気候変動対策への関心が高い。お金持ちで平和だが、石油を掘る国として、責任感と罪悪感があるため、別のやり方で問題改善に貢献したいという意識がある。また、オスロやベルゲンでは、独自の地形が原因で、真冬になると大気汚染問題も悪化することが、余計に大都市EV化の速度を速めている。ノルウェーというと空気の美味しいイメージがあるかもしれないが、冷たい空気が大気に蓋をし、排ガスまみれの空気で市内は淀んでしまうのだ。そうした背景もあり、政治には「飴と鞭」の考え方、すなわち「ディーゼルやガソリン車に乗って大気を汚染する側が代償を払う」=「環境に優しいEV購入者にはお得なサービス」を提供するという考えが根付いたのだ。

観光客や地元民が散歩するオスロ・フィヨルド沿い。駐車されていた公用車は全て日産リーフとe-NV200。

EV優遇策と充電スポットの問題

 人々がEVを買う理由は第一に様々な優遇策だ。つまり、政治家の理解なしでは「道路をたくさんのテスラが走っている」という現状は、実現不可能だった。

 ガソリンやディーゼル車などを購入した時には税金25%のほかに、CO2税など複数の税金が追加される。EVだと多くが課税対象外に。道路での無料アクセス、無料駐車場、無料充電施設、フェリー利用やトンネル通過無料などの優遇策が全国各地で導入された。特に、バスやタクシーの専用道路をEVが利用できる点は人気が高い。ガソリンやディーゼル車が渋滞で並んでいる隣の道路を、EVはすいすいと走っていけるため、場合によっては30分~1時間を節約できてしまうのだ。

 オスロでは公共の充電スポットが約1,300か所あり、ショッピングセンターなどの民間スポットも含めると2,000以上に及ぶ。2020年には、市議会により公共充電スポットを3倍に増やすことが決定し、近日中に1,800か所を追加予定。「それでも数は足りない」とムルメン氏は話す。オスロでの充電スポットは、来年からは少額で有料となる。EV運転者があまりにも増えてしまい、充電後もずっと駐車していたり、無料だからと充電しないで駐車する人がいるためだ。ちょっと有料化することで、「本当に充電が必要」な人が使えるようになるだろうと期待されている。

 オスロの野心的な政策はほかにもある。2019年9月の地方選挙までに、中心部を走る一般車をできる限り減らす「カーフリー」計画、大気汚染が最もひどい日のディーゼル車の走行禁止、2020年までに交通機関・2023年までにタクシーをゼロエミッション化(運転手が自宅で充電設備を取り付けるために補助金制度も導入)、道路の有料スポット増加(EVは優遇)など。オスロはEUが主催する2019年度「欧州グリーン首都賞」も受賞しており、来年はグリーンな話題が盛りだくさんとなりそうだ。

ソーラーパネル前で充電中のハーツレンタカーBMW i3。市は充電施設を取りつけたい集合住宅などにも補助金20%を負担している。

 
 
Photo:Soichi Kageyama   Text:Asaki Abumi
媒体:『E MAGAZINE』vol.1
 
 
※数値は、ノルウェー道路交通情報局資料より。
※ノルウェーで1番古いEVは1902年Waverly Electric。正式に自動車登録を先に済ませたのは1903年Lohner Porche。

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