2019.07.24

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ビバリーヒルズで見る夢。「BEVERLY HILLS CAR CLUB」

妄想の連鎖は、趣味人に幸せを運ぶ

 アメリカの自動車文化をその肌で感じることができるのは、やはりカリフォルニアなのだろう。

 以前に比べればエコカーや、電気自動車など人々のクルマへの興味は画一化の方向にあるとは聞くが、それでも多種多様な人種が、年式を問わず様々なメイクスのモデルをドライブしており、休日の早朝にドーナッツショップのパーキングを訪れれば、老人たちがヴィンテージカーを囲み、クルマ談義に花を咲かせている。そんな光景を前に自動車趣味人であることを嬉しく思い、いつの日にか芽生えたクルマへの憧れや忘れかけていた情熱を、カリフォルニアという場所がいま一度呼び覚ましてくれる。

 そういえばカリフォルニアでユーズドカーショップを巡る。その行為自体がかつての憧れだった。右手に抱えていた中古車情報誌は、いまや胸ポケットのスマートフォンに変わったけれど、店を訪れ、クルマと対峙し、店主と話すという一連の流れは興奮そのものだった。もしこのクルマを買ったら、あーして、こーして。実際にそれを手に入れずとも、さまざまな妄想の連鎖が自らに、たしかな幸せを運んできたのだ。

 今回の取材ではそれほど時間を作ることができなかったが、それでも時間を見つけて中古車屋を巡ってみた。そして取材の最後の日に訪れたBeverly Hills Car Clubは実に興味深いショップであり、かつて経験した興奮をはっきりと思い出させてくれたのである。正面玄関から入るとすぐさま認識できるのは、フェラーリ、ポルシェ、マセラティなど往年のスポーツカーたち。それもほとんどが60〜70年代のヴィンテージカーとあり、これだけの車両が一堂に会する光景に心躍らされた。すべてのコンディションは上々。

 訊けばすぐにでも走り出せる状態にあり、価格も世界的な相場から見れば決して高いものではなかった。けれど、このエントランスの展示車は序の口。本当の意味での興奮は、さらに建物を奥へ進んだところにあった。
 

1969 Maserati Mexico:
1966年のパリサロンでデビューしたマセラティ・メキシコ。ヴィニャーレに所属していた頃のミケロッティの作品だ。こちらは販売価格は6万9,500ドル。

選択眼を養う、 絶好の場所

 小さな野球場くらいの広さがあるだろうか。ショップの奥には広大なスペースが広がり、その中には所狭しとヴィンテージカーが置かれていた。その数はゆうに200台はあるだろうか。ポルシェ356にロールスのファントム、そしてジャガーEタイプまである。よく見れば、それぞれの個体はお世辞にも良好なコンディションを保っているとはいえない。

 窓が割れていたり、ボディが凹んでいたり、内装がカビだらけだったりと、要は全てがレストアベースだ。しかし絶望的に再生不能な車両はどれひとつとしてなく、そのセールスプライスも相場から考えればはるかに安い。ともすればプライベートレストアラーが多数存在するカリフォルニアという場所においては、願ってもないお値打ちな素材といえるのではないだろうか。

 迷うほどに選ぶ素材はたくさんある。もちろん販売価格とのバランスを鑑みて、車両をピックアップする選択眼を求められるが、そうしたクルマの探し方も勉強であり、自動車趣味のひとつではないだろうか。そう、ビバリーヒルズの広大な倉庫で様々に妄想が膨らんだことを、いまふと思い出す。
 

SLはアメリカでも大人気のモデル。時代によって排気量や仕様が細かく変わるが、その個々にアメリカでも熱心なファンが存在する。

広大なレストアベースエリアには200台を超える様々なメイクスの車両が所せましと置かれている。ここから掘り出し物を見つけたい。

 
 
BEVERLY HILLS CAR CLUB
 
Text:Kota Engaku
媒体:『VINTAGE LIFE』 Vol.21

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