2019.07.31

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

ミュージアム級の歴代ヴェスパがずらり。「Bar Italia Classics」

 ノースハリウッドの中心から、西へクルマを5分ほど走らせた工場街。お世辞にも治安が良いとはいえないその地域の一角に、お目当てのBar Italia Classicsはあった。街の雰囲気から想像すれば、強面のタフガイが出てくるようにも思えたが、我々を出迎えてくれたのは、小柄で太っちょ、そして耳に残るファニーボイスを持った中年の白人男性。彼の名はクリスティアン・ストーリー。そう、ショップをひとりで切り盛りする、この店の店主である。

 「わかりづらい場所だったでしょ。さあ中に入って」。そうして案内された大きな倉庫の中は、白眉という言葉がピタリと当てはまる。赤、青、黄色、それにシルバーやホワイト。美しくレストアされたミュージアム級の歴代ヴェスパが陳列され、見る者をイタリアン造形美の世界へとグッと引き込んでくれるのだ。

 「最近では、どんなにボロでも往時の姿をそのまま残すオリジナル・コンディションが珍重されるでしょ。でも僕はまるで新車のようにピカピカと艶のある美しい状態が一番好きなんだ。それこそがヴェスパの造形美を最も正確に伝える方法だと信じているんだよ」
 

1955 Vespa 125:
こちらはクリスティアンのパーソナルコレクション。ボストンから仕入れてきた。オリジナルペイントを保つが、そこは彼の流儀で美しくレストアを施す予定だという。ただしカスタマーの車両が優先のため、なかなか手をつける時間がないそうだ。

 パティーナ、ラットなど言い方は様々だが、経年変化を魅力とし、それこそが旧車のベストだと誇示するオーナーたちが、欧州スクーターに限らず世界のモーターシーンで散見される。もちろん資料的な価値も含め、歴史的見地からそうしたパティーナ・コンディションを珍重するのは理解できるが、このスタイルが過熱するがあまり、あえて車両に錆や塗装の剥がれを施し、オリジナルと謳っては高値で商売をする悪徳な業者が存在するのも、また悲しい事実なのだ。

 「いまの旧車ムーブメントにはまったく興味がないね。僕はカスタマーのために、ヴェスパを美しく蘇らせる。ただそれだけだよ」。

 今年でオープンから13年目を迎えたBar Italia Classics。その店では頑なで生真面目なクリスティアンという名の腕の良いレストアラーが、毎日黙々とカスタマーのために作業を続けている。 
 

1969 Vespa 150 Sprint:
こちらはレストア車両ではなく、往時の姿を美しい状態で今に残す1台。アメリカ仕様でその走行距離は僅か2731マイルだ。カスタマーから機関のリフレッシュで預かっている。

壇上にディスプレイされるのは1965年式Vespa 180SS。160GSの後を継ぐスポーツモデルだ。この車両はまだクリスティアンがプライベートレストアラーだった20年前、友人のために製作した思い入れのある1台だという。現在は一時預かり中。

 
 
Photo:Ken Nagahara
Text:Kota Engaku
媒体:『VINTAGE LIFE』 Vol.21

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