2019.06.17

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

フォーミュラEのモーターを4機搭載したモンスターマシン。

ベアリングの製造で世界2位のシェアを誇り、幅広い自動車部品を手掛けるブランドとして知られるシェフラー社が発表したコンセプトモデル「Schaeffler 4ePerformance」は、驚くべき性能を誇り、しかしコンセプトモデルでありながらも、量産車に近い存在だった――。

 今、私は悩んでいる。それというのもここで紹介する「シェフラー」という企業が、知れば知るほど奥が深く、これからのEV界を一手に背負っていくかもしれない、いや、そうなるであろうビッグネームだからだ。そのシェフラー社が生み出したスーパーモデル「シェフラー 4eパフォーマンス」とそれを取り巻く環境とを、紐解きながら紹介してゆこう。

 まず自動車を製造販売するメーカーとして一般的にイメージするのは、トヨタや日産、海外だとメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン、GMなどのビッグネームだろう。ただし一台のクルマを開発するには、裏で多くのサプライヤーの協力が必要となる。

 わかりやすいところでいえば、サスペンションやブレーキなどは、先述したブランドが専門のメーカーに発注し、自動車を製造する際に組み込まれるという流れになっている。サプライヤー企業は車体やエンジンという大きな枠組みだけでなく、使用されるビスやコンピュータのチップまで、多岐に渡って製造を担うのだ。

 その中でもここでピックアップするドイツのシェフラー社は、名前こそあまり聞きなれないかもしれないが、自動車部品をはじめ産業機械や航空宇宙産業にまで着手する、世界有数の機械メーカーだ。自動車産業ではエンジンに始まり、シャシー、トランスミッションまで幅広い製品を製造している。つまり外観からは見えていなくとも、クルマを構成する主たるパーツを一手に担っているということになる。

 シェフラー社はこのほか、ハイブリッド機構やEVコンポーネンツの供給なども行っているのだが、昨年、将来的に現実味を帯びている総EV社会を見据えて、独立した電動モビリティ部門を立ち上げた。そこで開発されたスーパーコンセプトモデルが「シェフラー 4eパフォーマンス」なのだ。
 

SCHAEFFLER 4e PERFORMANCE:
パッと見てピンと来た方はクルマ好き。そう、このシェフラー・4e パフォーマンスはアウディ・RS3をベースに作られたEV だ。フォーミュラE に参戦している「アプト・シェフラーFE01」に搭載されているものと同様のモーターを搭載しているものの、あくまで"量産車に近いコンセプト"としている。

モーター最高出力/880kW(1196ps) 航続距離/ - バッテリー容量/64kWh 0-200km/h 加速/7 秒 
発売時期/ 未定 価格/ 未定 自動運転、AI 仕様/ 未定

 
 
 実は、シェフラーはフォーミュラEの開幕当初から、参戦するレーシングカーのパワーユニットを供給してきた(ルマン24時間耐久などで活躍するポルシェ919のハイブリッドシステムも、同社のものだ)。フォーミュラEという極限でのスピード、耐久性、さらにはバッテリーの持続性などで争われるステージにおいて蓄積したテクノロジーを、開発に落とし込んだ。

 今回の「シェフラー 4eパフォーマンス」には、フォーミュラEで使用されるものと同等のモーターを4基搭載しており、合計での最高出力は1,200馬力(880kW)を発生させる。最大トルクは320Nmで0〜200㎞/h、到達時間は7秒未満という驚異的なスペックを誇る。もちろんシャシーからギアボックスまで同社で研究開発されたものが使用されている。

 「フォーミュラEの最初のシーズンから、シェフラーが技術や専門的な知識を提供してきたことは、その世界での先駆者としての役割を果たすものでもありました。そしてそれは同時に量産モデルで使用するコンポーネントに、ひとつの答えを導き出すことにもつながっていたのです」

とシェフラー社のモータースポーツ部門でプロジェクトディレクターを務めるSimon Opel氏は話す。 そして、シェフラーのCTOであるPeter Gutzmer教授は、こう語る。

 「シェフラーはEVパワーユニットやドライブトレーン全体の電動化のための様々な製品を提供しています。すでに量産モデルとしてテスト済みの、48ボルトハイブリダイゼーションおよび高電圧ハイブリッドモジュール技術から、まもなく完成するモジュラー電気車軸まで、それはそれは幅広い分野に渡っています。それらは中国にある工場で次々と生産され、欧州の高級EVモデルに使用されます」。

 たとえば、アウディが発表しているEV「e-トロン」に使用される、電気駆動用トランスミッションもシェフラー社のものであり、すでに量産を開始している。
 

SCHAEFFLER MOVER:
シェフラーが提案する都市型コンセプトモデル、シェフラームーバー。完全な自律運転用に開発されているもので、家庭用のコミューターとしてだけでなく、ロボタクシーや自動配達用に使われることも想定されている。急速に成長する世界中の大都市圏において、人々が求めるモビリティ要件を満たすために導き出した、シェフラーの答えだという。

 
 
 テスラに追いつけと地球規模でのEVベンチャーブームとなっている一方で、シェフラーのように元来自動車製造業界においてしっかりとした地盤を持ちながら、新時代への幕開けをしっかりと見据えて、着々と準備をしている企業もあるということなのだ。

 そして興味深いのは、シェフラーは「シェフラー 4eパフォーマンス」のようなレーシングモデルスタイルのコンセプトカーだけでなく、「シェフラー ムーバー」という都市型モビリティの開発をも同時に進めていることだ。コンパクトなボディ
にホイールハブドライブと90度ステアリングシステムを備えた「シェフラー ムーバー」はその場で旋回することができ、狭い路地裏まで進入することが可能となっている。

 四輪に搭載されるモーターは13kWの連続出力、ピーク時には25kWのパワーを発生させ、必要十分なスペックを誇っている。そしてこの車両は、ロボタクシーや自律輸送車両としての用途も考慮の上で、開発されているのだ。もちろんEV社会において必要となるインフラの開発にも着手していることは、記述するまでもないことだろう。

 超高性能スーパーEVであるシェフラー 4eパフォーマンス」、そして我々の日常生活を変えてくれるかもしれない「シェフラー ムーバー」。両極端ともいえるモデルではあるが、根底となる技術、そして未来の想像図は共通しているのである。

 
 
取材協力:SHAEFFLER
Text :Dan Komatsu
媒体:『E MAGAZINE』 Vol.2

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