2019.04.17

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

「伝統のカロッツェリアの拓く未来」

長らく世界のカーデザインを主導してきた、イタリアの名門カロッツェリア。 自動車という乗り物が大きな変革期を迎えつつある現代においても、そのプレゼンスを保ち続けることは可能なのであろうか?  イタルデザインとピニンファリーナの、過去と現在を検証してみよう。

ITALDESIGN「古典美を湛えたそのグラマラスなボディには、当代最新の中身を隠す」

 20世紀を代表する名門カロッツェリアの一つ、ベルトーネ社のチーフスタイリストに21歳の若さで就任。アルファロメオ・ジュリアGTなどを手掛けたのち、カロッツェリア・ギア社に移籍。マセラティ初代ギブリやいすゞ117クーペなどの傑作を残してきたジョルジェット・ジウジアーロ氏が1968年に自ら創立したデザインスタジオが、イタリア・トリノ近郊に本拠を構える「イタルデザイン」。

 稀代のマエストロと称賛されるジウジアーロ氏が、持ち前の素晴らしい画力とともに、パッケージングまでデザインで表現するエンジニアリングセンスを発揮。フォルクスワーゲン初代ゴルフやフィアット初代パンダなどの歴史的傑作を数多く残してきた。

 2010年にはVW/アウディ・グループの傘下に収まり、新たな局面を迎える。そして2015年をもってジウジアーロ氏が退社したのちも、デザインからエンジニアリングまでもパーフェクトにこなす超一流のデザインスタジオとして、VW/アウディ・グループ以外のブランドにも協力。限定生産を担当する「日産GT-R 50th イタルデザイン」が全世界で話題を呼んだのも記憶に新しいところである。

 そして、かつてはランボルギーニ社チェントロスティーレ(デザインセンター)の長であったフィリッポ・ペリーニ氏をデザインディレクターに据え、次世代に向けたデザイン言語を構築しつつある新生イタルデザインは、さる2016年春のジュネーヴ・ショーにて、イタリア伝統のグラントゥリズモをEVとして昇華させた意欲的なコンプトカーを世界初公開した。それが「GT Zero」なのだ。

 GT Zeroの車体は、1990年代からイタルデザインが得意としてきたカーボンファイバー製モノコックをさらに進化させたもので、バッテリーを組み入れたカーボン製センターモノコックと前後のアルミ軽合金製サブフレームで構成したモジュール形式。つまり、ボディスタイルは自由に展開できることになるという。

 原動機となる電動モーターはフロントに2基、リアに1基搭載されて四輪を駆動。また、四輪操舵機構も組み込まれている。パフォーマンスはイタリアンGTの伝統に相応しく、最高速度は250㎞/h。その一方で航続距離は最大で500㎞に達するという。

 そしてGT Zeroの真骨頂たるボディは、イタルデザインおよびイタリア製グラントゥリズモの伝統を象徴するかのごとき「シューティングブレーク」スタイルに、現デザインディレクターであるペリーニ氏が、自身の代表作であるアヴェンタドールやウラカン、ウルスなど、ランボルギーニ各モデルで培ってきたエッセンスを加味したもの。古典と近未来を巧みに融合させたエレガントなスタイリングは、まさしくイタルデザイン栄光の歴史に相応しいものと感じられる。

 1930年代から連綿と継承されてきたイタリア製グラントゥリズモの血脈は、たとえ原動機が電動モーターに替わろうとも喪われることなどない。イタルデザインとGT Zeroは、それを証明してくれたのである。

【GT ZERO】
モジュール形式のカーボンモノコックに、イタリア伝統の「シューティングブレーク」スタイルを現代に昇華させた流麗なボディを架装。
モジュール形式ゆえに、異なるスタイルのボディも組み合わせられるという。

3基総計360kw のモーターで4輪を駆動。最高速度250km/hを発揮する高性能EVが基本ながら、ハイブリッドへの転用も可能な設計。この柔軟性も、GT Zeroの特長の一つといえよう。

Pininfarina「長らくイタリア・カロッツェリアの盟主の座に君臨する名門が手がけるEV」

 一方、「ピニン」の愛称で知られたバッティスタ・ファリーナが、1930年に創業した名門ピニンファリーナ社は、52年からつい最近まで、フェラーリの市販モデルの内外装デザインを、事実上一手に引き受けてきた。その一方で、仏プジョーや英BMC、あるいは日産自動車などの量産車デザインの分野でも高い評価を獲得。半世紀以上にわたってイタリア・カロッツェリアの盟主的存在として君臨している。

 いつの時代もピニンファリーナのデザインフィロソフィは、イタリアでは「エレガンテ」と称される優美なもの。それは香港を拠点とするベンチャー企業「正道集団(ハイブリッド・キネティック・グループ)」とのコラボレーションのもと、ここ1~2年で続々とショーデビューさせたコンセプトカーたちにも当てはまるようだ。

 例えば3月のジュネーヴ・ショーにてデビューした、ガルウィングドアの4座クーペ「HK-GT」。翌月の北京ショーで発表されたミドル級サルーン「H500」とSUV「H350」、ともにピニンファリーナの歴史を物語る、実に上品なスタイルを誇る。

 今や、その実力が世界から認知されつつある中国系の先端テクノロジーと、イタリア伝統のエレガンツァとの融合。ハイブリッド・キネティック・グループ×ピニンファリーナのコラボが今後世界の電動自動車化のリーダーとなり得る可能性を、ゆめゆめ軽んじてはならないと思うのである。

【正道集団 HK-GT】
2018年3月のジュネーヴ・ショーにて発表された正道集団×ピニンファリーナのコラボ・コンセプト第4作。巨大なガルウィングドアを持つ4座クーペで、350km/h の最高速度を想定した超高性能EV。サーキット専用スーパーカー「H2」とともに、正道集団×ピニンの象徴となることであろう。

【正道集団 】
4月の北京ショーに登場した、4ドアセダン型のマイクロタービンによるレンジエクステンダーEVコンセプト。前年に発表されたH600がメルセデスSクラスに相当する大型セダンなのに対して、こちらはEクラスに近いアッパーミドル級となる。

 
 
Text:Hiromi Takeda
媒体:『E MAGAZINE』 Vol.1

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