2018.06.06

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

おしゃれすぎて悶絶! ウィーンの老舗ハンティングショップ「SPRINGER’S ...

大自然に恵まれたオーストリア。深い森には鹿などが生息し、古くから狩猟文化が根付いている。そしてそれはいつしかファッションに。

かぎりなく優雅。それが狩猟ファッション

 ウィーンの中心、観光客も多い旧市街の一角。ファッションブランドのショーウィンドーのように洗練されたデザインが並ぶ店がある。お、このジャケットちょっといい感じ。そんな気軽なノリでドアを開ける。するとライオンのはく製がガオ~っとお出迎え。

 そう、ここは老舗ハンティングショップ、「ジョー・スプリンガー」だ。スプリンガーの設立は1836年。今とは違う場所だがウィーンの中心地にオープンし、地元のハンターたち御用達のショップとなっている。オーストリアにおけるハンティングは他のどの国とも異なるだろう。なにしろ貴族文化が今に残り、日常に普通に織り込まれているのだ──。

昔の写真に写る狩猟ファッションもやっぱりおしゃれ。ハンティングは今も昔もファッショナブルなものだったのだ。

女性用のタータンのジャケットは英国製。ブランド名「公爵夫人(Duchess)」の名にふさわしい気品。ちょこんと乗せられたチロリアンハットがまたいい感じ。

空の薬きょうでデザインされた置時計。武器に使用されるものなのにカラフルでかわいいのが不思議。スプリンガーではインテリア雑貨も取り扱っている。

ライフルはデザイン性の高いものとシンプルなものとがある。中古品の売買も行っており、美術的価値のあるものはオークションにかけられる。

店舗のはく製はオーストリア国内でハントされたもの。アンカー時計で有名なホーアーマルクトのショップにあるこのライオンはもちろん違うけれど。

家じゅうをハンティング色に染めることも可能

 もちろん"貴族"なんて今は無意味な称号なのだけれども、その生活スタイルを守って暮らす人々が多分に存在するのがオーストリア。

 たとえば冬場は毎晩のように舞踏会が開催され、ドレスアップした男女が地下鉄で会場まで出かける姿を見るように。秋になるとどのレストランにもジビエ(狩猟肉)が登場するが、職業というより伝統的な趣味として狩猟をする人も多い。そしてスプリンガーの経営者もまた、そんなファミリーのひとつ。

 8代目の当主モニカ・ホルツさんは女性だがやはり狩猟が趣味で、彼女の兄もまた、時間があればウィーン近郊の森へ狩猟に行くのが大きな楽しみだそう。つまり彼らの店に並ぶ商品は実体験に基づいて厳選されたものであるといえる。

革製のジャケットは着続けるごとに渋みを増す。流行に左右されることなく、長く愛用するためのものだからこそ、伝統的なデザインが好まれる。

このセットを持ってピクニックに出かけたらかなり気分がアガるに違いない。アフリカのラグジュアリーリゾートでは実際にこういうモノを使っていそう。

ハンティングをインテリアにも。折り畳みのチェアでさえスタイリッシュ。奥のずんぐりしたチェアは革張りでスムースな、ヌバックのような手触り。

世界にひとつずつしかない、作家の証明つきのスキナー。スプリンガーのためのオリジナルデザインの品もあり、作家からの信頼も厚いことがうかがえる 。

もはや芸術品。コレクター垂涎の品も

 取り扱う商品は幅広い。自国オーストリアはもちろん、英国、スウェーデン、スペインなどのハンティングファッションとグッズ、そしてギア──ライフルやスキナー(皮をはいだり肉を捌いたりするための小刀)、そのアクセサリー類だ。ウィーン市内に4つの店舗を展開しており、本店は3フロアにわたりぎっしりと商品が並べられている。

 これだけのハンティンググッズが世の中にあること、そして設立から約180年にわたり同店が繁栄を続けて拡大してきたということは、現代をしてハンティング需要が高まっているということなのか。それにしてもハンターと聞くと思わずマタギのような山男を想像してしまうが、ハンティングファッションのかっこよさに驚かされる。

 近年のアウトドアブームもあり、ファッションブランドからもそれらしいデザインのアウトフィットがよく見受けられるが、スプリンガーで取り扱う商品はすべてただおしゃれなだけではなく、機能性とファッション性とを兼ね備えた高品質のものだ。たとえばオーストリアのメーカー、ヤクトフント(Jagdhund、ザルツブルク)のコートに使われているのは伝統的な製法で作られる布、ローデン。ウールに蒸気を当てて縮めることで密度を増し、防水性と防寒性が高いものに仕上げている。

 ローデンのコートは皇帝も愛用していたといい、狩猟には欠かせないものだが街中で着ればトップファッションとして注目を浴びることだろう。スプリンガーにはそんな商品が目白押しなのである。

狩猟のライセンスを取得する人は年々増えているそう。

スプリンガーの常連客にはコレクターだけでなく、実用品としてライフルを購入しにくる人も多い。

売り物ではないがハンドガンの展示もされている。イタリアのメディチ家から譲り受けたものなど歴史に名を連ねる大貴族の名前がポンポン出てくる。

子どもにもハンティングファッション! 子ども用でもきっちりと目地のつまったいいフェルトを使用していて本格的。ただひたすらかわいい。

チロリアンハットの羽根飾り。本来自分で仕留めた獲物の羽根を飾るものだが、こちらはかわいらしくデザインされたものがたくさん。

ビビッドカラーのアクセントが斬新なパンチを添える本革のコンビブーツは英国製。ヨーロッパにおけるハンティング文化の広さをひしと感じる。

こちらはサファリファッション。さりげなく首にかけたスカーフがにくらしいほどに粋。

昔のハンターたち。山が多く大自然の宝庫オーストリアに は良い狩場がたくさんあった。

あまり本物を見ることはないが、薬きょうの大きさからも銃の威力を想像できる。

ハンティング・トロフィーの 数々。これが飾れるくらい大きな家に住まないと。

進化も現代化もいらない。伝統なのに新しい

 思わず「さすが!」と唸ってしまう品揃えはやはりライフルなどのギアだ。なにしろ設立当時は武器の専門店として宮廷御用達だっただけある。

 こちらも機能だけでなく装飾の美しさに優れた商品が多く、さながら美術品のショーケースのよう。オーストリア製の銃はスコープがスワロフスキー(オーストリアはチロルに本社を置くガラス製造会社。ジュエリーとしての人気が高い)製だったりして、ここでもなんておしゃれな……とつい思ってしまう。実際のところ、スワロフスキーは双眼鏡などの光学機器部門もよく知られており、ジュエリー部門でこのスコープを作っているわけではないのだけれども。
 
 一見華やかなファッション系セレクトショップ、しかし機能と実用性を兼ね備え、職人の伝統技術によってつくられる商品だけを取りそろえ質実剛健なところがますますクール。狩りをせずとも足を運びたくなるショップである。

HUNT vol.9

なにかストーリーが詰まっていそうな古い回転式ハンドガンのセット。博物館にあってもおかしくないほど保存状態がよく、さすが老舗の専門店! のケアの良さ。こちらは“応相談”で購入可能。

チロリアンハットの鳥の羽もハンティング・トロフィーのようなものなのかも。オーストリアでは正装だが、そのうちNYあたりで流行りそうな予感。

ハンティングファッションのつもりでなく使って いる人も多いであろうポケットポーチ。ハンティングファッションの広汎性に驚かされる。

ハンティングファッションに身を包むキツネ…… ちょっとアイロニックなデザイン。オーストリア製なら帽子がチロリアンハットになる?

photo:Daisuke Akita/text:Shie Iwata
取材協力:オーストリア政府観光局、ウィーン市観光局

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