2019.07.25

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ヴィンテージバイクの愉しみ。「清水さんのピストコレクション」

 自転車趣味も人それぞれ。乗って楽しく集めてまた良し、自分で組むのも奥が深い。中でもヴィンテージバイクは、そのすべてが堪能できる奥の深いジャンルである。

 まず、憬れのフレームやパーツを探すという楽しみがある。ネットを絶えずチェックするのはもちろんのこと、ときには見知らぬ街の自転車屋さんを覗くのも面白い。

 値段が上がってしまった人気のヴィンテージが、格安で売られている幸運もある。おそるおそる店主に声をかけてみたら、今ではプレミアム価格となって取引されているレアパーツが、デッドストックのまま倉庫に放置されていた……なんてことも。「どうせ何十年も放っていたモノだから」ということで、一袋幾らの投げ売りでお宝をごっそりゲットという、夢みたいな話もあるのである。生産終了となったレアパーツ探訪は、マニアにとってのお宝探しなのだ。

 そして、部屋で眺めるだけだったお気に入りのフレームにパーツを組み、ようやく完成した一台は、世界にただ一台のヴィンテージバイクとなる。それにまたがって走り出す先は、未知の街の自転車屋さんだったりするのだ。目指すは新たな幸運との出会いである。
 
 

1976 NATIONAL DOMIFON RACER:
ドミフォンとは「自転車における最高速度」を狙うレーサー。小系の前輪や特大のチェーンリング、補強の入ったステムやサドル、そして逆オフセットのフロントフォークなどが特徴である。競技団体が車両を所有していたケースが多いので、個人的に市場へと売りに出されるのは稀。

日本が生んだ謹製品に惚れ込む

 そんなヴィンテージバイクとの生活を楽しんでいらっしゃるのが、今回ご紹介させていただく清水さん父子である。

 その趣味生活ぶりは、まさにスタイリッシュ。ご自宅の一室は完全なるホビールームとなっており、組み上げたバイクとレアパーツが整然と佇んでいる。本棚にはサイクルスポーツ誌のバックナンバーをはじめとする各種資料が詰め込まれ、見上げればこちらも入手困難なコンバースがズラリ。

 自分の時間に没頭できる夢の部屋、まったく羨ましい限りの趣味空間は、いかにして誕生したのだろうか? 

 まずは「この父にしてこの息子あり」である。父親である英一さんは、「タイヤの付いた乗り物」に目の無い少年だった。小学生時代から、ランドナーで旅を重ね、電車で輪行するという移動手段も込みで楽しんでいたという。年頃になるとさっそく免許を所得、まずはオートバイ、そしてクルマにのめり込む。

 二十歳の頃にはミニをいじって乗り回し、EP71スターレットのチューンに明け暮れた末、現在の愛車はカプリスのワゴンに落ち着いたという。1994年に新車で購入して以来の相棒は、ボイドのビレットホイールを履かせた王道のアメリカンカスタムである。
 
 

1986 3RENSHO FUNNY BIKE:
スポーツバイク史に名を残す銘ブランド、「三連勝」のファニーバイク。ライダーの前傾姿勢を可能とし、タイムトライアルなどの独走種目において無敵を誇ったが、現在UCIで使用禁止となっている飛び道具。ニットーのブルホーンと、ランバーサポート付きのターボマチックIIを装備。

ヴィンテージならではの良さ

 フルサイズのシボレーでサーフィンに出かけるカッコ良い父親の血脈は、息子さんたちにも受け継がれたようである。今では父子でハマっているピストには、まず長男の慧大(けいだい)さんがのめり込んだのだとか。きっかけは、街で見かけたヴィンテージなスポーツバイク。ホリゾンタルなフレーム(トップチューブが地面と水平なスタイル)に一目惚れし、気がつけばブリヂストンのピストを組んでいたという。

 そのときに飛び込んだお店が、ヴィンテージバイクのカスタムで一目置かれる専門店「ドリームワークス」。その影響もあって、慧大さんのピスト熱は一気に高まっていく。

 当時の資料を読みあさって知識を蓄え、珍しいフレームやパーツを追い求める。そんなモチベーションを支えたのは、現代のバイクにはないスタイリッシュさであり、「他人とは違う」という希少性だった。だが、自らの手でバイクを組み上げる日々を過ごす内に、「ヴィンテージならではの出来の良さ」に気がついたという。塗装してしまったら塗り込められてしまう溶接跡の丁寧さ。小さなネジ一本に息づく職人気質。旧き良きメイド・イン・ジャパンが生んだ謹製品に心を奪われ、その世界の奥深さに惚れ込んでいったという訳である。
 
 

1975 VENUS:
東京の下町でかつて作られていた「ビナス」は、幻ともいわれるスーパーレアなブランド。そもそもブレーキが装着されていない競輪車両が街道練習をする場合は、前後ブレーキの装着がマスト。その「お尻ブレーキ」を装着して公道走行可能とした。ヘッドバッチの「女神様」もビューティフル。

懐かしの銘車を復活させる

 程なくして、父親の英一さんをも巻き込んでのヴィンテージバイク熱が到来。いつの間にか、ホビールームは清水コレクション状態に。ズラリと並ぶ銘品から伝わるのは、クロモリ全盛時代のフレームやパーツが持つ高い完成度である。

 現在主流のカーボンやアルミ素材とは違い、クロモリはスティール特有のしなりでフレーム自体をしなやかなバネに変えることができる。その柔らかな乗り味は、特にロングライドでの疲労を軽減してくれるという。また、時代遅れとされているクロモリが、実は最新のカーボンフレームに勝るとも劣らない戦闘力を秘めているともいわれている。軽さや剛性も含め、やはりクロモリがベストという論評すら巻き起こっているのである。

 幸いなことに日本では、現在でもクロモリフレームを作り続けているビルダーが現役である。そんな職人たちが過去に作った銘品を手に入れ、じっくりと組み上げる。そんな楽しみ方も悪くないと思うのだが、いかがだろうか?

BRIDGESTONE JAWS:
かつてブリヂストンが作っていた「ジョーズ」。エキスパートやコンペティションというモデルが発売されおり、レースイベントでも侮れない速さを見せつけたマシンだった。ETで有名なクワハラよりもレアな存在で、隠れた名車といえるオールドBMX。ステッカーの状態も良好。

 
 
Photo & Text:Yoshiro Yamada
媒体:『VINTAGE LIFE』 Vol.21

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