2019.06.21

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

『図解 EV革命』著者・村沢義久さんの「軽井沢EVライフ」

NASAの宇宙太陽光発電研究にもかかわり、自らも太陽光発電所を所有。そして、自らの日常生活でも、コンバートEVのビートルに乗る環境学者の村沢義久さん。ここでは村沢さんの日常を取材させていただきながら、EVから脱炭素社会への問題点などを語っていただいた。

太陽光発電を研究して40年

 私が太陽光発電の研究を始めたのが、いまから40年前です。いわゆる第一次オイルショック直後で、アラブ諸国が世界に原油を輸出しなくなっていたのですが、第一次オイルショック直前に、作家・堺屋太一氏が小説『油断!』でシミュレーションした“原油が日本に来なくなったら”が、本当にその通りになった時代でした(実際、小説の刊行は世情に鑑み、第一次オイルショック後)。

 当時、ガソリンスタンドにはずらっと列ができ、石油製品だけではなくトイレットペーパーや洗剤も、売り場から消えました。便乗値上げでお米さえ消えたのです。そのとき私は就職1年目で、アメリカのシンクタンクの日本代理店に在籍しており、エネルギー対策の研究に参加していました。NASAが主導した太陽光計画に参加した日本人は40年前から現在に至るまで私一人だと思います。

 その後もハーバード大学やMITなどがある、ボストン郊外のケンブリッジにあるアーサー・D・リトルという研究所で太陽光発電を研究していましたが、当時のエネルギー変換効率はいまの5分の1くらいでした。

 現在では、1つの屋根に太陽電池を乗せるのに百何十万円で設置可能ですが、当時は3000万円くらいと、汎用化するにはコストが全然合いませんでした。

そのため、人工衛星で宇宙空間の静止軌道上に、ズラリと太陽光パネルを展開して地球に送る宇宙太陽光発電の研究や、地上の太陽熱を温水器に利用する研究なども行なっていました。

 その後、研究職を経てゴールドマンサックスに入社し、M&Aなど経営コンサルタントとして長く仕事をしてきましたが、つい最近、日本のJAXAが宇宙太陽光発電をやるということで、諮問委員会に参加。2005年には東大の特任教授になって、地球温暖化対策メインの環境問題を研究することになりました。

 最初の太陽光発電の研究から40年。あれこれ試しましたが、CO2削減と地球温暖化の対策としては太陽光発電と電気自動車の推進がベスト、という結論にたどり着き、その研究成果を書籍やNHKの「クローズアップ現代」などで発表させていただきました。そんな中、9年前のNHK取材を通して、いま乗っているEVビートルを作ったOZモーターズの古川くんと知り合うこともできたというわけです。

マニュアルミッションだが、EVはモーター回転数0からでもトルクが強いため、3速固定で発進から高速まで運転可能。ただ、加速を楽しみたい場合は2速で、平坦なところは4速に入れているののだとか。ご自宅の充電は100Vで行なっているが、日常使いは冬が寒い以外は快適そのものだとか。

全国十数か所に、太陽光発電所を所有

 じつは私、全国十数か所で太陽光の発電所を所有し売電をしています。研究者としてCO2削減のため、義務感から損してでもやるつもりでしたが、それが儲かるようになったので日本各地にどんどん作っています。現在では電気の買取価格が初年度の半分を切りましたが、設置コストもそれに合わせて下がっているため、太陽光発電の投資はまだまだこれからだと思います。

 太陽光パネルは悲しいことに国産よりも中国製パネルのコストパフォーマンスがよいため、安価な中国の装置を使えばまだ売電で儲ける余地はあるでしょう。パワーコンディショナーの世界一は、今話題のHuaweiです。アメリカがHuaweiを締め出したのは、中国に敵わないことがわかったから。これから5年くらいでさらにはっきりしてきて、十何年経てば中国が唯一の超大国でアメリカは大国、日本は中堅国家になるのではないでしょうか?

 ということで、今日は天気がいいですから、たとえ僕が遊んでいても、太陽電池がどんどん発電してくれて稼いでくれている。儲かったお金でEVビートルを購入したというわけです。本当はこの家とEVの電力も太陽光発電でまかなえるとカッコイイのですが、軽井沢は木が高く、発電量が通常の半分程度になってしまうため、この家では太陽光発電はしていません。

出先にて充電中!

燃料電池は馬鹿電池?

 イーロン・マスクは「燃料電池は馬鹿電池」と言っていますが、ひと言でいうと水素を燃料としたFCV(燃料電池車)はめちゃくちゃに非効率だ、ということです。総理大臣は、地球上に水素は無尽蔵にあるといっていましたが、あるのは水であって水素を取り出そうとすると、莫大なエネルギーがかかります。

 日本政府はFCVのために水素ステーションの補助金を出していますが、世界中で水素ステーション推進を国策で決めた唯一の国が日本です。1箇所作るのに最低5~6億円。それが日本に100か所あまり。そのうちの40か所がENEOSで200億円以上を投資しています。2番目がイワタニでこちらは100億円の投資です。あまりに水素自動車が普及しないので、ある関係者から「水素ステーションはどれくらいで元が取れますか?」と聞かれたので「100億年かかっても無理です」と伝えたことがあります。

 なぜかというと、投資して元を取るっていうことは最初に凹んで毎年稼いで回収しないといけないわけですが、燃料電池は最初に凹んでから毎年赤字が続いています。お客さんどころか閑古鳥も来ない状況なのです。

 僕は神奈川県でスマートエネルギー推進部の会長をやっているので、県庁の職員と設置数と補助金に関して喧嘩になります。1日にFCVが来る実績目標を数十台としているようですが、5台も来ないんじゃないかと。現状神奈川には十数カ所の水素ステーションがありますが、すべて赤字で1日に一台も来ないところもあるでしょうと。

 全米でも水素ステーションは20~30か所にしかなくて、ほとんどがカリフォルニアのシリコンバレー周辺とニューヨークの一部にしかありません。今後、ネブラスカやアイダホといった全米津々浦々に、5億かかる水素ステーションを作ってペイするはずがない。つまり、普及はしません。日本政府は2020年までに、160か所の水素ステーションを作るといいましたが、これをどう中止するかが問題です。

 2018年の北京モーターショーで、TOYOTAはFCVを出さなかったんですが、ヒュンダイは水素電池搭載モデルを出しました。次の上海モーターショーでは1台も出ないでしょう。GM、ベンツ、日産も以前は開発していたんですが、計算したらコストが合わないということからか最近ではどこも出していません。

OZモータースでコンバートしたEVビートルは、軽井沢の急速充電器にも対応している(オプション対応)。自宅で充電するため普段は使わないが、急ぎのときには便利。

コンバートEVは楽しい!

 僕のクルマの歴史としては、そこそこ好きだけどマニアというわけでもない感じです。じつは、アメリカに行く前、僕は"アンチクルマ派"だったんです。クルマはCO2を排出して環境には悪いし、事故を起こしますし、クルマを買うお金があれば世界一周をしようと考えていました。ところがアメリカの田舎ではご存知のようにクルマがないと生活ができないため、現地ではトヨタセリカに乗ってました。

 帰国後は都内のマンションに住んでいましたが、近年軽井沢に移住したことと電気自動車を推進しているので、乗るなら電気自動車だろうと。では、電気自動車の中で何がよいかといろいろ調べたのですが、そうなるとリーフが一番よい。テスラのモデルSは高いし、モデル3は当分出てこないだろうと。ところが、それじゃあ能がないのでコンバートEVだなと。

 というわけで、EVインストーラーとして世界的にも有名なOZモーターズにお願いしようということになったわけです。これまで乗っていたイプサムが古くなったので、ボディは元のままでEVにコンバートしようと考えていたのですが、ビートルのコンバートEVを古川さんが量産していくということで、その一号車を購入することにしました。

 ビートルにはまったく思い入れがないんですが、改造前のクルマを見ているうちに愛着が出てきました。実際に乗ると、馬力はオリジナルの2倍ということもあり、ドライブしている楽しさ、いわゆるFUN TO DRIVEという体験を生まれて初めて感じたんです。

 というのも、ガソリン車は踏み込んでから一瞬の遅れがあります。アクセルを踏むことでスロットルが開き、燃料噴射量と爆発が増えてようやく出力されるので、遅れてしまいます。しかしEVは直結ですからレスポンスが速いです。私のコンバートビートルは電気自動車としては文句なしです。

 ただ、古い車体をベースとしているので、ボディがガタガタなのと運転席の窓が上がりません(笑)。また、軽井沢は涼しいのでクーラーはいらないのですが、冬はとても寒く暖房がないのは困っています。エンジン車の場合はガソリンを燃やすことでエネルギーを発生させているため、エネルギー効率が悪く10数%しかない。

 走ったあとのエンジンは、手で触れないくらいに熱くなっているし、ラジエーターキャップを開けたら吹っ飛ぶわけです。機械工学的にいうと熱はムダなのですが、その熱を暖房にしているのですから、ガソリンエンジンの暖房というのは効率の悪さを物語っているんですね。

 それにひきかえ、電気自動車はモーターを触っても冷たいのです。つまり、エネルギーがすべて動力になっているので効率がいいんですね。ただ、ムダがない分暖房を電熱でやるとコンバートEVの場合は航続距離が半分になってしまいます。また元々のクルマが古いので、ヘッドライトが暗いなど古さゆえの不便は多少ありますが、もうガソリン車に戻る気はまったくないです。

 今度メインのクルマを買うとなったらもう少し大きいクルマにデカいバッテリーを積んでコンバートしてもらおうかと考えてます。

 結局人間には移動することが楽しいという本能があるのだと思います。人類は地球上どこまでも行くのが楽しいんですよ。僕の場合はEVで移動するのが好き。そして高速道路よりも田舎道が好きなので、ビートルのコンバートEVはピッタリですね。

コックピットには電池残量がわかる液晶パネル。

村沢義久さん:
NASAの宇宙太陽光発電研究にもかかわり、自らも太陽光発電所を所有。
そして、日常はコンバートEVのビートルに乗る環境学者の村沢義久さん。ここでは村沢さんの日常を
取材させていただきながら、EVから脱炭素社会への問題点などを語っていただいた。
 
 
取材協力、車両お問い合わせ:OZコーポレーション TEL;045-577-9190
媒体:『E MAGAZINE』 Vol.2

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