2019.08.26

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

全米が祝福した、DUTSUN。「ROLEX MONTEREY MOTORSPOR...

2018年のテーマはNISSAN & DUTSUN。多くのファンが全米より集結したカリフォルニア州はモントレー、ラグナ・セカ。最大の見せ場であるターン8、通称"コークスクリュー"を駆け抜けた、ダットサン510の一団。

 自動車大国アメリカでの販売車数は、自動車ビジネスでの成功の指針となる。そして自動車レースでの勝利こそが、巨大マーケットでの販売を促進すると確信した欧州の自動車メーカーは、1950年代初頭より、こぞってアメリカのサーキットを目指した。中でも1950年代から1960年代にかけては、MGやヒーレー、ジャガーなど英国スポーツカーの独壇場となる。

 1950年代半ばから、アメリカへと輸出されるようになった日本車であるが、当時のアメリカ人の持つイメージは、小さくて非力、未成熟な自動車という程度のものであった。そうした認識にしか過ぎなかった日本車が、1960年代中頃に登場したホンダS800やトヨタ2000GT、DUTSUN、フェアレディなどによって、大きく印象を変えた。それぞれのメーカーは独自のアイデアに溢れ、スタイリングだけでなく、いつしか欧州車とも互角に競争できる性能を持ち合わせるまでに成長したのだ。

 そうした日本車メーカーと積極的にレース活動をしていたのが "Brock Racing Enterprises(BRE)"。それまでシェルビー・アメリカンに在籍していたピート・ブロックが設立した新進気鋭のレーシングチームである。

 BREを率いるピート・ブロックは、高校を卒業後、全米でもトップクラスのスタンフォード大学工学部へ入学するもすぐに退学し、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインに入り、カーデザイナーを志す。在学中19歳のときに、ゼネラルモータース(GM)のスタイリングデザイン部門にて、最年少デザイナーとして働き始めるのだが、このときにデザインしたプロトタイプレーシングカーのスケッチは、ブロックがGMを去った4年後、1963年に"Sting Ray"として市販化されることになるのだ.

1970 DUTSUN 240Z:SCCAトランザムCプロダクションレースでは、それまでのSRL311から240Zへとマシンを変え、大進撃がはじまったBRE。1970年、翌1971年の2シーズン連続でチャンピオンの座を獲得した。ゼッケン46はもちろんエース、ジョン・モートンの愛機である。

1970 DUTSUN 240Z:上のモノクロと同じく1970年、1971年と連続してSCCA Cプロダクション、そしてARRC、二つのにタイトルに輝いた240Z。BREでのレース退役後にクラッシュしたため、残念ながら現存しない。

御年82歳というピート・ブロック氏であるが、一昨年の東京モーターショーに来日するなど、こうしたイベントにも積極的に参加をしている。日本贔屓の彼の愛犬は柴犬、ちょこんと店番。

短期間にタイトルを総ざらい

 1961年からは、シェルビー・アメリカンのスタッフとして、商品からロゴ、広告のみならず、GT350や、はじめてのFIA世界選手権でy優勝したアメリカ車のレーシングカー、デイトナ・クーペを設計するなど、レーシングカーデザイナーとしても頭角を表す。

 満を持してBREを設立した1966年には、日野コンテッサ1300をレーシング仕様へ仕立て、"チーム・サムライ"のドライバーをも兼任。ブロック自らもステアリングを握り、西海岸のレースで活躍をするが、トヨタの日野吸収により、その活動は夢半ばとなった。

 そして1968年、ブロックはニッサンに直談判の末、2台のフェアレディ2000と予算を獲得する。戦闘力に懐疑的であったニッサンの不安をよそに、見事勝利。以降の240Z DUTSUN 510での快進撃は、北米マーケットでのニッサン成功の一因にもつながっていくのだ。

ジョン・モートンなくしてBREの活躍は語れない。SCCAトランザムシリーズ2.5リッター以下のクラスで1971年、1972年のチャンピオンを獲得。以降、F5000やIMSA、ル・マン24Hでも活躍する。現在のリバイバルレースでもステアリングを握り、衰えることを知らない腕前を披露している。

1971 BRE DUTSUN 510: BMW、欧州フォード、アルファロメオといった強豪のひしめくアンダー2.5リッタークラスを相手に戦ったチャンピオンマシン。トリコロールカラーと、アメリカンレーシング製のアロイホイールの絶妙なバランスが、抜群の存在感を際立たせる。

ダッツンたちの競演が、ラグナセカを彩った。

 全米最大のスポーツカークラブであるSPORTS Car Club of America (以下SCCA)、その歴史は1944年に始まり、タイムトライアルからラリークロス、ヒルクライムなど、さまざまな自動車競技を主催している。その中でも最大のイベントが、カリフォルニア州モントレーにあるサーキット、ラグナ・セカで行われる「ROLEX MONTEREY MOTOR SPORTS REUNION」だ。

 現役を引退したレーシングカーたちで、現役当時のようにレースを楽しもうと"Monterey Historic Automobile Race"として1974年に始まった。翌年の1975年からは、モータースポーツでの業績を讃え、歴史に残る名車たちのメイクスや、深く関わった人物を毎年の特集テーマにしており、それらをフィーチャーするのも特徴である。

 ちなみに、初回の1975年は"アルファメオ"。昨年は開催地ラグナ・セカが60周年ということで、サーキットにゆかりのあるマシンたちをフィーチャー。そして、2018年にははじめて日本車がフィーチャーされ、「NISSAN & DATSUN」のテーマが晴れの舞台へと選ばれたのだ。

 1960年に渡米し、北米でのマーケティングに手腕を振るった「ミスターK」こと片山豊氏の存在や、シェルビー・デイトナコブラのデザインなどでも知られるピート・ブロック氏率いるBRE 。ドライバーに人気俳優ポール・ニューマンを起用していた、ボブ・シャープレーシング。そうしたチームの活躍もあり、日本車の高性能をアピールし、北米のスポーツカー市場を支配していた英国製スポーツカーを、1970年代初頭には絶滅へと追いやったニッサン。アイコンとしても「Z(ズィー)カー」や"ダッツン"の存在は、レース史だけでなく、このアメリカにおいて、たくさんのファンの心を射止めている。

1966 DATSUN 1600 ROADSTER:きっと、ニッサン&ダットサンのフィーチャーイヤーを待ちわびたことだろう。ハーロン・ジョーさんのドライブするダットサン・ロードスターがコースイン。

恒例のフィーチャーイヤーのメイクスマシンを、ホームストレートに並べての記念撮影に収まるのはNissan 300ZXで、IMSA GTSシリーズ総合優勝のスティーブ・ミレン。ピート・ブロック、そしてジョン・モートン。

ヒストリーのある個体たちが白熱走行

 そうした事実もあり、もう少し早くフィーチャーしてもらっても良かった気もするが、日産GT-Rと同じく50周年を迎えたイタルデザイン社のコラボレートモデル「NISSAN GT-R by Italdesign」も発表され、世界中で新旧GT-R人気も高まる2018年、満を持しての記念イベントとなったのだ。

 そして、気になるコース上であるが、年式や当時のカテゴリーに合わせた15のグループに分かれており、歴史博物館から出てきたような1900年代の自動車から1920年代のグランプリカーまでの第二次世界大戦以前のマシンによる"1A"から、1947年から1955年までのスポーツカークラス"2A"アメリカンレースの醍醐味ともいえるカンナムカーでの"5B"SCCAトランザムの"6A"など、大迫力のさまざまなレースが行われる。そうした、すべてのカテゴリーのレースは現役当時を知らない世代でも、充分に楽しめる内容となっており、毎年の入場者数は4万人を超える。

 また、このレースが行われる週末は、モントレーの街を挙げてのカーウィークでもある。ペブルビーチのコンクールデレガンスもあり、街中に新旧の魅力あるクルマたちが溢れかえるのだ。モントレーのカーウィーク、夏休みの訪問地としても、ぜひともおすすめしたい。

1973年から1981年までのFIA、IMSA、GT、GTX、GTU、AAGTの選手権を戦ったマシンたちのクラス5A。BMW 3.0CSL、ダットサン610などを従えてコークスクリューへアプローチする、ポルシェ930ターボIMSA GTO。

1963年から1966年までの2,500cc以上の排気量で競う6Bクラスは、アメリカンカーの独壇場である。このシボレー・コルベット・ロードスターは5,300ccの心臓部を搭載。

日本では馴染みの少ないこのマシンは、ウェールズのスポーツカーメーカー"ターナー950S"。わずか1,100ccながら、優れたコーナリング性能で何倍もの排気量のマシンを相手に善戦。

果敢にコーナリングするのは、わずか21台のみの生産というポルシェ・カレラ・アバルト、アルミボディをまとったマニア垂涎のコラボレーションモデルだ。

 
 
Photo:©Rolex/Stephan Cooper、NISSAN、Junichi Okumura (奧村純一)
Text:Junichi Okumura (奧村純一)
媒体:『VINTAGE LIFE』 Vol.21

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