2019.06.13

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TAISAN 千葉さんが語る「EVレースの楽しみ方」

1983年からTEAM TAISANの監督として活躍し、2019年からはEVレースを中心に活動を続けることをアナウンスした千葉氏にとってEV、そしてEVレースとは?

 GT選手権やル・マンなど、これまで国内外数々のレースで勝利を収め、2019年からはEVレースにシフトすることを発表したTEAM TAISAN。そのTEAM TAISANを率いる千葉さんとEV、そしてEVレースとの関わりは、すでに10年以上が経過している。

 これまでにコンバージョンEVと市販車EVという2つの方法から、チームとして、時にはドライバーとしてEVレースに関わってきた千葉さん。そのひとつであるコンバージョンEVレースの主戦場は、自動車評論家の舘内端氏が代表を務める日本EVクラブが主催する「ジャパンEVフェスティバル」である。

 「ウチのガレージの板金屋がね、黄色いポルシェ(916仕様の914)を持ってたんですよ。コンバージョンの予算が、ベース車両プラス100万円っていうことで、モーター買ってきて鉛電池積んで。最初は6個だったかな。でも坂道も登らなくなっちゃってね。やっぱり、バッテリー触ったら熱いんだよね、これは熱だなって。そのへんの難しさがわかってきて、鉛電池を24個積んでみたり、リチウムイオンを積んでみたり。それで筑波2000でコースレコード作って、優勝したんだ」。

 実は、914EVの製作過程で発生したバッテリーの過熱問題が、EVレースに積極的に参戦する理由の一つでもあるのだが、それは後述することにしよう。

 もうひとつ、千葉さんが出場しているEVレースが、原則市販車で争われる、日本電気自動車レース協会(JEVRA)が主催するレースだ。

 「JEVRAの立ち上げのときに"千葉さんテスラをアメリカから持ってきてくれないか"と言われてさ。それで、2010年にCEOのイーロン・マスクに会いに行って、日本でレースやるからクルマ分けてよ、って。彼はまだ完璧じゃなんだよ、なんて言ってたけど、まぁいいじゃないかって(笑)」。

 千葉さんは、カリフォルニアのテスラ・ショールームにあったという、約9,000㎞を走行していた「テスラ・ロードスター」を日本に持ち帰った。そして同年、飯田章選手のドライブで、チームはEVレースでの初勝利を勝ち取った。このテスラに、千葉さんはレース以外でもさまざまな思い出があるとのこと。そのひとつが、とあるラリーイベントでの出来事。

 「亡くなった山路慎一とさ、御殿場から登って乙女峠から小田原に降りるルートで、走ったんだよ。俺が助手席に乗ってさ。そしたら、乙女峠に登ったときに残ってたバッテリー量と、回生ブレーキで充電しながら下った小田原でのバッテリー量が、7㎞分くらいしか違わなかったんたよ。

山路と"EVも中々いいもんだな"なんて話したんだ。でもその頃、高速道路のSAにも充電スポットがなかったから、1日走るなら4トン車に乗せた発電機で、宿から遠くの場所で夜中充電させてさ(騒音がひどいので)、どこがエコだって(笑)」。

 レースの現場においても、サーキットのピットに充電設備がなく、有料の電源車を呼んで充電を行うそうだが、容量が限られているため順番待ちが発生し、自走での帰りもSAでの順番待ちを繰り返し、キャリアカーよりも帰宅が遅くなることもしばしば。インフラの整備は、「まだまだ」と千葉さん。

 そしてもう一つの問題が、前述したバッテリーの発熱。テスラの場合でも、30分レースの残り10分に、発熱によって制御が働き、パワーダウンしてしまう症状が出たという。

 「ウチ(太産工業)としては電磁ポンプのメーカーですから、クールダウンのために電磁ポンプをどうやって使うかと考えて。これまでも、燃料の制御のためにグループCカーをやって何度もチャンピオンを獲ったり、32GTRのブレーキがプアだったから水を吹きかけながら走って、それで筑波で2位を獲ったり。

そこでテスラのラジエーターに7キロとか10キロの勢いで水を噴霧するノズルを2基つけたんだけど、それなりの電力を食う。じゃあもっと効率が良くて消費電力の少ない方法はないか、と。それがノウハウになるからね。商品開発も兼ねて、どう面白く開発していくかということが、(EVレースの)ひとつの課題ですね」。

 そして2019年、新たな取り組みとして、プロではなく東大生などのドライバーを起用し、東京大学の教授とジョイントしてのレース活動を開始した。ポルシェでそのキャリアをスタートしたTEAM TAISANということで、ポルシェとジョイントして、Taycanを使用するプロジェクトも進行中だという。

 「TEAM TAISANの歴史としては1983年にポルシェの956と共に始まってますから、ポルシェと一緒にやりたいと。TaycanのTayはタイサンのタイにつながるし、canは"できる"でしょ。トライするということで」

 「スーパーGTはやめたんで、こちら(EV)で勝ち数を稼いでいきたい。難しいよね。100勝までは」

 通算100勝まであと、19勝。TEAM TAISANのキャッチフレーズである「夢、また夢」は今後も続いていくことになりそうだ。
 
 

916仕様のポルシェ914をベースに、EVにコンバージョン。ジャパンEVフェスティバルにおいて、現在2連勝中。当初は鉛電池、後年はリチウムイオンバッテリーが搭載されている。

テスラには、バッテリーの発熱の影響を抑えるため、電磁ポンプを介してノズルでラジエーターに水を噴霧する装置を装着。

TEAM TAISANのEVレースでの勝利は、14勝。1983年からのチーム通算100勝までは、あと19勝だ。

千葉泰常さん:
TEAM TAISAN(1983年~)を率い、1984年開催のJSPCでの勝利(ポルシェ956)のほか、GT選手権でのポルシェやF40、2000年のル・マンLMGTクラスでのポルシェGT3Rなど、数多の勝利を挙げ、プライベーターという立場で、2018年まで81勝を記録している。
 
 
媒体:『E MAGAZINE』 Vol.2

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